音楽における“ヒットチャート”の難しさ ユーザーは結果とどう向き合うべきか
さらに、サブスクでの視聴を中心に、売上ではなく再生回数に指標の軸がシフトしていくと、チャートの上位が何カ月も同じ顔ぶれになってしまうことが散見される。サブスクの最大手Apple Musicの国内チャートなどでは、新規アーティストがベスト100に入るのは至難の業だ。チャートに変動が少ないとなると、これまでチャートを通じて新たな音楽と出会ってきたユーザーにとっては、その分出会いの機会が失われることになる。
そんな中、僕がチャートの新しい概念として注目するのはLINE MUSICのリアルタイムチャートとSpotifyのバイラルチャートだ。
ウィークリーやデイリーという集計期間を最大限圧縮して、即時性に特化したリアルタイムチャート。サブスクの中で聴かれる楽曲がSNSを通じてどうシェアされているかを独自の基準で数値化したバイラルチャート。どちらも順位が変動し、その中で今後ブレイクする可能性のある新規アーティストとの出会いがあり、概念としての「今」を感じさせられるチャートである。
このように、チャートの権威の傘の元、結果を受動する時代は終わったと言える。むしろ、各チャートの独自性を把握した上で、「今」を示すヒット曲と出会うためのツールとしてユーザー単位でカスタマイズしながら活用していく時代に突入したのではないか。そして、チャートの結果だけを盲信せず、そこに別な力学が働いてないかを検証する目を持つこともまた、大事なことではないだろうか。