織田哲郎の“ライフワーク”ライブシリーズ『幻奏夜Ⅹ』 永遠に色褪せないJ-POPの名曲と歴史に触れて

織田哲郎、色褪せない名曲と歴史に触れて

 織田哲郎が、ライブシリーズ『幻奏夜Ⅹ』を2月20日にビルボードライブ東京で開催した。

 『幻奏夜』は織田のオリジナル曲はもちろん、ほかアーティストへの提供曲をストリングスアンサンブルとともに贈るライブ。今回で節目となる第10弾を迎えた。2月7日にビルボードライブ横浜、2月13日にはビルボードライブ大阪を巡り、今回のシリーズとしてはラストとなるビルボードライブ東京での1stステージを本記事ではレポートする。

織田哲郎(撮影=Masanori Naruse)

 メンバーはライブシリーズに全て参加してきた桜井大士(1st Vn)をはじめ、長谷川智恵(2nd Vn)、小澤恵(Va)、橋本專史(Vc)、田辺トシノ(Cb)、片田孝一郎(Per)といった面々。軽快な身のこなしでステージにやってきた織田がアコースティックギターを手に、1曲目に披露したのは中島みゆきが作詞を手がけたことでも知られる「Winter Song」。空気が澄んだ冬の夜空を想像させるような、そんな疾走感とストリングスの柔らかなアレンジが今の季節にぴったりの選曲だ。

織田哲郎(撮影=Masanori Naruse)

織田哲郎(撮影=Masanori Naruse)

 先のことを考えず、気がつけば10シリーズ目を迎えていたと、これまでのライブの歴史を振り返る織田。『幻奏夜』は当初、夏に開催していたのが、知らず知らずのうちに冬に行うのが恒例に。相反して、織田は自身の楽曲にも、提供曲にも夏の曲が多くある。「季節は関係ない。やりたいのをやろう」と笑みを浮かべながら、織田は「Be My Venus」をセレクト。TUBEとともに織田が中心となって結成した渚のオールスターズからの1stシングルだ。コンガのリズムとストリングスのあたたかな音色が、急な夏の到来を告げる。織田の余韻たっぷりな歌い回し、バンマスとしてカウントと指揮を取る姿も印象的だ。なお、織田は昨年40周年イヤーを迎えたTUBEの活躍を称賛。会場にはTUBEから織田への祝花が届いていた。

織田哲郎(撮影=Masanori Naruse)

織田哲郎(撮影=Masanori Naruse)

 アニメ『SLAM DUNK』(テレビ朝日系)のエンディングテーマとして今もなお海外で聴かれていることに感謝を述べたWANDSへの提供曲「世界が終るまでは…」では、織田がピアノに座り、しっとりとしたアレンジで歌い聴かせる。続く、織田のバラード「CAFE BROKEN HEART」もまた〈夏草〉といった季語が入るサマーチューン。弦楽器が入ることにより、夏の終わりを感じさせるようなセンチメンタルな雰囲気を纏っている。〈あの日僕らが信じたものは 今も色褪せていないかい?〉というフレーズが筆者にはより切なく胸に響いてきた。

織田哲郎(撮影=Masanori Naruse)

 ピアノからエレキギターへと持ち替え、織田のミュージシャンとしてのプライドが滲む「背中には今もブルースが張りついたまま」、1986年リリースのアルバム『LIFE』から哀愁が漂うストリングスアレンジの「週末に」を披露。特筆すべきは、相川七瀬への提供曲「恋心」だ。織田は、昨夏開催された相川のデビュー30周年アニバーサリーツアーをマーティ・フリードマンとともに帯同し、今年の夏からスタートするZeppツアー、そして日本武道館公演へのバンマスとしての参加も発表されている。織田が相川と初めて出会ったのはまだ相川が中学生の頃――そんな昔のことを懐かしみながらスタートした「恋心」は、ストリングス隊に2番からパーカッションが合流する、情熱的なアレンジだった。

織田哲郎(撮影=Masanori Naruse)

 これは織田が自虐的に話していたことだが、曲と曲のあいだでは、どうでもいいこと、しょうもないことをとにかくぼやく。もちろん、そのことを否定するわけではなく、筆者も笑いながら聞いていたのだが、「恋心」から「いつまでも変わらぬ愛を」への流れでは一切MCを入れなかったことに、ドキッとさせられた。言わずもがな、「いつまでも変わらぬ愛を」は織田の代表曲。フロアを見つめる織田の柔和な笑みに、言葉以上に、楽曲が、パフォーマンスが雄弁に語ってくれるのだと感じ取れた。奇を衒うことのない、心憎い演出だ。本編ラストは、「みなさんがハッピーに過ごせるように」という思いから、織田が2023年にリリースした最新曲「願い」で締めくくられた。

織田哲郎(撮影=Masanori Naruse)

 熱いアンコールに応えて再びステージに登場した織田は、「さあ、やっちゃうのか!」と予告しつつ、恒例の「BOMBER GIRL」へ。本編では比較的落ち着いた雰囲気でライブを楽しんでいた客席が、堰を切ったようにして大きな手拍子を始める。まさしくこの日いちばんの“情熱”に包まれたまま、ライブは幕を閉じていった。

 「このままライフワークとして『幻奏夜』をやり続けたい」と話していた織田。10回目という節目を迎えながらも、きっとまた斬新なアレンジで織田は我々を驚かせてくれるだろう。なお、東京公演の模様は、2026年4月頃にBS10プレミアムで放送される予定だ。

織田哲郎(撮影=Masanori Naruse)

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