SHO-SENSEI!!の音楽はなぜ心の拠り所になるのか リスナーを魅了する、ありのままを曝け出した言葉の強さ
4月19日にリリースされた最新曲「だから一枚だけ盗んだ」も、まさに消えゆくものの刹那を音楽に刻み込んだ一曲だ。別れのワンシーンを描きながら、〈君の声も忘れていくんだ/これが世界のルールだろ〉〈時間経ったら忘れるなんて/時間なんかに忘れ去られるものか〉と記憶から消えていくことに抗う気持ちを表しながら、〈だから一枚だけ盗んだ/君と撮った写真をさ〉と瞬間を切り取った「写真」を盗んだことをタイトルに掲げて「音楽」に封じ込める。瞬間を紙に焼いて残す「写真」と時間芸術に残す「音楽」を曲のモチーフにして、でもそんな行為すら相手に「わかってない」と言われるのだろうと、何重層もの感情を表現しているのがまたSHO-SENSEI!!らしい。
ビートメイカーには、近年SHO-SENSEI!!の盟友である10pmを今回も起用。JP THE WAVYなどの楽曲も手がける、現在19歳である新進気鋭のプロデューサー/トラックメイカーだ。Lil Peepに衝撃を受けたという10pmが作るトラップのビートを出発点にしながらも、エモーショナルなギターフレーズを象徴的に置き、ポップパンク、J-ROCK/ギターロック、フォークなどへと横断するのがSHO-SENSEI!!の特徴であり、この曲もまさにそういったユニークな仕上がりになっている。SHO-SENSEI!!はJ.Coleこそが「音楽を作り始めたきっかけ」だというが、尾崎豊、忌野清志郎、THE BLUE HEARTSからも影響を受けており、魂を込めた生々しい歌は彼らの歌心を継いでいるように聴こえる。
さらにアルバム『THE TELESCOPE』制作期間に聴いていたアーティストとして、RADWIMPS、羊文学、リーガルリリー、そして冒頭のライブで共演したAge Factoryなどオルタナティブロックバンドの名前を挙げており、「エモトラップに日本の歌心を乗せた……」などの簡単な言葉では済ませまいとする音楽性の広さを感じさせる。さまざまな種類の「エモーショナル」な表現、つまり、心と身体を震わす歌、言葉、メロディ、ギターリフ、ビートとは何かを、SHO-SENSEI!!が生きてきた中で震えたものを使っていくつもの手法で表現しようとしているのだと思う。
この世でもっとも儚いもの、それは「生命」でもある。だからSHO-SENSEI!!は自分の生きた日々や、自身の生命への眼差しを歌にする。あらゆる刹那が切迫し、生き方にも困惑する中で、行き場のない欲望が身体の中を渦巻くーーそれを爆発できるのがSHO-SENSEI!!のライブなのだ、といわんばかりの熱気が冒頭で書いたライブの会場には満ち溢れていた。
SHO-SENSEI!!がマイクを握るのと合わせてフロアから大合唱が湧き続けていたあの光景は、会場に集まったファンにとってどれだけSHO-SENSEI!!の音楽が心の拠り所になっているかも証明していた。7月からは4都市で初の全国ワンマンツアーを予定しているが、SHO-SENSEI!!とオーディエンスがこれから広げていく音楽的景色は、これまでのロックバンドやラップスター、さらにはポップエンターテイナーやフォークシンガーなどが放ってきた魅力を混ぜ合わせたものになるのではないかと、私は胸を躍らせている。