桑田佳祐、先達へのリスペクトの中にある音楽人としての背景 「オリジナリティってないんですよね、自分のなかに」
1995年に始まった桑田のラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(JFN系列)に触れた後は(桑田にとってラジオは「1週間に一度、自分を確認する時間」だとか)、“アーティスト・原 由子”の話題へ。昨年、じつに31年ぶりとなるオリジナルアルバム『婦人の肖像(Portrait of a Lady)』を発表。桑田は楽曲提供を含め全面的にバックアップしている。
ライブでも「わたくし、原 由子の夫です」と挨拶していた桑田は、「昔は“そんなことできねえよ”って言ってたのに、今は喜んでやってるっていう(笑)」と苦笑交じりにコメント。原のアルバムとライブ(2023年3月、鎌倉芸術館で行われた『原 由子 スペシャルライブ2023「婦人の肖像 (Portrait of a Lady)」at 鎌倉芸術館』)について、「原 由子も変わりましたね。一皮むけたというか。どちらかというと真面目で、よく悩むタイプだったんですよ。舞台の真ん中にキーボードを置いて、歌って、踊ったりもするから、“大丈夫かな?”と思ってたんだけど、彼女は覚悟するとやるんですよね。今回、そんな芯の強い部分が出せたんじゃないかなって、おどろきました。あと、声も変わってないんですよ。よくその声をキープしてたなと」という言葉や発言からもリスペクトと感動が伝わってきた。
「ヤバいね愛てえ奴は」「鎌倉 On The Beach」「スローハンドに抱かれて(Oh Love!!)」などを収録したアルバム『婦人の肖像(Portrait of a Lady)』。ルーツミュージック(70年代を中心にしたロック、フォーク、ポップス)からの影響を色濃く反映させたサウンド、人生の機微、現代の社会に対する思いをリリカルに描いた歌詞、そして、瑞々しさと豊かさを共存させたボーカルがひとつになった本作は、原 由子のキャリアを代表する作品と言っていい。その根底にあるのは音楽に対する愛とリスペクト、ひとりの生活者としてのリアルな感情だ。鎌倉芸術館でのライブは、キャリア史上初となるライブ映像作品『スペシャルライブ2023 「婦人の肖像 (Portrait of a Lady)」 at 鎌倉芸術館』としてパッケージ化(6月7日リリース)。貴重なライブをぜひ追体験してほしい。
最後は、桑田自身のソロ活動35年の振り返りへ。「ソロは自分なりにワイワイ楽しかったり、またサザンに持って帰ることができる学びがあったり。まわりにメンバーやスタッフがいて、目の前にお客さんがいてくれる。僕から与えようということではなくて、もらっている感じですね」とソロ活動とライブの意義について語った。60~70年代のポップスやロック、ソウル、R&B、歌謡曲などをベースにしながら、そのエッセンス(本質)を抽出し、独創的かつ普遍的な大衆音楽を生み出し続けてきた桑田佳祐。また、時代の様相や変化、市井の人々の心情を捉え、ときに寄り添い、ときに鼓舞するような歌もまた、彼が長きに渡って支持され続けている理由だ。「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」「炎の聖歌隊[Choir(クワイア)]」「ヨシ子さん」「なぎさホテル」といった歴代の代表曲にも、“ルーツ”と“時代性”がバランスよく共存している。今回のFM COCOLOでのインタビューを通し、音楽人・桑田佳祐の背景を改めて感じることができたのは、大きな収穫だったと思う。
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