稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾が5年間で新たに切り拓いてきた“5本”の道 新しい地図設立5周年に寄せて

 9月22日、稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾による新しい地図が5周年を迎えた。公式HPでは待望の有観客『NAKAMA to MEETING_vol.2』の開催が発表され、雑誌『JUNON』(主婦と生活社)では3年半ぶりに3人が揃って登場し16ページにも渡る別冊付録特集が組まれるなど、盛り上がりを見せている。同誌で香取が「みんなの作品を追いきれないぐらいになってきて、すごいなと思います」と発言しているように、舞台、映画、そしてバラエティとますます活躍の幅を広げている3人。真っ白なところから始まった新しい地図が、5年でこれほどまでに充実することになるとはさすがの一言だ。そこで今回はこの5年間で切り拓かれた彼らの新たな5本の道を振り返りたい。

俳優・草彅剛の飛躍

 この5年で最もインパクトがあった出来事といえば、草彅が主演した映画『ミッドナイトスワン』で第44回日本アカデミー賞・最優秀主演男優賞を受賞したことではないだろうか。かねてより“憑依型俳優”として演技力に定評のあった草彅。これまでも多くの賞を受賞してきたが、やはり日本アカデミー賞というのは特別な響きがあった。

 トランスジェンダーを主人公にした意欲作だけに様々な声が上がった本作。まだ模索が続く社会において考えるきっかけを生み出し、議論を巻き起こすこともエンタメの持つ役割の一つだ。何より大きな話題になったのは、それだけ草彅の演技が多くの人の心を打ったことの証でもあるように思えた。

 頭で考えて作り上げるのではなく、人間の本質的な感情を体内から表面化させる。草彅が“憑依型”と呼ばれるのは、それぞれの役柄の中に誰もがハッとさせられるものを見せつけられる瞬間があるから。それは時代を越えた人物を演じる上でもそうだ。NHK大河ドラマ『青天を衝け』で演じた徳川慶喜は、新たな徳川慶喜のイメージ像を作り上げたといっても過言ではない。

 どんなに苦しくても、過酷な運命を背負っていても、それでも生きていく。そんな役を好演するのは、それだけ草彅剛という人が覚悟を持って生きているからではないだろうか。きっとこの5年で草彅が触れたもの、感じたことが、次の傑作へと繋がっている。そう期待せずにはいられない。

ラジオパーソナリティ・稲垣吾郎の開花

 新たな道といえば、稲垣がラジオ『THE TRAD』(TOKYO FM)にて初の帯番組生放送を担当したのも、これまでにない一歩だった。もともと稲垣は長年『編集長 稲垣吾郎』(文化放送)を担当しており、その落ち着いたトーンの語り口はラジオ向きではあることは十分にわかっていた。それでも『THE TRAD』のレギュラー出演は想定していた以上の適役だったように思う。

 考えてみればこれほど国民的アイドルとしての知名度を持ちながら、プライベートが見えない人もなかなかいない。しかも一度そのベールをめくれば、植物に囲まれたボタニカルライフ、ワインにカメラ、サウナ……と、健康的で多彩な趣味の話が広がる。期待通りのようでいて、それ以上の驚きもある。そんな稲垣の最新情報が週2日リアルタイムで報告されるのは、新しさが感じられ毎回聴き応えのあるオンエアとなった。

 さらに、読書バラエティ番組『ゴロウ・デラックス』(TBS系)を筆頭に、ホストとしてゲストのトークを引き出すことにも長けていた稲垣。ミュージシャン、作家、俳優、芸人……とあらゆるジャンルのゲストと音楽をきっかけに語らう。そこからお笑い芸人・ニューヨークが稲垣をイジるネタを生み出すなど、意外な発展を遂げたことも記憶に新しい。

 カメラ150台、植物70鉢……と、35年も共に歩んできた草彅&香取も驚くほど、まだまだ知られていない情報が次々と出てくる。その掴めそうで掴めない不思議な人となりが、これからもラジオという特別な空間で、少しずつ解き明かされると思うと完結までまだまだ遠いミステリーを楽しませてもらっているような気分だ。

テレビの申し子・香取慎吾の逆襲

 新しい地図を広げた当初、3人のテレビ出演はパタリと途絶えた。そのどれもが長い間愛されてきた番組ばかりだったこともあり、残念な気持ちでいっぱいになったことを覚えている。先日、彼らと縁深い放送作家の鈴木おさむがパーソナリティを務めるラジオ『JUMP UP MELODIES』(TOKYO FM)に香取がゲスト出演した際、『SmaSTATION!!』(テレビ朝日系)が終わる1年ほど前からバタバタとした結果、現場を離れていた鈴木おさむ自らがスタジオに赴いていたという会話があった。それほど当時、3人を取り巻く環境は異常事態だったことがうかがえる。

 特に幼いころからテレビに出続けてきた香取にとっては、テレビのレギュラー番組がなくなることはかつてない経験だったことだろう。だが、その唯一無二の経験と感覚はしっかりとインターネットテレビ『7.2 新しい別の窓』(ABEMA※以下、『ななにー』)で活かされることになる。『香取慎吾の天声慎吾』(日本テレビ系/1999年から『香取慎吾の特上!天声慎吾』)で味わった“遊び場”としてのバラエティ番組作り、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)を思い出させるレギュラー陣とのファミリー感、『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)のようなゲストと歌うライブコーナー……7.2時間の生放送という『ななにー』の新しさの中に、どこか懐かしさや親しみやすさがあるのは、かつてたくさんの視聴者に愛されてきた番組たちのエッセンスが散りばめられているからかもしれない。

 Twitterに、Instagram、ブログ、YouTube、TikTokと、精力的にSNSで表現の幅を広げ、若い世代の才能ともコラボを実現。さらにウェブドラマ『誰かが、見ている』、お笑いドキュメンタリー番組『ドキュメンタル』(ともにAmazon Prime Video)への出演と、新たなメディアで遊びつくす香取に、もはやインターネットへの露出に慎重なスタイルを見せていた姿を思い出すことが難しいほどだ。今年から『ワルイコあつまれ』(NHK Eテレ)がレギュラー化したことで、また風向きが変わってきたように感じている。香取がインターネットという遊び場で得た経験が、今度はテレビの地上波で生かされていくのではないか。変化の激しい時代に求められる“ハイブリッドビジネスアイドル”として、どこまで輝きが増していくのか楽しみでならない。

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