FIFTY FIFTY、Aiobahn feat. KOTOKO、Lucky Kilimanjaro……チャート上位を賑わすTikTok×ダンスミュージックの新潮流

TikTok×ダンスミュージックの新潮流

Aiobahn feat. KOTOKO「INTERNET YAMERO」

Aiobahn feat. KOTOKO -INTERNET YAMERO

 3曲目としてピックアップするのは、Aiobahn feat. KOTOKOの「INTERNET YAMERO」。この曲は、最強配信者(インターネットエンジェル)と暮らすアドベンチャーゲーム『NEEDY GIRL OVERDOSE』の第2弾MVとして公開されたもの。第1弾の「INTERNET OVERDOSE」は、世界での総再生回数が3000万回を超える大ヒットを記録。続く同曲も中毒性の高いトラックや歌詞が起爆剤となり、ゲームのMVという本来の枠組みを超えて巨大なバズを巻き起こしている。レトロな美少女ゲームや懐かしのインターネット文化に関する要素を凝縮した同曲は、バズのきっかけとなるフックが満載の一曲であると言えるが、特筆すべきは2000年代前半に社会現象となったパラパラをサビでフィーチャーしていること。また面白いのが、この曲においてはVTuberや二次元のキャラクターがパラパラを踊るUGCが大量に投稿されたりしていることだ。それは、先に紹介した2曲とは異なる形の「#踊ってみた」動画であり、新しい形のバズの先駆けのケースになったと言えるだろう。

Lucky Kilimanjaro「Burning Friday Night」

Lucky Kilimanjaro「Burning Friday Night」

 最後に、現在TikTokを中心に大きなバズを巻き起こしているLucky Kilimanjaroの「Burning Friday Night」を紹介したい。この曲は、彼らがインディーズとして活動していた2015年にリリースした楽曲。今回8年越しに注目を集めたきっかけは、TikTokerのローカルカンピオーネが、楽曲の冒頭〈ウィスキーを飲み干して/今夜あなたの視線に酔いたい/スピーカーの音にゆられて/少しだけ近くによってよ〉に独自の振りを付けて踊ったダンス動画を投稿したことだった。そこから次第にヒカルやコムドットのヤマトといったインフルエンサーへと飛び火していき、彼らの原点でもあるバンドの代表曲が多くのリスナーに再発見/再評価されるに至った。

 Lucky Kilimanjaroは、ダンスミュージックの新しい可能性を真摯に追求し続けているバンドだ。世の中的にダンスナンバーが大きな注目を集めているタイミングで、彼らの楽曲にスポットライトが当たったことは、長年にわたりこのバンドを応援し続けている筆者は深い感慨を抱いている。もちろん、TikTokのショート動画における振り付きの“ダンス”と、Lucky Kilimanjaroが掲げる「世界中の毎日をおどらせる」というテーマにおける“ダンス”は、正確にはニュアンスが異なるものかもしれないが、ただ音楽を通して身体を動かす喜びやポジティブな生の実感は、間違いなく両者に共通するものだろう。

 「Burning Friday Night」を入り口として初めてLucky Kilimanjaroを知ったリスナーは、「エモめの夏」や「ひとりの夜を抜け」をはじめとした他の過去曲を遡って聴いていく中で、このバンドがいかに誠実にダンスミュージックに向き合い続けているかを感じ取ることができるはず。また、「Burning Friday Night」にも感じられる歌詞の親近感もバンドの持ち味と言える。SpotifyやNetflixといった身近な固有名詞が登場し、休日は家で楽しみたいという気持ちが共感を呼ぶ「HOUSE」、退勤後のビールで仕事の疲れを洗い流す「350ml Galaxy」など、彼らが提案し続けている「日常の中にある情景×ポップなダンスミュージック」の持ち味が今回のバズにも繋がっているのではないだろうか。

 そんなLucky Kilimanjaroは、今年4月に4thアルバム『Kimochy Season』をリリースしたばかり。そのタイトルが示しているように、今作では日本の四季がモチーフとなっていて、冬→春→夏→秋という季節の変化を通して「変化を乗りこなす」というテーマを伝えるアルバムとなっている。躍動的なバンドサウンドの肉体性とダンスミュージックのループ性を絶妙なブレンドで重ね合わせる彼らの音楽スタイルにはさらなる磨きがかかっていて、同時に熊木幸丸(Vo)が紡ぐ日本の四季を映し出す言葉たちは、日本人に特有の風情や情緒を鮮やかに浮かび上がらせることに成功している。それらの歌詞が、しなやかなフロウや幾度とない反復、押韻によって届けられることで、ダンスミュージック特有の、それでいて全く新しい"気持ちいい"体験をもたらしてくれる。

 共感性の高い歌詞やキャッチーな振り付けを方程式としたTIkTok起因のスマッシュヒットが定番化している昨今だが、そこから派生する画期的なクリエイティブ、新しいアーティストの発掘は音楽シーンの裾野を広げる上で今後も重要なポイントになっていくだろう。

■ライブ情報
『Lucky Kilimanjaro presents. TOUR “Kimochy Season”』
5月28日(日)金沢:EIGHT HALL
6月3日(土)札幌:SAPPORO FACTORY HALL
6月10日(土)大阪:Zepp Namba
6月11日(日)名古屋:Zepp Nagoya
6月17日(土)仙台:仙台PIT
6月24日(土)広島:CLUB QUATTRO
6月25日(日)福岡:Zepp Fukuoka
7月1日(土)東京:豊洲PIT
7月2日(日)東京:豊洲PIT

企画制作:dreamusic Artist Management,Inc./VINTAGE ROCK std.
TOTAL INFORMATION:VINTAGE ROCK std.
TEL.03-3770-6900[平日12:00-17:00]/WEB https://vintage-rock.com

■チケット情報
一般発売受付中
https://luckykilimanjaro.net/

■リリース情報
4月5日(水)
4thフルアルバム
『Kimochy Season』(キモチイシーズン)
MUCD-1513/¥2,970(税込)

Kimochy Season
『Kimochy Season』

<収録曲>
01.一筋差す
02.Kimochy
03.Heat
04.越冬
05.掃除の機運
06.またね
07.咲まう
08.千鳥足でゆけ
09.ファジーサマー
10.地獄の踊り場
11.闇明かし
12.辻
13.山粧う
14.Kimochy(outro)

https://lnk.to/LK_kimochyseason

先行デジタルシングル
「Heat」
2月22日より各音楽配信サイトにて配信開始
https://lnk.to/LK_heat

■イベント出演情報
『GO OUT JAMBOREE 2023』
4月22日(土)
会場:静岡・ふもとっぱらキャンプ場

『JAPAN JAM 2023』
4月30日(日)
会場:千葉市蘇我スポーツ公園

『VIVA LA ROCK 2023』
5月5日(金)
会場:さいたまスーパーアリーナ

『FM802 Rockin’Radio! -OSAKA JO YAON-』
5月7日(日)11:30 開場/12:30 開演
会場:大阪城音楽堂(雨天決行&荒天中止)

『OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2023』
5月13日(土)
会場:METROCK 大阪特設会場(大阪府堺市・海とのふれあい広場)

『森、道、市場2023』
5月26日(金)
会場:愛知県蒲郡市ラグーナビーチ(大塚海浜緑地)&遊園地ラグナシア

『LuckyFes ’23』
7月15日(土)
会場:国営ひたち海浜公園

■Lucky Kilimanjaro Official Fanclub「LKDC」
ファンクラブ会員限定のツアーチケット最速先行やMOVIE、生配信など、ここでしか見られないオリジナルコンテンツが盛りだくさん!
https://fc.luckykilimanjaro.net/

オフィシャルサイト:https://luckykilimanjaro.net/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる