大原櫻子、新たなアプローチで歌い上げる“リアルな恋心” 蒼山幸子とのタッグで引き出されたドラマチックな一面

大原櫻子、新曲「Door」の新たな試み

 大原櫻子が初の3カ月連続配信シングルを発表する。9月21日にリリースされた第1弾楽曲「Door」は、小名川高弘が作曲・編曲を、初タッグとなる蒼山幸子(ex.ねごと)が作詞を手掛け、恋人の別れの心情を描いた、切なくも表情豊かなバラードとなっている。歌詞のテーマ、歌唱スタイルも含め、大原の新たな側面を切り拓く楽曲だと言えるだろう。そんな3カ月連続配信や「Door」に込めた想いから、10月に控えるライブ『billboard classics 大原櫻子 Premium Symphonic Concert』への意気込みに至るまで、“音楽モード”に突入しているという大原櫻子に話を聞いた。(編集部)

今まで見えていなかった大原櫻子をグッと引き出してもらった

ーー今年に入ってから『ミネオラ・ツインズ ~六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ~』『ザ・ウェルキン』という2つの舞台に出演された大原さんですが、4月には出演映画『ホリック xxxHOLiC』の公開もありましたし、役者としての活動が活発化していましたね。

大原櫻子(以下、大原):そうですね。5月にシングル『それだけでいい』をリリースはしましたけど、それ以降はずっと『ザ・ウェルキン』で過酷で濃密な日々を過ごしていましたからね。7月に公演が終わったので、今は音楽活動モードにグッと入った感じです。

ーーそのモードチェンジはスムーズにできていますか?

大原:演じた役柄にもよるんですけど、以前はなかなか役が抜けなくて、いざ音楽活動を始めても「あれ、私どういう風に歌っていたっけ?」みたいになることも結構ありました。でも最近は、お芝居しているときの自分を客観的に見ることができるようになったので、比較的すんなりとモードを切り替えられていると思います。

ーー役者というフィールドがあるからこそ、音楽モードになったときに歌うことの楽しさを改めて実感することもありそうですよね。

大原:それは本当にそうですね。私は声帯をしっかり使う役柄を演じることが多いので、お芝居のお仕事をしている最中は歌うことをセーブしているんですよ。音楽は日常の中でよく聴いているし、聴いていれば自然と歌いたい気持ちになるんですけど、それを我慢するっていう。だから音楽モードになった瞬間に、めちゃくちゃ歌い始めるんです(笑)。『ザ・ウェルキン』が終わった後も、「歌うことってやっぱり楽しいー!」って思いながらいろんな歌を家で、何も気にせず歌い続けてましたね。

ーーそんな大原さんが今回、3カ月連続配信リリースというプロジェクトを始動させました。その第1弾となるのが新曲「Door」です。

大原:3カ月連続で新曲を配信するのは自分にとって初めてのことなので、すごく新鮮な気持ちがありますね。3作とも恋心を歌うことを軸にしようと決めて、それぞれに異なるシチュエーションで角度の違った恋心を描くことで、みなさんに共感していただけたらいいなと思っています。3作連続だからこそ見える“異なる価値観”も含めて楽しみにしてほしいですね。

ーー「Door」は別れを決意した女性のリアルな感情を紡ぎ出した1曲ですが、どんな流れで制作をしていったのでしょうか?

大原:最初に作曲とアレンジをしてくれている小名川(高弘)さんと楽曲のイメージについてディスカッションをさせていただいて。恋心を抱いている相手に対してなかなか思いを伝えられない、もどかしい曲にしようというイメージを共有した上で楽曲を作っていただいたんです。ただ、その後に作詞を蒼山幸子さんにお願いすることになり、実際にお会いして話していく中でちょっと内容の方向性が変わっていったんですよ。こちらで考えていたテーマを伝えた上で、でき上がっていた曲を蒼山さんに聴いていただいたところ、「そのテーマもすごく素敵なんですけど、逆に別れがわかっている女の子の気持ちを書くのはどうですか?」っていう提案をいただいて。それを聞いたときに、「今までそういう曲って歌ったことがなかったな」と思ったし、ちょっとダークさと切なさのあるメロディとサウンドにもマッチするなってすごく感じたんですよね。そこでこの曲のゴール地点がより鮮明になったので、「その方向でぜひよろしくお願いします」とお伝えして、歌詞を書いていただきました。

ーーそのアプローチは大成功でしたよね。新たな大原さんを感じさせてくれる曲になったと思います。

大原:そうですね。3カ月連続でいろんな恋の形を見せていく、その入り口としてもこの「Door」が持っているアンニュイさはおもしろいんじゃないかなと思います。

ーーアレンジに関してはどんな印象を受けましたか?

大原:細かい部分に関しては小名川さんにお任せしていたのですが、非常にかっこいい仕上がりにしていただけたのが嬉しかったですね。サビの雰囲気が本当に大好きだし、Bメロでちょっとリズミカルな雰囲気になるところも聴いていてワクワクしますし、曲の世界観にグッと引き込むように、歌始まりにしてくれたところも気に入っています。サウンドに関して具体的なイメージを持っていたわけではなかったけど、でき上がったものを聴いていると、まるでパズルのピースのように自分の心にハマったような印象がありました。

ーー先ほどお話に出ましたが、今回は作詞を蒼山さんが手がけています。その起用はどんな理由からだったんでしょう?

大原:制作の前段階でスタッフさんといろいろ話していく中で、歌詞はアーティストの方に書いてもらうのがいいんじゃないかっていうことになったんですよ。そこには作詞家さんとは違ったエモーションやオリジナリティが生まれると思ったので。そこで、恋心を歌っていくという今回の連続配信のテーマの中でいい世界観を紡いでくれる方ってどなたかいらっしゃらないかなと、いろいろなアーティストさんの作品を探していった結果、蒼山さんと出会いました。ねごと時代の曲はもちろん、ソロの楽曲も聴かせていただきましたけど、蒼山さんだったら私の感覚に近い歌詞を書いてくださるはずだと思って。比較的、世代が近い同性の方っていうのも、お願いする上での大きなポイントでしたね。

ーー歌詞について何かオーダーはしたんですか?

大原:決して綺麗事ではなく、人間臭い心情を蒼山さんらしく書いていただきたいです、というお話だけはさせてもらって。その結果、非常にリアルな歌詞を書いていただけました。私の楽曲としては今までにない雰囲気だけど、私自身とかけ離れている部分は微塵もなくて。むしろ蒼山さんの歌詞によって、今まで見えていなかった大原櫻子をグッと引き出してもらったような感覚があります。ダイレクトにバーンと感情を出しているところがあったかと思えば、複雑な感情を描いているところもある。その絶妙なニュアンスが素晴らしいですよね。私は2サビの〈こんなにも薄情なわたしがいたことも/きっとあなたは知らないままでしょう〉のところがすごく好きなんですよ。いい意味で、蒼山さんならではの毒が出てるなって。

ーー共感できる部分が多かったですか?

大原:すべてにおいて、めちゃくちゃ共感しましたね。〈バーボンソーダ傾けて/あなたはまた言葉を飲む〉〈あんなに好きだった横顔が/他人に見える〉とか、歌詞通りの経験はしたことないんですけど(笑)、でもその感情は私自身としてもすごくよくわかるなって。〈ふたりでいるとひとりきりになるの〉っていうフレーズもすごく好きですね。

ーー心の中の様子とリンクした情景が描かれる大サビもいいですよね。

大原:そうそう。この主人公が別れを決意して、次の一歩を踏み出すところで曲は終わりますけど、その先もすごく気になってきますよね。「今どんな思いなんだろう」とか、「もしかしたら相手の人よりも引きずっちゃってるのかもしれないな」とか、いろんな想像ができる歌詞になっているのも好きなポイントですね。

ーーラストの〈いっそこの恋とわたしが傷に変わって/永遠に残るように〉っていうフレーズはドキッとしますよね。

大原:いいですよね。ちょっと毒を感じさせるフレーズではあるけど、その裏には相手に忘れてほしくないっていう気持ちが隠れているような気もするし。実はこの部分、制作の途中で言い回しを変えた方がいいんじゃないかっていう意見がプロデューサーさんやディレクターさんから出たんですよ。でも私は絶対このままがいいと思ったし、女性のスタッフの方も同意見だったので、「このまま行きます!」って戦いました。プロデューサーさんたちは女性軍団の意見の強さに押されてましたね(笑)。

ーー(笑)。今回の歌詞って、ちょっと昭和歌謡っぽいニュアンスも感じますよね。

大原:それ、私たちもレコーディングのときにみんなで話してました。それこそ〈バーボンソーダ〉というワードもそうだし、ちょっと懐かしくて渋い感じがありますよね。私自身、歌謡曲が好きで歌う機会もあったりするので、そういう部分でも曲の世界に入りやすかったし、だからこそ歌いやすかったんだと思います。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる