“今のw-inds.”に葉山拓亮・今井了介・松本良喜が捧げた楽曲たち アルバム『Beyond』参加3氏が語るクリエイター橘慶太との邂逅

w-inds. 『Beyond』プロデューサー3氏が語る

 2023年3月14日にデビュー22周年を迎えたw-inds.。新年に公開されたKANEBOの新ブランドCM 「希望よ、超えてゆけ。」 では橘慶太が名曲「君は薔薇より美しい」をカバー。力強く美しい高音を響かせた歌唱が話題を呼んだことも記憶に新しい。千葉涼平は3・4月に上演されたダンスエンターテインメント集団・梅棒の第16回公演にゲスト出演するなどそれぞれが精力的な活動を見せるなか、w-inds.として15枚目となるアルバム『Beyond』をリリースした。

w-inds.「Beyond」Official Interview

 近年のw-inds.作品は、『100』(2018年)、『20XX “We are”』(2021年)と全曲の制作、プロデュースを橘慶太が担当してきた。先行配信曲「Bang! Bang! feat. CrazyBoy」を含む今作では、JUNE、SLAY、UTAといった橘が全幅の信頼を寄せるクリエイターに加え、これまでw-inds.を支えてきた葉山拓亮(「Forever Memories」「Paradox」「Feel The Fate」など)、今井了介(「New World」「Make you mine」など)、松本良喜(「Long Road」「INFINITY」など)といった熟練の作家陣も参加。w-inds.の軌跡と変遷を踏まえたうえで、“最新のw-inds.サウンド”を体現した作品となった。

 今年1月にリアルサウンドで公開されたインタビューで橘は、今作の制作について「今回はいろんなクリエイターにお願いしようと思っていて。(略)自分で全部作るのが目的ではないし、そこに対するこだわりもなくて。おこがましいけど、これまでw-inds.の曲を作ってくださった皆さんとようやく肩を並べられるようになったと思っているんです」とコメントしていた(※1)。その言葉どおり『Beyond』は、クリエイターとしての橘のスキルとセンス、そして、葉山、今井、松本によるーーw-inds.への愛情に溢れたーー楽曲の絶妙なバランスによって成り立っていると言っていいだろう。

 ここからは、葉山、今井、松本が手がけた楽曲を、3名のコメントとともに紹介していきたい。

 まずは今井が作詞・作曲・サウンドプロデュースを担当した「FIND ME」は、往年のハウスミュージックを想起させる鍵盤やコーラスと現行のヒップホップの潮流に根ざしたトラックが融合したダンスチューン。混迷する現代社会を背景に、“本当に欲するものに気づいてほしい”という願いを込めたリリックも印象的だ。

「初めてかと思うのですが、慶太くん、(千葉)涼平くんお二方と一度も顔を合わさず制作を終えました。慶太くんからは『踊れる曲を今井さんの好きに作ってください!』とだけ告げられ、アタマを抱えること数週間。『New World』で初めてご一緒した当時、彼らが見たかった(見せてあげたかった)景色...…今はどれくらい見えてるかなぁとか、音楽を人に聴いてもらうことの意義とか、承認欲求至上主義で音楽の中身が置き去りになっているインフルエンサーとか、コロナって結局何だったんだろう?! とか。色々なテーマや想いがアタマをぐるぐる巡っているうちに溜めこんだスケッチが、いつの間にか1曲にまとまっていたという不思議な楽曲です。サウンド的にも、上モノはハウス的アプローチなのに、4つ打ちながらもドラムKITには全然ハウスフレーバーが入っておらず、かなりHIP HOPな音色になっているイマドキな楽曲に仕上がったかと思いますので、ぜひお楽しみください」(今井)

 デビュー曲「Forever Memories」(2001年)、初めてオリコン1位を獲得した「Another Days」(2002年)など最初期からw-inds.の楽曲を手がけ、彼らをブレイクに導いた葉山は、「Over The Years」を提供。トラックメイク、歌詞を含め、20年の道のりとこの先の未来を映し出すミディアムチューンだ。

「『昔にタイムスリップできるトラックと20年前に対するアンサーソング』というお題をいただいたので、“2023年版の初期w-inds.”みたいな形を意識して制作しました。1stアルバム曲の「Endless Moment」「New-age Dreams」等に呼応するイメージです。MIX時に慶太さんも来てくれて、よりストーリーを膨らませるアイデアをくれたので、とても良い作品になったと思います」(葉山)

 そして松本は「Blessings」の作曲・編曲・サウンドプロデュースを担当(作詞は松本と「約束のカケラ」など手がけた小松清人)。軽快なギターカッティング、心地よいファンクネスをたたえたビートなどを配置したサウンドなど、w-inds.流のシティポップと称すべきナンバーに仕上がっている。橘の伸びやかなボーカルも絶品だ。

「久しぶりの楽曲提供ということで、今のw-inds.の二人に合うのはどんな楽曲なのか、自分が制作する意味合いも含め、色々と考えて悩みましたが(笑)、シンプルに今のw-inds.に歌ってもらいたい、ハマるだろうなと思って作ったのが今回の作品『Blessings』になります。80年代の懐かしいシティポップス系サウンドに、メロもキャッチーなので、僕が以前提供させていただいた『Long Road』が好きなファンの方にも気に入っていただけるんじゃないかな? と期待しながら、とても楽しく制作させていただきました」(松本)

 橘が制作やプロデュースに携わった楽曲は、「Unforgettable」「Bang! Bang! feat. CrazyBoy」「Fighting For You」「I Swear」「Delete Enter」「Lost & Found」の6曲(MPCプレイヤー/トラックメイカーのKO-neyが手がけた「Bang! Bang! feat. CrazyBoy」リミックスも収録)。現行のヒップホップ、ハウス、ネオソウル、エレクトロなどの潮流を感じさせつつ、すべてに独自の解釈を加えた最新のw-inds.サウンドを提示している。キャッチーなメロディライン、フックのある歌詞、さらに低音とボーカルをバランスよく絡めたMIXを含めて、クリエイターとしてのセンスがさらに奔放に発揮されているのだ。

 今作『Beyond』における橘のプロデュースワークについて松本は、「慶太くんがプロデュースした楽曲は本当にクオリティが高いですよね。音の一粒一粒が気持ちよくしっかり聞こえてくるし、海外の一流のトラックメイカーたちのサウンドや作り方をかなり研究しているんじゃないですかね。しかも自分で機材を揃えて歌も録ってMIXやマスタリングまでして、ちょっと信じられないところに行ってしまってる感があります(笑)。これからも質の高い素晴らしい楽曲を作り続けて欲しいですね。楽しみにしています」と絶賛。

 また、橘が曲作りやトラックメイクを勉強しはじめた時期にアドバイスを送ったことがある今井も、「特に好きな曲は『Fighting For You』なのですが、アルバム全体を通して慶太くんが関わってる曲、つまりは歌う人自身が作るビートやトップラインというのは、旋律やデリバリー、キーやリズムの自然さも含めて他の人からプロデュースされた作品よりも、より一体感や整合性に優れてるなぁと感じました。そのなかにあって、UTAくんプロデュースの『Delete Enter』は、外部のプロデューサーとアーティストのバランスが良いなと感心しきり。いいアルバムですねぇ?! いやはや、勉強になります」とその手腕を高く評価している。

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