ELLEGARDENの音楽はバンドの生き様そのものだーー新曲「Mountain Top」に感じる、再び集結した意義

 2022年9月9日。ELLEGARDENが16年ぶりとなる新曲「Mountain Top」をリリースした。同日に開催されたライブイベント『BAND OF FOUR -四節棍-』のアンコールにて初披露され、終演後にサプライズ配信した形だ。現在、彼らは新アルバム制作の真っ最中。それに先駆けて公表された楽曲となる。

 September 9th(9月9日)発表に、pirate ship(海賊船)モチーフ。代表曲の一つ「No.13」ともリンクする同曲は、帆を下ろしかけた男が自問自答を繰り返しながらもう一度立ち上がるまでの決意を、叙情的な英語詞と調和の美しいサウンドデザインで描いたミドルテンポのナンバーだ。

ELLEGARDEN - Mountain Top [MUSIC VIDEO]

 かねてより、作詞作曲・ボーカルを担当するフロントマンの細美武士は、バンドは海賊船のようなものだと語っている。 荒波に飲まれそうになり、やむなく停泊を判断した2008年から、10年の時を経て2018年に活動再開。その後はライブイベントこそ精力的に参加していたが、新曲は未発表のままだった。再び始動して4年。「Mountain Top」の中に投影された迷いや痛みを伴う心情は、彼らが16年の間に歩んできた過程にも重なる。

 ELLEGARDENを離れたからこそ得た音楽経験と、再始動以降の4年間でいっそう強まった絆が生み出した同曲は、新生というよりも、やはり再出発といった言葉が相応しい。初期の「ジターバグ」「風の日」といったメロディアスな曲調とも、後期の「Space Sonic」「Salamander」で魅せたエッジの効いたロックとも違う。「Mountain Top」は、連なった音をまっすぐ心に響かせる骨太で穏やかな楽曲に仕上がっている。

 澄み渡った空の下、波間をひとり漂うような歌い出しの回想。ギターとベースの音色は抑えられつつも優しく、孤独が滲んだ声を引き立てる。一転、4人の音が一斉に空を貫く力強いサビは、まるで物語を動かす意志表明のようだ。特に〈I’m the one who wants to burn out/I’m the one who needs to find out/I’m the one who craves the last match〉と勝負心を奮い立たせる一節において、とりわけ“crave”という単語が、現在の心境を表していると感じて印象に残った。

 “crave”とは、切望の意。多くの傷を抱えながら登り抜いた“Mountain Top=山の頂”から見えるのは、おそらく平坦な道のりや安定した水平線だけではないだろう。嵐や悪魔との遭遇を見据えてまでも、彼らは新しい音楽を鳴らすと決めたのだ。もとよりELLEGARDENとして制作すること自体が大きな“山”であり、メンバー自身がずっと見つめていた願いだった。ともすると表に出てしまう心細さを支えるように、ドラムのどっしりとした安定感が楽曲全体を包み込んでいる。

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