連載「lit!」第10回:ファレル・ウィリアムス、カルヴィン・ハリス、カーディ・B……ヒップホップの枠を広げるコラボ曲5選
劇的なコラボレーションは、ヒップホップにとどまらず、常に私たちを煽り、翻弄しながら、期待させるものだ。今回の「lit!」では、今年リリースの客演、コラボレーション楽曲に注目する。例年と同じく、良曲の多かった印象のある上半期だが、その中から、特に気になる楽曲を5曲ほどピックアップしていきたい。
Latto「Sunshine feat. Lil Wayne & Childish Gambino」
リリースされたのは今年の春先だが、むしろ日常的に暑さが襲う今こそ聴くのにふさわしいような、清涼感を湛えたLattoの『777』から1曲。Latto曰く“フッドゴスペル”(※1)だというこの曲は、ピアノから始まるBongo By TheWayのゴスペルチックなトラックが、3人の軽快なライムに華やかさを加え、より豊かで心地の良い感触を残している。自身の成功とそれを認めない周囲の人間への批判、前向きなセルフラブに溢れたLattoのヴァースはシンプルながらも聴きどころに溢れているが、何よりもリル・ウェインとチャイルディッシュ・ガンビーノの共演曲となっていることにも興味をそそられる。安定した客演仕事をこなす前者はもちろん、決して多くはない近年の客演曲の中でも、〈I’m sweeter at rapping, he like what the fuck happend?〉と言いながら、最もストレートなラップを披露する(その上、フロウ自体もいくらかリル・ウェインに接近しているように感じる)後者のヴァースに新鮮味があると言えるだろう。
ファレル・ウィリアムス「Cash In Cash Out feat. 21 Savage, Tyler, The Creator」
上記のLattoのヴァースでも巧妙な形で引用されていたファレル・ウィリアムスだが、彼の新曲もまたユニークなコラボレーションが実現している。締まりの効いたスネアのリズムと低音の鳴りに耳を抉られるような、ファレルによるヘビーなビートに、21 Savageとタイラー・ザ・クリエイターによる遊び心溢れたラップが、これ以上ないハマり方を見せ、ダークかつユーモラス、それでいて中毒性の高い3分36秒を構築する。クレイアニメーションによってその喧騒を豪華かつ独創的に見せるMVも話題になった。それぞれのメイクマネーの言及を散りばめながらも、様々な引用が飛び出す2人のラップだが、コラボレーションという意味では、21 Savageの〈You know my method, I’ma turn your shirt red, man/Then send your ass how high〉というラインに惹かれる。メソッドマンとレッドマンの2人によるヒップホップデュオ、彼らが主演を務めたコメディ映画『How High』を引用するこの言葉遊びは、楽曲で最もユーモラスなラインの1つだろう。
カルヴィン・ハリス「New Money with 21 Savage」
直近の21 Savage案件からもう1曲、夏にふさわしいラップソングが届いた。多様なコラボレーションにより、5年前の夏を盛り上げたカルヴィン・ハリスによるアルバムの続編『Funk Wav Bounces Vol.2』の先行シングルとしてリリースされたこの曲では、上記のファレルのビートと対照的な(正にファンクでバウンシーな)トラックの上で21 Savageが自身のリッチな生活、成功についてラップしている。「Cash In Cash Out」のヴァースと連続的に捉えることもできるだろう。シンプルかつタイトに、トラックの爽やかさと21 Savageの低い声のバランスが絶妙な感触を残し、楽曲は独自性を放つ。先行曲だけでも、夏のアルバムとして期待せざるを得ない、そんなカルヴィン・ハリスのアルバムは、8月5日にリリース予定。