鈴木雅之、魂のセッションを積み重ねた“新しい真骨頂” 今を生きる楽しさをナビゲートするダンスミュージック
「来年(2023年)は、ファンキーなアルバムを届けられると思うから、(ダンスできるように)足腰を鍛えて待っていてほしい」
昨年の全国ツアーのステージで、鈴木雅之はこんな宣言をしていた。その言葉通りにファンキーでダンサブルなオリジナルアルバムが届いた。タイトルは『SOUL NAVIGATION』(以下、鈴木の発言は全て筆者が行ったインタビュー時のもの)。
「ライブでも声が出せたりするようになっていく、そんな2023年だからこそ、思いっきりその時間を楽しみたい。音楽の楽しさを、もっと言えば“今を生きている”ことの楽しさ、喜びをもう一度ナビゲートしたい。それを思った時にまず最初に浮かんできたのが、ダンスミュージック。そしてこのタイトルだったんだ」と語る鈴木雅之。そこからすぐにアルバム1曲目の「MY SOUL NAVIGATOR」を自ら書き下ろしたという。それはおそらくナビゲートという言葉の意味を自分でも確認する作業だったに違いない。
ラブソングの王様としてバラードの名手であることはもちろんだが、R&B/SOULをこよなく愛してきた鈴木は、「2023年のダンスミュージック」というキーワードから、大胆かつマニアックな「引き出し」を開けてナビゲートを始める。それがやはり、こよなく愛する「ファンクミュージック」のグルーヴだった。
「せっかく新曲をたっぷり作れるオリジナルアルバムだからね。やりたいことをやりきりたい。そうすればきっと聴いてくれるみんなにも伝わるはずだって。そんな思いから、ダンスミュージック、ファンクグルーヴを阿吽の呼吸でわかってくれて、一緒に楽しんでセッションしてくれる、言ってみれば“最高の大人の遊び”に参加してくれそうなメンバーに声をかけていったんだ」
作詞作曲、サウンドプロデュースに名を連ねたメンバーは、堂本 剛、Ayase、橋口洋平(wacci)、マハラージャン、在日ファンク、そしてリミックスを手がけたCARTOON + YELLOCK。さらにアレンジの大坪稔明、冨田恵一など、かねてからセッションしてきたスタッフ、メンバーが揃い、それぞれが活躍するフィールドや世代を超えて「阿吽の呼吸」で曲が完成。そこには創始ジェームス・ブラウンからプリンス(ミネアポリスファンク)、ジョージ・クリントンのPファンクまで、様々なファンクのエレメントが散りばめられ、そして同時にラブソングの王様としての揺るぎないバラードを織り交ぜた、いわばミラーボールのような11トラックが並んでいる。
「例えば(堂本)剛が、ソロの音源やステージで、ファンクミュージック、それこそPファンクやプリンスに影響を受けたスタイルを披露しているのは前から知っていたから、このチャンスに一緒にセッションできないかって思ったんだ。そうしたら忙しい中ですぐに『鈴木さんに歌ってほしい曲のイメージがあります』って言ってくれてね。まさにラブソング的な要素とファンクグルーヴが交錯する曲(「flavor」)ができ上がったんだよ」
それぞれのアーティストとつながったセッション。その思いを込めて、このアルバム全体の制作スタイルを「魂(ソウル)セッション」と呼んでいる鈴木。さらにアルバムを自身が「キャプテン」を務めた「マザーシップ」と呼び、乗りこんでくれたメンバーを「ゲストクルー」と呼んでいる。ファンク好きならわかる、ニヤリとさせる、そんなところが「こだわりの人」だ。