KinKi Kidsメンバー分析 第2回:堂本剛が見せてきた“自分らしい”生き様 苦しみと向き合う表現が持つ説得力

 スペシャルな企画が満載だったKinKi KidsのCDデビュー25周年イヤーも、いよいよ大詰め。11月28日に放送される『CDTVライブ!ライブ!』2時間スペシャル(TBS系)では、「KinKi Kidsデビュー25周年フェス」としてデビュー曲「硝子の少年」から「愛されるより 愛したい」「全部だきしめて」「愛のかたまり」、そして最新曲「Amazing Love」と、25年の歩みが蘇る名曲たちを披露してくれるというから楽しみだ。さらに12月24日、25日は東京ドーム、翌年1月1日、2日には京セラドーム大阪で『KinKi Kids Concert 2022-2023 24451~The Story of Us~』の開催も決定。そんな今こそ彼らの魅力を改めて振り返る企画、第2回は堂本剛。

ジャニー喜多川からの「変化球を投げ続けろ」という教え

 年末年始のKinKi Kidsコンサートといえば恒例となっているのが、1月1日の堂本光一の誕生日を堂本剛がチャーミングに祝うという流れ。「還暦のお祝い」とジョークを交えて腹巻きなどを贈ったこともあれば、心のこもったオリジナルのイラストが飛び出すこともあれば、「これを公開するときは芸能界を去るとき」とファンにも見せられない謎のモノに2人で盛り上がったことも……と、これまで様々なプレゼントで堂本光一を、そしてファンを笑顔にさせてきた。今年は何が飛び出すのか。ふと、そうした大きな期待と必ずそれを超えてくる堂本剛という図こそ、私たちが堂本剛というエンターテイナーに魅了されている理由なのだろう。

 「変化球を投げ続けろ」ーー以前、堂本剛はカバーアルバム『カバ』のリリース記念ライブにて、ジャニー喜多川からそう言われ続けていると語った(※1)。KinKi Kidsは、ジャニーズを創り上げたジャニー喜多川の「最高傑作」という言葉を耳にしたことがある。ジャニーズイズムを継承し、舞台『SHOCK』シリーズの座長として活躍する堂本光一に対して、“ジャニーズアイドル”のイメージ、ひいては“日本のアイドル像”そのものに変化を起こしていく堂本剛。直球と変化球、その相反する強みを持つ2人がデュオとして成立しているという奇跡に、改めてグッときてしまう。

「しんどい」と向き合い「大丈夫」と言い合える世界に

 堂本剛が見せた最も大きな「変化球」は、アイドルでありながら現実的な痛みや苦しみと向き合う姿だったかもしれない。かつてはアイドルといえば、元気いっぱいな楽曲を歌い、束の間の夢を見せてくれるような存在だった。対して、KinKi Kidsはデビュー曲「硝子の少年」からマイナー調という異例の展開を見せてきた。そこには、彼らの持つ歌声に現実を生きる質量のようなものを感じるからではないだろうか。特に堂本剛の全体的にビブラートがかかった歌声は、私たちの体内の水分と振動するかのような心地よさを覚える。また高音にかけてなめらかに奏でるファルセットも、水面のようにじんわりと響き渡る。彼の歌声には、どこかヒーリングミュージックに通じる癒やし効果を感じるのだ。

 そんな唯一無二の歌声で、人間・堂本剛として新たな音楽を披露しようと、ジャニーズ初のソロデビューも果たす。彼が作詞作曲をしたソロ曲「街」は、リリースされた2002年当時、非常に大きな話題を呼んだことを覚えている。多忙な日々を過ごす中で驚くほど繊細で緻密なメロディ。〈自分を守り生きていく時代だ〉という歌詞は、もはやあれから20年経ったとは思えないほど色褪せない。そして同年スタートした冠番組『堂本剛の正直しんどい』(テレビ朝日系)というタイトルもまた、当時としては斬新だったように思う。「しんどい」なんてぼやくのは甘え。頑張り続けるのが当たり前。そんなふうに感じられる時代の空気があった。そこに、過酷な労働環境の最前線とも言える“トップアイドルの堂本剛”が率先して「しんどい」と言うことが、どれほど新しい風を感じさせたことか。

ENDRECHERI - 街 / THE FIRST TAKE

 「痛みとか苦しみと向き合って生活している人たちに、少しでも“大丈夫だからね”って言ってあげたいなと思って。それが僕が音楽を作る一番の理由」とは、10月22日に堂本剛がパーソナリティを務めるラジオ『堂本剛とFashion & Music Book』(bayfm)で語られていたこと。生きていくためには、どうしたって抱えている苦痛に向き合う必要がある。そんなときに“ひとりじゃない”と思わせてくれる。そこには彼自身、過換気症候群、パニック障害、突発性難聴など病を患ってきたことも影響しているように感じる。何かに躓いたからそこで終わりではなく、自分を守りながら生き続ける姿を見せてくれる。躓いても躓いても立ち上がり、そしてそのたびにむしろ肩の力を抜いて生きる方法を見つけていく。その姿を知るからこそ、「しんどい」けれど「大丈夫」という彼の言葉に説得力があるのだろう。

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