Metallica、“最も成功したメタルバンド”として成し遂げてきた偉業 モスクワ公演、BIG4共演、ギネス認定……歴史的瞬間を振り返る

Metallicaが成し遂げてきた偉業

 世界で累計1億2,000枚以上のセールスを記録し、最も成功したメタルバンドとして人気を誇るMetallicaが、4月14日に6年ぶりのニューアルバム『72 Seasons』をリリースした。まさに伝説のバンドとして数々の功績を残してきたMetallicaの、近年の活動を含めた「歴史的な瞬間」をいくつか紹介したい。

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』劇中曲に

 近年のMetallicaの大ニュースと言えば『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(Netflix)シーズン4の最終回にて「Master of Puppets」がフィーチャーされたことだろう。1986年にリリースされたMetallicaの3rdアルバム『Master Of Puppets』に収録された人気曲だが、『ストレンジャー・シングス』で使用されたことにより、米国内でのストリーミングが400%近く上昇し、Spotify Global Chartのトップ30入りを果たしていた(※1)。ドラマ内で最もアイコニックなシーンに使用されたことによってリバイバルヒットした「Master of Puppets」だが、最新アルバム『72 Seasons』までの流れに繋げるための大きなプロモーションとなったという意味でも歴史的瞬間と言えるだろう。

James Hetfield(Florida, USA - 04 Nov 2021)

 また、Metallicaは『ストレンジャー・シングス』をきっかけに聴くようになった新規ファンに対して文句を言う古参ファンに、公式TikTokアカウントで以下のようにコメントしていた。

「全員がMetallicaファミリーにウェルカムだ。もし『Master of Puppets』を好きになってくれたら、他の楽曲も好きになってくれる可能性も大いにあるだろう。ファン歴が40時間の人も、40年だとしても、音楽を通じて繋がっている。誰もが0からのスタートだったはずだ」(※2)

Eddie Munson's Upside Down Guitar GOD Scene - Master of Puppets | Stranger Things | Netflix

『Monsters of Rock Tour 1988』はMetallicaの人気を決定づけたツアーに

 1988年に開催された『Monsters of Rock Tour 1988』。Van Halen、Scorpions、Dokken、Metallica、Kingdom Comeが全米でライブを開催したツアーだが、『…And Justice for All』(1988年)のリリース前にMetallicaのファンを大幅に増やしたという意味でも歴史的なツアーである。セットリストには当時リリース前の「Harvester of Sorrow」が組み込まれ、アルバムの大ヒットに貢献したツアーとも言われている。

 Van Halenのサミー・ヘイガーは、ツアー中にMetallicaのライブに圧倒されたようで、ツアー後にリリースされる『…And Justice for All』が100万枚のセールスを突破すると予想していたようだ。彼はMetallicaの各メンバーと、次作が100万枚以上売れることに400ドルを賭けていたと明かしている。

「Metallicaは、この頃まだ『Enter Sandman』でメインストリームにブレイクしていなかったけど、毎晩素晴らしいライブをしていた。Metallicaの後に演奏していたDokkenに痛い思いをさせていた。このツアーの最後に、私はMetallicaの次のアルバムが100万枚のセールスを突破するだろうと、Metallicaの各メンバーと100ドルを賭けたんだ。今のところ、ラーズ(・ウルリッヒ)とカーク(・ハメット)のみが支払ったよ(笑)」(※3)

 Metallicaはこのツアー中に過度の飲酒をしていたことでも知られており、ジェイムズ・ヘットフィールドはこのツアーのことをほぼ覚えていないと明かしている。また、ラーズはツアー中のことについて「起きてすぐに酒を飲み始めて、昼の3時にはライブ会場に着く。そこから8〜9時間ぐらいずっと飲んでいた」と語っていたが、今年60歳になる彼は、今ではアルコールの代わりにアールグレイの紅茶をエネルギー源にしていると明かしている(※4)。

Lars Ulrich(Copenhagen, Denmark. July 11th, 2019)

メタルバンド初のグラミー賞パフォーマンス

 1989年にメタルというジャンルを認識し、最優秀ハードロック/メタル・パフォーマンス賞を創設したグラミー賞。Metallicaがメタルバンド史上初のグラミー賞パフォーマーとなり、メタルがお茶の間に放映された瞬間はまさに歴史的である。

 Metallicaは『…And Justice for All』からシングル曲「One」を披露。ジェイムズは、歌い出しで少し緊張しピッチが不安定になっているものの、曲の後半でシャウトパートに入った瞬間、まるで“メタルの神”が降臨してきたかのようにアグレッシブなパフォーマンスを見せ、自信を取り戻しているように見える。メインストリームにメタルというジャンルが認められた瞬間であり、メタルカテゴリが創設されて以来、Metallicaは8度受賞している。

 歴史的なパフォーマンスを披露したにも関わらず、1989年のグラミー賞ではリスナーの期待を裏切り、Jethro Tullの『Crest Of A Knave』が最優秀ハードロック/メタル・パフォーマンス賞を受賞。メディアやファンから多くの批判を受け、翌年からハードロックとメタルのカテゴリが分かれるようになった。

Robert Trujillo, Kirk Hammett(Copenhagen, Denmark. July 11th, 2019)

『Monsters of Rock 1991』は歴史的なライブに

 上記ではアメリカで開催された『Monsters of Rock Tour 1988』を紹介したが、Metallica史上最も偉大なライブの一つが、『Monsters of Rock』の一環として1991年9月にモスクワで開催された『Monsters in Moscow』だろう。

 1991年8月には、ソ連共産党の保守派によるソ連8月クーデターが失敗し、ソ連共産党及びソ連邦の解体の大きな原因の一つとなった。ソ連大統領 ミハイル・ゴルバチョフは8月24日に共産党書記長を辞任し、ソ連共産党の解党を宣言した。その翌月に『Monsters in Moscow』は開催され、推定160万人が集結したと発表されている。外国の文化や音楽に触れることが難しかったソ連時代の終わりを告げるように、AC/DC、Metallica、Pantera、The Black Crowes、E.S.T.が出演。“自由”を手に入れた民衆の熱気が伝わってくる伝説的なライブ映像が残っている。3カ月後には、ゴルバチョフはソ連大統領の地位も辞任し、ソ連は解体となった。余談だが、筆者はモスクワでの「Creeping Death」のライブ映像を観て、(異なるジャンルではあるものの)ミュージシャンの道を志した。

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