矢沢永吉、活動50周年で立った新国立競技場のステージ B’zも駆けつけた特別な一夜

矢沢永吉、B’zも駆けつけた特別な一夜

 メロウなナンバー「YES MY LOVE」はそんな涼しい夏の夜にぴったりだった。TRICERATOPSの吉田佳史(Dr)、2014年に矢沢自らメンバーを選んで組まれたバンド、Z’sからの田浪真悟(Ba)が堅実なグルーヴを生む。中央にせり出したセンターステージで歌っていた矢沢がスロープを歩きながらメインステージに戻る際、「この坂、結構キツいんだよ(笑)」と呟き、会場を和ませる。

「去年、31回のステージをやりました。そのときはマスクして、“申し訳ない!”という気持ちでやりました。来年はコロナがいない中で……来年になったら、とか言ってたんだけど全然、まだ。昨日も同じこと言ったんだけど、コロナには絶対負けねえぞっていう感じです。いろいろあります。毎日、新聞を見ても、本当にいろいろあります。YAZAWAいいこと言ったよ。“ほんのちょっと良いことがあれば、また頑張れるよ”って。みなさん、そんな感じで頑張っていきましょう!」

 秋田慎治(Key)がハネたリズムのオルガンを弾く。ロックンロールナンバー、「黒く塗りつぶせ」だ。米川英之(Gt)のリフがエッジィに切り込み、矢沢の「Wow〜」のコーラスに8年ぶりのバンド参加となるToshi Yanagi(Gt)の咽び泣くギターが食らいつく。すると、矢沢が口を開く。

「昨日、YAZAWA50周年、MISIAが駆けつけてくれました! そしたら言われました、“永ちゃん、オレ2日目行くんだけど、1日目はMISIAで、2日目は誰もいないわけ? 金払ってるのに?”って言われました。YAZAWA50周年、“矢沢さん、今日行きまっせ”っていう、すげぇゲストが駆けつけてくれてます! 紹介します、B’z! 松本、稲葉!!」

 そうして、松本孝弘(Gt)と稲葉浩志(Vo)を呼び込むと、両手を広げて迎え入れ、熱い抱擁を交わす。初日のゲストであるMISIAは事前に発表されていたが、2日目はゲストがいることすら告知されていなかった。思わぬシークレットゲストに会場から思わず悲鳴のような歓声が湧きあがった。

 松本がゴールドトップのレスポールから極上の音色で、「黒く塗りつぶせ」のコーラスリフを奏でる。稲葉が粘りのあるハイトーンボーカルを響かせると、「永ちゃーん!!」と矢沢にボーカルを渡す。まさかの日本のロックスターの共演に、国立競技場は熱狂の渦が巻き起こった。

 「たまんないね! もうね、オレ幸せ。飲み屋か何かで、松本君に会ったんだよね?」と、お互いの邂逅を矢沢が語る。「これだけのメンツが集まったからさ、もう1曲やろうか!」。そう口にすると、松本が聴き慣れたあのリフを弾き出す。矢沢のキャリアの原点であるバンド、キャロルの代表曲「ファンキー・モンキー・ベイビー」だ。矢沢と稲葉が肩を組んで歌う、そんな贅沢な光景にオーディエンスは手をあげ、拳をあげて応えた。「50周年おめでとうございます!」。稲葉が矢沢を讃える。「朝までやろうぜ!」とゴキゲンな矢沢。2人がステージを去っても、しばらくどよめきが収まらなかったことは言うまでもないだろう。

 アンコールはハットを被り、上下白を纏って登場した矢沢。「止まらないHa~Ha」ではお馴染みの“タオル投げ”が3年ぶりに解禁。「待ってました!」と言わんばかりに6万人のさまざまな色のタオルが一斉に舞う光景は壮観だ。その景色を眺めながら、満足げに「ありがとう!」を連呼する矢沢。少しずつだが、ライブを取り巻く環境が戻ってきているのだと、しみじみ感じた場面だった。

「たまんねぇーよぉぉぉ!!」

 矢沢が叫ぶ。続けて、「昨日やらなかったらメールが来て、“永ちゃん、トラバスやってよぉー”って。OK、Toshi!」の声を合図に、長年ファンから愛され続けてきた名曲「トラベリン・バス」が始まった。

 これでもかというくらい、客席から宙に高く舞いに舞ったタオル。「Come on! Hey! Hey! Hey! Hey!」とお決まりのコールアンドレスポンスに、声は出せないがタオルと手をあげて力一杯応える6万人のオーディエンス。静寂の大歓声に包まれ、ライブは大団円を迎えた。

 YAZAWA50周年、国立競技場のこの二日間はこの先も語り継がれる一夜になった。ツアー『EIKICHI YAZAWA 50th ANNIVERSARY TOUR「MY WAY」』は、9月18日に福岡 PayPayドーム、9月25日に京セラドーム大阪で行われる。矢沢永吉、72歳。日本が誇る史上最高のロックスターの新たな伝説はまだ始まったばかりだ。

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