『KNOTFEST JAPAN』開催前に知っておきたいSlipknotのライブにまつわるエピソード クレイジーさの裏にある揺るぎない信念
4月1日と2日に幕張で『KNOTFEST JAPAN 2023』を開催するSlipknot。世界で最も有名なメタルバンドの一つとして知られており、1999年にリリースしたデビューアルバム『Slipknot』が全米で200万枚のセールスを記録し、2006年にはシングル「Before I Forget」でグラミー賞の最優秀メタル・パフォーマンス賞を受賞している。2022年9月には7thアルバム『The End, So Far』をリリースし、デビューから24年経つ今でも、世界で絶大なる人気を誇っている。
アルバムの売上もさることながら、Slipknotと言えば爆発的なエネルギーを放出するライブパフォーマンスでも評価されている。メンバーのライブに対する思いも凄まじく、一切妥協しないその激しいパフォーマンスが人気を博し、Slipknotが主催する『KNOTFEST』は全世界で開催されている。そんな『KNOTFEST』の開催を記念し、Slipknotのライブパフォーマンスに関するエピソードをいくつか紹介したい。
コリィ・テイラーはSlipknotの初ライブを観客として目撃していた
Slipknotのボーカリストで、野太くアイコニックなシャウトとクリーンボーカルが人気のコリィ・テイラーだが、彼が1997年に加入する前の『Mate. Feed. Kill. Repeat』(1996年)などの作品では、アンダース・コルセフニがボーカルを務めていた。コリィ・テイラーは、1995年のSlipknotの初ライブを観客として目撃したようで、そのときに「俺はこのバンドのボーカリストになる」と自分に言い聞かせたと明かしている。また、彼は当時の感想を以下のように語っている。
「彼らはバックステージからではなく、観客を押しのけながら、間を通ってステージに上がってきた。一つ言えるのは、今までで楽しんだなかで最も不快なノイズだったよ。エンゲージさせる演出で、反発的で、その後のバンドのエネルギーとなる燃料がすでにそこにあった」(※1)
その1年半後、クリーンボーカルを歌えるボーカリストを加入させる必要があると判断したSlipknotは、コリィ・テイラーに加入のオファーをした。
クレイジーであることの証明
特に初期はエネルギッシュどころか、ステージ上で喧嘩して流血したり、メンバーに火をつけたり、マスクのなかに嘔吐をしたり、とにかく激しいパフォーマンスが特徴的だったSlipknotだが、DJのシド・ウィルソンはバンドに加入するために自分の「クレイジーさ」を証明しないといけなかったという。
正式加入する前からSlipknotの制作を手伝っていたシドは、正式に加入をしようとしても、コンセプトにおける中心人物であるショーン・クラハンに「俺たちはクレイジーだから」とやんわり断られ続けたようだ。自分のクレイジーさを証明しないといけないと感じたシドは、観客としてSlipknotのライブを観ていたときにチャンスを窺っていたと語っている。彼はショーン・クラハンが客席まで降りてくる瞬間に、急いでステージの下まで移動し、ショーンに6回激しい頭突きをしたようだ。
「当時、ライブで『Tattered & Torn』を演奏するときは、毎回ショーンが客席まで降りてきていたんだ。彼は客席でファンとレスリングをしたり、マイクのコードでファンを引きずり回したりしていた。俺は初めて彼らのライブを観たからそれを知らなくて、彼がマスク越しで俺のことを見ながら、“Kill Me!”と叫び始めて、客席に向かってくるのが見えた。“こいつはクレイジーかもしれないけど、俺はさらにイカれてるぜ”って思って、観客の上を飛び越えてステージの下までたどり着いた。俺はショーンを掴み、頭突きを6回したんだ。7回目の頭突きをする前に、彼は床に倒れた。彼はジョーイ・ジョーディソン(2021年に亡くなったSlipknotの元ドラマー)のところに戻り、“誰がなんと言おうと、あいつは絶対にバンドに加入させる!”と伝えたんだ」(※2)
ストレッチは念入りに
1995年に結成し、1999年にデビューしたSlipknotはもうベテランバンドだが、ライブパフォーマンスに対する思いは変わっていない。マネージャーは「9人がステージでアグレッシブに演奏しており、ステージ上で1秒も無駄にすることはない。キャリア20年以上であの激しさを保っているバンドは少ない」と語っている。しかし、年々身体的に負担は感じるようになっているらしく、コリィは以下のように明かしている。
「最近はライブの準備にさらに時間がかかるようになったよ。たくさんストレッチもするし、たくさんのイブプロフェン(痛み止め)もね(笑)。色々ぶん回して、上手くいくと願うだけじゃないんだ。メンタリティは変わっていないけど、フィジカルを戻す必要もある」(※3)