キタニタツヤ、スケールアップして剥き出しになったエモーション　はるまきごはん、柳田周作も登場した“てんこ盛りの一夜”

　と、ここで青い光がホール内を眩しく照らす。ダイナミックなSEとともに場面転換が行われると、ここからライブは後半パートへ。まずは、ビッグスケールのアンセム「永遠」。サーチライトのような光がぐるぐると回り、ヘヴィなギターサウンドが緊迫感を演出する。先ほどまでの音像や演出とのコントラストも鮮やかで、会場の音響も相まって鳥肌が立つようなリスタートだ。大サビ前には、オーディエンスの手拍子が力強くリズムを刻む。この日のライブだけでもさまざまな表情を見せてきたキタニだが、このストロングスタイルのロック感もやはり絶品だ。そのままの流れで「ハイドアンドシーク」へ。両手を広げて歌うキタニに負けじと、客席でも次々と手が上がる。一瞬にして場内の空気の密度が高まって、気温がグッと上昇したように感じる。

　大きな手拍子とともに始まった「Stoned Child」では、再びホーンセクションが楽曲に色を加え、「タナトフォビア」へ。ここでもサックスが音源以上の広がりとパワーを楽曲にもたらしていく。激しさと静けさ、ダイナミックな落差の中で展開するこの曲を全力で繰り出した直後に「楽しいですわ。みんなありがとう！」と砕けたMCをするところも、キタニらしい食えなさ。「もう1人ゲスト呼んじゃおうかな？」という言葉に客席からは大きな歓声が巻き起こる（当日は、ガイドラインを守った上で声出しがOKになっていた）。「柳田〜！」というオーディエンスの呼びかけに応えて登場したのはそう、神はサイコロを振らないの柳田周作だ。なんとアルバム『BIPOLAR』購入者限定で先行購入できたグッズの「キタニ解放 Faceセーター」を着ている。どうやら発売日にパソコンの前にかじりついてゲットしたらしい。そんなエピソードからも仲の良さが滲み出ており、「ちょっと呼吸整えていい？」などと言っている様子はなんともかわいらしいが、いざ演奏が始まれば別物。「愛のけだもの」はまさにボーカル同士の最高のバトル。それぞれのソロパートでは己の実力を誇示するような歌が鳴り響き、それが重なるときには2人の関係性を象徴するような美しいハーモニーが生まれる。柳田はノリノリで踊りながらとても楽しそうだ。

　柳田が去ると、いよいよライブは終盤戦。ギターを弾きながら洒脱なグルーヴが気持ちいい「人間みたいね」を歌うと、「新曲をやります！」と12月9日配信の「化け猫」を披露。ダンサブルなビートとうねるベースラインが効いたディスコチューンで、どこかノスタルジックな感じもする楽曲だ。演奏が終わると、客席からは大きな拍手と歓声が巻き起こった。その声を感慨深げに聞くキタニ。「“フー！”が言えるだけでこんなにコミュニケーションになるか。言葉やば！」と、とても嬉しそうだ。そして「来年もさらなる飛躍を頑張っていきたい」と抱負を語りつつ、対バンツアー『TATSUYA KITANI Presents “Hugs Vol.5 Tour”』の開催を発表。とりわけファイナル、東京公演の対バン相手がキタニにとっても思い入れの強いルーツのひとつであるASIAN KUNG-FU GENERATIONであることがアナウンスされると、祝福するような声と拍手が鳴り響いた。そしてまさにアジカン直系ともいえるストレートなギターチューン「スカー」を全力で鳴らすと、ラストはイベントタイトルにもなった「クラブ・アンリアリティ」。ミラーボールが煌めくなか最後の盛り上がりを描き出し、『LIVE IN CLUB UNREALITY Vol.2』はフィナーレを迎えたのだった。