女王蜂、普遍的なテーマで暴く“人間の本質” 『チェンソーマン』の感性を見事に捉えた新曲「バイオレンス」を聴いて
さすがは女王蜂、さすがはアヴちゃんと言うべきか、「余計な説明も言い訳もどうでもいいから、とにかく本質をガシッと素手で掴んじゃえばいいでしょ?」と言い切るような、ダイレクトで強烈な1曲である。新曲「バイオレンス」。四つ打ちのビートが突き進むダンサブルなサウンドは快楽的だが、そこには、「コミュニケーション」というものが持つ本能的な恐ろしさと不可思議さを突きつけてくるような凄みがある。今どこに向かってんの? 天国? 地獄? 知らない。その笑顔も、その哀しさも、もっと本気で分かりたいーー。
「バイオレンス」は、放送開始以来、毎週違ったアーティストがエンディングテーマを担当するというインパクトある試みでも話題のアニメ『チェンソーマン』(テレビ東京系)にて、12月20日に放送された「エピソード11. 作戦開始」のエンディングテーマとして書き下ろされた1曲である。
これまでの女王蜂によるアニメタイアップと言えば、『東京喰種:re』エンディングテーマ「HALF」(2018年)、『どろろ』オープニングテーマ「火炎」(2019年)、そして、直近のシングルに当たる『後宮の烏』オープニングテーマ「MYSTERIOUS」(2022年)と、強烈な存在感を放つ楽曲たちが並んでいる。それぞれの楽曲が一発聴けば耳に残る記名性の高いサウンドで、アニメ視聴者を女王蜂の世界にも深く惹き込むような魅力を持ってきた。女王蜂としての「我」を濃密に放ちながら、アニメ作品とも見事に絡み合い、世界に「これが今の女王蜂!」というものを提示してきた楽曲たち。「バイオレンス」もまた、その系譜に連なるポップで大胆な楽曲と言えるだろう。
アニメ『チェンソーマン』は現在、恐らくアニメ第一期の最終局面というところだろうが、物語全体としては、早川アキは新しい力を手に入れ、デンジもパワーもレベルアップして、新キャラも続々出てきており、マキマも得体の知れなさが増しまくっていて、新たなフェーズに入るというタイミングである。そんな中で響いてきた女王蜂の獰猛なダンスチューン「バイオレンス」。個人的に『チェンソーマン』は原作が大好きで読んでいたし、アニメも毎週欠かさず観ている。時折見せる、因果関係の説明などは一切排した上で唐突に視点をスイッチしていくパンキッシュな展開や、デンジという主人公の、あまりに無垢な目線を通して見る社会や人間関係など、魅力的なポイントは多い作品だが、この『チェンソーマン』という作品が持つ「わからなさ」や「説明のつかなさ」も含めたリアルな肉体感や皮膚感覚を、「バイオレンス」という1曲は「人と人のコミュニケーション」という普遍的なテーマに昇華しながら、見事に捉えてみせているように感じる。