大森靖子、工藤晴香、SUPER BEAVER、7ORDER、浦島坂田船……7月7日リリースより新譜5作をレビュー

 毎週のリリース作の中から注目作品をレビューしていく連載「本日、フラゲ日!」。今回は7月7日リリース作品より、大森靖子『PERSONA #1』、工藤晴香『Under the Sun』、SUPER BEAVER『名前を呼ぶよ』、7ORDER『雨が始まりの合図 / SUMMER様様』、浦島坂田船『L∞VE』の5作品をピックアップした。(編集部)

大森靖子『PERSONA #1』(通常盤)

 道重さゆみのために制作した「EIGAをみてよ」「WHO IS BABY」「KILAi STAR LIGHT」をはじめ、ゆるめるモ!、椎名ぴかりん(椎名ひかり)、℃-uteなどへの提供曲を大森靖子が自ら歌ったセルフカバーアルバム。タイトルの“PERSONA(ペルソナ)”は“外向きの表面的な人格”、“社会的な役割”という意味だが、他のアーティストに提供した(いわば“外向き”の)楽曲を自分でカバーすることで、彼女自身の内面が滲み出るという構造になっているのが興味深い。このアルバムが示しているのは、大森靖子が他者への関わり、もしくは拒絶を通して、自らを表現するタイプのソングライターであるということだろう。00年代アイドルポップ、エレクトロ、フォーク、メロコアなどを身体的に混ぜ合わせた音楽性も印象的だ。(森)

工藤晴香『Under the Sun』(初回限定盤)

 昨年3月にミニアルバム『KDHR』でソロアーティストとしてメジャーデビューした“くどはる”こと工藤晴香。Nirvana、Nine Inch Nails、X JAPANなどをルーツにしたヘビィかつポップな音楽性は声優アーティストのなかでも際立った個性を発揮している。1stシングル曲「Under the Sun」は、彼女のポップな側面がしっかりと打ち出されたアッパーチューン。エッジの立ったギターフレーズ、ヘビィネスをたたえたサウンドメイク、そして、夏を想起させる解放的なメロディラインが見事に融合。ハイブリッドな音像を突き抜け、リスナーの耳にダイレクトに飛び込むようなボーカルも強いインパクトを放っている。失恋を乗り越え、前を向いて進もうとする主人公を描いた歌詞は、彼女自身の手によるもの。(森)

SUPER BEAVER『名前を呼ぶよ』(通常盤)

 2020年に“メジャー再契約”、今年2月に発売された7thアルバム『アイラヴユー』がオリコンランキングで2位を記録するなど、結成17年目にして最高の状況にあるSUPER BEAVERのニューシングル表題曲「名前を呼ぶよ」は、映画『東京リベンジャーズ』主題歌。ライブの臨場感をダイレクトに感じさせるバンドサウンドとともに歌われるのは、〈出会いが人生の全てだ〉という言葉。人と出会い、単なる記号に過ぎなかった名前に意味が生まれ、何度も会ううちに絆が強くなり、それが人生の豊かさにつながる。「名前を呼ぶよ」で歌われていることは、SUPER BEAVERの軌跡そのものだ。すべてのフレーズと音がバンドの在り方と直結し、圧倒的な説得力とともに響く。これこそがSUPER BEAVERの強みなのだと改めて実感した。(森)

SUPER BEAVER 「名前を呼ぶよ」MV

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