矢野顕子、変化と進化を繰り返す絶品のアンサンブル 自由度高く鋭いメッセージを届ける『さとがえるコンサート2022』

矢野顕子『さとがえるコンサート2022』レポ

 また、宇宙飛行士の野口聡一が作詞を手がけた「ドラゴンはのぼる」「透き通る世界」も初披露された。「宇宙で自由に詩を書いて下さい。私が曲をつけます」「それは面白いかもしれない」ーーそんな会話で始まったというコラボレーションは、この2曲だけではなく、なんとフルアルバムにまで発展。野口が宇宙で全曲を作詞、宇宙に行きたいと強く願い続ける矢野が作曲・弾き語りしたアルバム『君に会いたいんだ、とても』は、2023年3月1日にリリースされる。この規格外の自由さもまた、矢野顕子だ。

 もちろん、45年以上に及ぶキャリアのなかから厳選された名曲の数々もたっぷり演奏された。久しぶりにセットリストに加えられた「LOVE LIFE」(今年、この楽曲をモチーフにした深田晃司監督による映画『LOVE LIFE』が公開されたことも話題に)をはじめ、人気曲、代表曲が散りばめられ、愛に溢れた矢野顕子の音楽世界をたっぷりと堪能できた。個人的な感想かもしれないが、彼女の楽曲には常に「人はみんな一人。だからこそ、他者に尊厳を持って接するべき」という凛とした姿勢が込められているように感じる。癒しではなく、赦し。甘えではなく、自律を目指す人同士の連帯。矢野顕子のライブの後、いつも背筋が伸びるような感覚に包まれるのは、きっと彼女自身の生き方に感化されているからだろう。

 家までの帰り道、「おなかすいたな、何食べようかな」と思うのも、矢野顕子のライブのお約束。カップルのお客さんが「よかったね、“ごはんをたべたい”」「違うよ、『ごはんができたよ』でしょ! 『ラーメンたべたい』と混ざってるから!」と笑顔で話している姿にもホッコリしました。

■コンサート情報
『矢野顕子さとがえるコンサート2022 featuring 小原礼、佐橋佳幸、林立夫』
12月19日(月)キャナルシティ劇場(福岡)
開場 17:30/開演 18:30
全席指定:¥9,500 ジーンズシート:¥6,600※最後方席になります
【問い合わせ】キョードー西日本 0570-09-2424(11:00-17:00 日・祝休)

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