斉藤和義、シンプルなアレンジで奥深さ増す“歌”の世界 30年のキャリアをじっくりと味わった弾き語りツアー初日

斉藤和義、弾き語りツアー初日公演レポ

 さらにライブ後半では「明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ」をはじめとするアッパーチューンを連発。ステージと客席の距離をしっかりと縮めてみせた。体を揺らし、手を上げ、ハンドクラップを鳴らすオーディエンスもとても楽しそうだった。

 そして、もっとも心に残ったのは、やはり「歌うたいのバラッド」。YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」での一発撮りパフォーマンスも話題を集めた、問答無用の名曲だ。この日の演奏は特に繊細で、ギターの弦の揺れ、メロディの細部までがしっかりと伝わってきた。曲を書いて歌うという行為、大切な人に“愛している”という言葉を手渡すこと。シンガーソングライターとしての本質を描いたこの曲は、この日も豊かな感動を生み出していた。

 ほかにも自作のエレキギター(名前は“ズッコ2”。命名は吉井和哉だそう)で1曲歌ったり、斉藤が収集している“私物”を写真で紹介したりと見どころは満載。「ツアーの初日は地元から。懐かしいな」(斉藤は栃木出身なので、もちろん嘘)というリラックスしたMCを含めて、彼自身の人となりが感じられたのも印象的だった(そのほかの演出はネタバレになるので書きませんが、筆者の後ろのお客さんが「ホントに猫好きだよね」と言ってたことだけは記しておきます)。

 『斉藤和義 弾き語りツアー「十二月〜2022』は全26公演。12月21日には、2004年の『弾き語り 十二月 in 武道館 〜青春ブルース完結編〜』以来、18年ぶりとなる日本武道館での単独弾き語り公演も行われる。前述した通り、来年はデビュー30周年。キャリアを重ねるごとに奥深さを増す斉藤の弾き語りをぜひ、ライブ会場で味わってほしいと思う。その際、過去の弾き語りコンサートのライブ盤を聴いて予習するのもおすすめだ。

斉藤和義 弾き語りツアー 2022特設サイト

■斉藤和義 配信リリース情報
『KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 “202020 & 55 STONES” Live at 東京国際フォーラム 2021.10.31』(ライブ音源)
詳細:https://jvcmusic.lnk.to/202020-55STONES_211031

「歌うたいのバラッド - From THE FIRST TAKE」(配信シングル)
詳細:https://jvcmusic.lnk.to/utautainoballad_TFT

斉藤和義「歌うたいのバラッド」はなぜ歌い継がれる名曲なのか 『THE FIRST TAKE』の演奏が引き立てる“歌うことの奥深さ”

今年6月にMANNISH BOYS(斉藤和義、中村達也によるユニット)のデビュー10周年を記念したツアーを成功させ、8月からはカ…


斉藤和義、普遍性と時代性を同時に伝えるステージ 『202020』『55 STONES』携えた全国ツアーファイナル

60年代、70年代、80年代のルーツ音楽を血と肉にし、今の気分やムードを反映しながら、いろいろな感情ーー楽しさ、悔しさ、切なさ、…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる