連載「lit!」第22回:ID、Kojoe、Skaai、ONENESS、STUTS……ラップとトラックの相性で独自性を獲得する国内ヒップホップ5作

ONENESS「time is bubble Route91」

 新メンバーを迎えて3MCとなった東京・平和島を拠点に活動するヒップホップクルー、ONENESSはどうだろう。新作『RARE COIL』は、幻惑的なループミュージックとして、酩酊感に溺れさせるような、満足度の高い作品になっていた。その中で、収録曲「time is bubble Route91」のPhaze1992によるジャジーなトラックには、ひときわ酔いしれる。サウンドのメロディが醸すムーディーな感触と、淡々としたスキルフルでクールなラップの相性は、音の面でも、シーンの中で独自性を獲得する。統一されたムードを保ちつつ、各楽曲で色を変えるトラックのバリエーションが鮮やかなアルバム全編も、もちろん必聴である。

ONENESS「time is bubble Route91」

STUTS「Expressions feat. Daichi Yamamoto, Campanella, Ryugo Ishida, 北里彰久, SANTAWORLDVIEW, NENE, 仙人掌, 鎮座DOPENESS」

 マイクリレーはある種の旅なのかもしれない。トラックメイカー STUTSによるニューアルバム『Orbit』でも一際話題になった本楽曲は、豪華なメンバーが集まったマイクリレーである。個性豊かなラッパーたちを波に乗らせる、STUTSによるハウス的なトラックは、マイクの持ち主が変わるのと同様、多くの展開を用意し、我々を曲の始まりとは別の場所へと連れていく。様々に表情やキャラクターが変わる様はマイクリレーの醍醐味だが、キレの良いトラックにおいてもそれを実現し、豊かな音の旅を見せてくれる。単曲の密度を超えて、我々にヒップホップ的幸福感と純粋な音楽的快楽、その両方を提示する、まさしく現在のシーンの豊かさを包括するようなパフォーマンスと言えるだろう。

STUTS「Expressions feat. Daichi Yamamoto, Campanella, Ryugo Ishida, 北里彰久, SANTAWORLDVIEW, NENE, 仙人掌, 鎮座DOPENESS」

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“私は時々内省的になる”、というのは9月に来日公演も決定しているリトル・シムズが昨年リリースしたアルバムのタイトル(『Somet…

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