キタニタツヤ、憧れのASIAN KUNG-FU GENERATIONと初対バン 互いへのリスペクトから生まれた温かな高揚感

キタニタツヤ、憧れのアジカンと初対バン

 東名阪の3カ所で開催されたキタニタツヤの対バンツアー『Hugs Vol.5 Tour』。初日の大阪ではindio la End、愛知ではヒトリエとあいまみえ、そしてファイナルとなる東京公演へとたどり着いた。東京・Zepp DiverCity(TOKYO)のステージにキタニが招いたのはASIAN KUNG-FU GENERATION。ファンであれば知ってのとおりアジカンはキタニが音楽を志すきっかけとなったバンドであり、この対バンは彼にとっても念願のものだった。そんなキタニのアジカンへの思い入れや愛情、さらには両者の間のリスペクトも存分に感じられたツーマンは、最初から最後までとても温かな、祝福めいた空気に満たされたものになった。

 まずはゲストであるアジカンのステージだ。後藤正文(Vo/Gt)、喜多建介(Gt/Vo)、山田貴洋(Ba/Vo)、伊地知潔(Dr)の4人にGeorge(MOP of HEAD)、Achico(Ropes)のサポートメンバーを加えた6人編成のバンドは、クラシックな名曲から最近のモードを象徴するような楽曲までを豊かに咀嚼し、鮮やかに生まれ変わらせていった。「ソラニン」に始まり、最新シングル曲の「宿縁」へとつなげる流れでその歴史と変わらないアジカンらしさをはっきりと示すと、ここからはおそらくキタニにとってもグッとくる名曲を連打。「Re:Re:」で一気にフロアを盛り上げると、ここで「リライト」を投下する。観客の声がライブの場に戻ってくるようになり、誰もが知るこの名曲もさらにパワーを増している。定番のコール&レスポンスも完全復活。「キタニくんのファンは音楽性が高いと思うんだよね」という後藤のリードによってあえて囁くような小声で客席とのコミュニケーションを楽しむなど、さすがの百戦錬磨っぷりだ。

 「今日は本当にありがとうございます。アジカンっておもしろいバンドだなって思ってワンマンに来ても、別にこんなことはしないので」と先ほどの観客とのやりとりに触れつつ「今日はキタニくんへのラブと感謝を込めてやりたいなと思っただけ」と独特の言い回しでこの日のライブに込めた特別な思いを語る後藤。「最後まで愛を込めて演奏します」というと「君の街まで」を披露する。伸びやかなメロディに合わせてフロアではハンドクラップが巻き起こり、会場に心地よい一体感が生まれていく。さらに「荒野を歩け」「転がる岩、君に朝が降る」を演奏すると、改めて「ありがとうございます」と感謝を口にする後藤。「その昔、僕らがキタニくんに渡したバトンを、今日また俺たちが彼からもらって……循環していくのが音楽のよさ。そうやって転がっていけたらいいなと思います」と語り、最後は春にぴったりの「海岸通り」を届けると、ステージを降りていった。

後藤正文
喜多建介
山田貴洋
伊地知潔
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後藤正文
喜多建介
山田貴洋
伊地知潔
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 アジカンに続いていよいよキタニタツヤのライブだ。今回のライブは観客による撮影もOKということで、みんなスマートフォンのカメラを構えて待ち受けている。そこにバンドメンバーとともに現れたキタニは「聖者の行進」からライブをスタート。いきなりパワフルなサウンドでフロアを熱くさせていく。キタニもその熱に応えようとステージの一番前まで出てはオーディエンスを煽る。続けて「PINK」へ。ファンキーなグルーヴに合わせて打ち鳴らされる手拍子がさらに盛り上がりを助長する。「みんな、音楽性が高いって」と先ほどの後藤のMCを引き合いにフロアに声をかける。「後藤さんにそんなこと言ってもらっちゃったら、俺まで照れくさ&嬉しはずかし状態になっちゃったよ」と嬉しそうだ。

 その後もキタニは絶好調。「永遠」のビッグスケールなサウンドでオーディエンスの大合唱を巻き起こすと、続く「悪魔の踊り方」でもキタニは激しく体を揺らしながらマイクをフロアに向けてシンガロングを促す。待ってましたとばかりに声を上げる観客も最高のテンションへ。曲が終わるごとに湧き上がる歓声にも気合が入っている。「パノプティコン」を経て「化け猫」のボトムが太くダンサブルなサウンドが、今度はZepp DiverCityをダンスフロアに変えていく。曲中に挿入される猫の鳴き声のサンプルがファニーだ。

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