Awesome City Club PORIN、ソロプロジェクト“Pii”として提示した音楽的ビジョン meiyoも駆けつけた初ワンマンを観て

ACC PORIN、ソロライブを観て

 Piiにとって初となるワンマンライブ『Pii × iiiii 〜庭に集う〜』が12月8日、渋谷WWWにて開催された。Piiとは、PORIN(Awesome City Club)のソロアーティストとしての活動名義であり、彼女は昨年の春以降、「シン・カヨウキョク」というテーマを掲げて音楽活動を行っている。11月には、これまでリリースした楽曲&新曲を束ねたEP『春が呼んでる』をリリースしたばかり。このタイミングで開催されたワンマンライブは、Piiの音楽的ビジョンをライブパフォーマンスを通して初めて体感することができる貴重な機会となった。この記事では、そのメモリアルな一夜の模様を振り返っていく。

 まず1曲目の「花明かり」から、日本人の心の奥深くに染み渡るような"侘び寂び"を感じさせる歌のメロディにグッと引き込まれた。ステージ上には、庭園を表す緑の木々が配置されていて、そうした演出も相まって「〜庭に集う〜」という今回のライブの世界観を視覚的にも堪能することができた。「今日はどんな夜にしようか」「一足早く春が来るような、気持ちのよい、幸せな時間をみんなとすごせたらと思っています」というPORINの挨拶の後に披露されたのは、164 feat. 可不の楽曲「全部全部全部」だ。歌だけではなく、軽やかにターンを決めたり、バンドのリズムに全身を委ねるようにしなやかに舞うPORINのステージパフォーマンスもとても魅力的だった。まるで優しく春風が吹いたかのような時間が流れていき、今が年末であることを思わず忘れてしまいそうになるほどだった。

Piiライブ写真

 ライブ中盤では、ゲストのmeiyoをステージに迎え入れて、お互いに向き合いながら「ラリー、ラリー」(MAISONdes)を披露した。2人の豊かなハーモニー&ボーカルリレーは美しい響きを放っていて、また後半に向けて熱量を高めていくバンドアンサンブルと熾烈なギターソロも圧巻だった。続けて、meiyoがPiiのために制作した「ヒノキノキ」へ。この曲は、サビにおけるPORINのとびっきりキュートな振り付けを含め、昭和のアイドル歌謡を想起させるようなカラフルなポップチューン。その一方アレンジは現代的で、サウンドはスタイリッシュに洗練されている。その意味でこの曲はまさに、Piiが掲げる「シン・カヨウキョク」の真髄のような楽曲なのだと思う。なお、この曲においては、meiyoはギターとコーラスでライブステージを鮮やかに彩ってみせた。両者の絆の深さが伝わってくるような、素晴らしいコラボ2連発だった。

 打ち込みナンバー「CRYPT」(MONDO GROSSO)では、ステージが暗転して、5人のサポートメンバーが楽器を置いて直立不動となり、彼らがかけたメガネが時おり暗闇の中で光る演出が目を引いた。間奏では、不穏なエレクトロサウンドのリズムに合わせて、PORINも含めた全員で肩を上下に動かす演出もあり、それはおそらくは80'sテクノポップへのオマージュだったのだろう。そして、そのエレクトロサウンドの流れを引き継ぐ形で、そのまま歌謡曲のカバーメドレーへ。ここで披露されたのは、「すみれSeptember Love」(一風堂)、「淋しい熱帯魚」(Wink)、「君に、胸キュン。」(YELLOW MAGIC ORCHESTRA)、「春よ、来い」(松任谷由実)の4曲。どの曲も、しっとりと胸に響く歌謡メロディ&ダンスミュージックの快楽性を見事に融合させたアレンジが施されていて、特にブレイクビーツを加えることでリズムの解釈を大胆に刷新した「春よ、来い」は、フロアから大きなリアクションがあった。

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