キタニタツヤ、憧れのASIAN KUNG-FU GENERATIONと初対バン 互いへのリスペクトから生まれた温かな高揚感
ここでひと段落、「僕が友達になりたいなって人と対バンライブをして、仲良くなって抱擁を交わそうっていうイベント」と、この『Hugs』に込めた意図を語るキタニ。「なんと、俺の音楽のすべての始まりのバンドと対バンすることができました!」と喜びを爆発させると、オーディエンスからも熱い拍手が送られる。
「子どものときにあの音楽に出会っていなかったら、音楽を聴いたり作ったりして自分を保ったり表現したりする人生じゃなかった。あの4人がいなかったら人生どうなってたかわからない。ASIAN KUNG-FU GENERATIONという偉大なバンドと、それをずっと応援してきた人たちにはどんな言葉でも感謝を言い切れないな」
キタニはアジカンが結成された1996年生まれ。27年間同じメンバーで続いてきた彼らに敬意を表しつつ、「俺もなんだかんだ9年ぐらい活動してきたから、あと16年は変化することを恐れずに音楽やっていきたいなって思いました。これからも長い付き合いを、どうぞよろしくお願いします」と決意を新たにしたキタニがその後披露したのは、愛してやまないアジカンの楽曲のカバーだった。彼にとって「純粋な音が楽しいって喜びもあるんだけど、音楽が救いとか導きとか、そういうものになるんだなって知らされた曲」だという「バタフライ」。オリジナルへのリスペクトを端々に感じさせる熱演は、100の言葉よりも雄弁に、彼にとってASIAN KUNG-FU GENERATIONという存在がどれほど大きなものかを物語っていたように思う。
ステージが瑞々しい音楽の喜びに満たされる中、ライブは後半に突入していく。まずぶちかまされたのは「Rapport」のソリッドな音像。先ほどのアジカンのカバーを経て、ギアが一段上がったような感じがする。「やっぱこれだよね、ライブって!」。オーディエンスが自由に盛り上がる様を見て感慨を口にするキタニ。「本当に完全に自由になった。それはすばらしいことです! この美しい光景が、いつまでも続いたらいいな」ーーそういって歌い始めたのは、みんなで歌う光景をイメージして作ったという「プラネテス」だ。じっくりと感情を昂らせていくようなメロディラインとドラマティックに広がるサウンドがZepp DiverCityを包み込む。フロアでは手が揺れ、キタニの声にお客さんの声が重なる。まさにキタニの言葉どおりの「美しい光景」が目の前に広がっていった。そのまま春らしい情感をたっぷり込めた「ちはる」を経て、ライブはいよいよクライマックスに向かっていく。
真っ赤なライトのもとギターがけたたましく鳴り響く「夜警」で再びロックモードに引き戻すと、ビッグなリズムがここに来てさらなる高揚を煽る「トリガーハッピー」が繰り出される。そして最後の曲。「ASIAN KUNG-FU GENERATIONに愛を込めて」。そんな言葉とともにギターのリフがかき鳴らされる。突っ走るビートとソリッドなバンドサウンドがアジカンのDNAを確かに感じさせる「スカー」だ。怒涛のパフォーマンスがこの日のピークを鮮やかに刻み、記念すべき対バンライブは終わりを迎えたのだった。
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