鈴木雅之、時代を超えるソウルシンガーたる理由 日本の音楽史そのものとコラボした極上のカバーアルバムから紐解く

鈴木雅之、時代を超えるソウルシンガーたる理由

 ソロデビュー35周年、シャネルズ(1983年にラッツ&スターに改名)のメジャーデビューから数えると、40年以上にわたって日本の音楽シーンを第一線で牽引し続け、ラヴソングの王様とも称されるソウルレジェンド・鈴木雅之。グループでは「ランナウェイ」「め組のひと」「Tシャツに口紅」「夢で逢えたら」などのヒット曲を連発し、ソロデビュー以降も「ガラス越しに消えた夏」「別れの街」「もう涙はいらない」「恋人」「違う、そうじゃない」「渋谷で5時」「夢のまた夢」など日本のスタンダードナンバーとなった楽曲は数知れず、近年は『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(TOKYO MXほか)のオープニングナンバー「ラブ・ドラマティック feat.伊原六花」「DADDY ! DADDY ! DO! feat.鈴木愛理」を担当し、アニソンシーンでも絶大な支持を得ている。

【MV】鈴木雅之『DADDY ! DADDY ! DO ! feat. 鈴木愛理』TVアニメ「かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~」OP主題歌

 また、東日本大震災が起きた2011年には、自身のオリジナル曲だけでなく日本を代表する名曲たちを歌唱し、被災地に少しでも元気を届けようと、服部隆之をサウンドプロデューサーに迎えてカバーアルバム『DISCOVER JAPAN』をリリース。その後「“日本のうた”の再発見」はシリーズ化され、2014年には『DISCOVER JAPAN II』、2017年には『DISCOVER JAPAN III ~the voice with manners~』を発表している。そして、ソロデビュー35周年を記念し2022年2月23日には、このシリーズ三部作から厳選したナンバーに加え、新たにレコーディングした最新カバー(YOASOBI「怪物」、手嶌葵「明日への手紙」、スターダスト☆レビュー「木蘭の涙」)、さらに同シリーズ以外のカバー曲も収録したカバーベストアルバム『DISCOVER JAPAN DX』をリリースする運びとなった。

鈴木雅之 Cover Best Album『DISCOVER JAPAN DX』Teaser Movie
鈴木雅之 『怪物』Music Video

 さて、そんな記念碑的カバーベストについて述べる上でまず紹介したいエピソードがある。鈴木雅之は、2020年末に放送された『第62回「輝く!日本レコード大賞」』(TBS系)の特別企画コーナーへ出演。忌野清志郎(RCサクセション)の「スローバラード」を歌唱したのだが、視聴者の中には、“ロックレジェンド・清志郎”の名曲をロックシーンを代表するアーティストでなく、何ゆえにソウルレジェンドの鈴木雅之が歌うのかと思った人もいただろう。

 しかし、清志郎はロックと同時にソウルミュージックをこよなく愛し続けたことでも知られる存在であり、特に「スローバラード」は彼がソウル愛を爆発させた名曲である。さらに鈴木雅之はデビュー当時に清志郎と共演したこともあり、この曲を「当時、日本のどのバラードよりもソウルを感じた」(※1)、「僕がバラードを歌う道標になっている」(※2)とも語っていたのだ。ましてや、ふたりはソウルに多大なる影響を与えたオーティス・レディングを愛する者同士。ゆえに『レコ大』で披露された鈴木雅之の「スローバラード」は、清志郎への敬意はもちろん、ソウルを日本の音楽シーンに伝道し続ける者としての愛情と矜持=エモーションに溢れており、この必然性ある歴史的カバーを聴き終えた視聴者たちは賞賛。ネットには「ここ数年耳にできたカバーの中でもダントツで素晴らしかった」などの声が飛び交った。

 このエピソードが物語っている通り、カバーベストアルバム『DISCOVER JAPAN DX』に収録されている楽曲たちは、この「スローバラード」含めていずれも単なるカバーではない。オリジナルを歌う各アーティストたちがその楽曲に込めた想いや背景と、40年以上にわたって音楽と真摯に向き合いながら、数多の名曲たちに魂を注いできた鈴木雅之の人生を重ね合わせた、言わば「日本のうた」の音楽史との究極のコラボレーション作品。これほどまでにあらゆる意味でソウルフルなカバー作品は他にないだろう。なお、本作の初回盤は『DISCOVER JAPAN』シリーズのミュージックビデオやライブ映像、レコーディングメイキング映像などを収めたBlu-ray/DVD付属の5枚組(通常版はCD3枚組)となっているのだが、鈴木雅之の尋常ではない音楽愛やアーティスト愛をより深く広く体感できる映像集になっているので、こちらもぜひご覧いただきたい。

鈴木雅之『メロディー (Remix’22)』Lyric Video

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