AKB48、ファッションやメイクがテーマの曲は傑作揃い 「久しぶりのリップグロス」に感じたアイドル性とほろ苦さ
AKB48が8月29日放送の『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)にて、メジャー60作目となるシングル曲「久しぶりのリップグロス」(10月19日リリース)を初披露した。
ハードなダンスパフォーマンスで話題となった「根も葉もRumor」(2021年9月リリース)、「元カレです」(2022年5月リリース)でグループとして新境地を開拓したAKB48。しかし今回の「久しぶりのリップグロス」は、AKB48の公式も「帰ってきたAKB48王道アイドルサウンド!」と打ち出しているように、楽曲はもちろんのことミュージックビデオもグループのアイドル性が感じられる内容となっている。
ファッションやメイクをテーマとしたAKB48の曲は傑作揃い
まずそのタイトルやテーマがAKB48らしさを表しているのではないか。これは筆者の持論だが、ファッションやメイクをイメージさせるタイトル曲は傑作揃いだと思っている。「ポニーテールとシュシュ」(2010年)、「Everyday、カチューシャ」(2011年)、「ギンガムチェック」(2012年)、「11月のアンクレット」(2017年)などはいずれもAKB48の代表曲である。ファッションやメイクに関するアイテムが登場することで、少女と大人のはざまを揺れ動く雰囲気や、誰かを惹きつけようとしている様子、すこし背伸びをしているところなど、若者の多感さが楽曲に表れる点が魅力だ。
ただ、これまではそういったアイテムなどが思春期性を表していたが、今回の「久しぶりのリップグロス」は一味違う。夏が終わる時期を舞台に、かつて愛し合っていた“二人”の再会と関係の終焉が描かれており、ノスタルジックかつ非常にビターなムードにつつまれている。特に〈結婚をするんじゃないか? おめでとうとしか言えない〉という直接的な歌詞は、AKB48としてはこれまでにないアプローチと言って良いだろう。過去と現在の“君”のリップグロスの輝き方の違いから、お互いの状況や気持ちの変化をうかがわせる部分は、表現として実に見事。さらに同曲は、もう会わなくなったとしても“二人”の心にはずっと残り続けるものがあるというイメージも喚起させ、切ないストーリーとなっている。
本楽曲には、“二人”のやりとりについて「果たしてこれを恋愛感情と捉えて良いのか」と聴き手を惑わせるような、ほろ苦い大人の関係性が流れている。サウンド面は確かにAKB48の王道/原点回帰を感じさせるが、その内容は今までにないほどセンチメンタルなものではないだろうか。聴き手も思わず自分のかつての恋愛を重ねてしまい、心がキュッとなるはず。