ここからまたそれぞれの“超天獄"を生きていけるように　大森靖子、四天王バンドと縦横無尽に繰り広げたZeppツアー東京公演

　「ドラマチック私生活」の歌詞を受けて、MCではアスパラガスの下ごしらえの話から「皆さん、第一次産業の人を大事にしましょう。モノを作る人が神様なんだよ！　農家に捧げます」と、「×○×○×○ン」へ。ファンがグリーンのサイリウムを振る姿も見える。ポップなロックンロールから一転、BPMの速いバージョンの「VOID」では宇城とともにパンキッシュなボーカルで青くて未熟な恋を叫ぶ。前半だけでも凄まじい振り幅の曲を届けてきた後、さらに「ムゲンライセ」と題された新曲も披露。グラムロックのイメージもあるギターサウンドと爽快な8ビートが新鮮で、〈あの日の来世は今日だ〉という歌詞に終わりなき人生の流転を垣間見た。

　MCでは“四天王クイズ”と題して、設楽から「東京で一番大きい区は？」という出題があり、なんとなく「超天獄」に出てくる〈世田谷なんか住んでたまるか〉にかけているのか？　と思いきや正解は太田区というオチがついたところで同曲の、ルーツミュージックに溢れる祝祭感にも似たピアノポップで、改めて大森にとっての“誰も触れない正体”を高らかに宣言していく。地声も叫びも自由自在。ああ、これが超天獄ということなのだなと感じた。続いてショートバージョンの「ロックンロールパラダイス」と「告発」という新旧の楽曲をつなげていく。空気が変わったのは「TOBUTORI」のピアノリフのループに続いてダンサーの山之口理香子が風のように現れた瞬間。完全にサプライズだった彼女の登場はステージに緊張感を走らせ、大森も別のスイッチが入ったようだった。独白の色の濃い『超天獄』の中でも、ここで音楽を作り歌う彼女の裏も表もない独白が胸に刺さる「東京のせいにして」も、女とか母親である前にただの生き物である感覚を素直に歌う「夕方ミラージュ」も、妙な言葉ではあるが、ここまで本当の真実を吐露してくれる存在に安堵すら感じる。

　世界に対する真摯すぎる憎まれ口は実は多くの人を救うことをバンドとともに奏でているというぐらい、四天王バンドとの息は合っていて、「死神」の切実さから、『超天獄』の発端でもあった「Rude」へのエネルギーの膨張は明らかにステージ上の6人、そして山之口から発されているものだった。

　アンコールのラストはアルバムの最終曲「最後のTATTOO」で締めくくった。これがソウルマナーのメンバー紹介から、風通しの良いアンサンブルと少し跳ねるオーガニックな演奏だったことに、クラップの一つもしながら笑顔でノれる大森の新しいライブのあり方を見た。この場所からまたそれぞれの超天獄を生きていけるように。そんな明るさがとても新鮮だった。

■超天獄ZEPP TOUR2022
大阪・名古屋振替公演
2月4日 AM10:00 チケット発売
<大阪>3/15(水) at Zepp Namba
<名古屋>3/16(木) at Zepp Nagoya
券種:一般・学割
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