広瀬香美「ロマンスの神様」、Tani Yuuki「X/Y/Z」……2022年上半期トレンドに見るTikTokヒットの新潮流
Tani Yuuki「X/Y/Z」、有華「Partner」など共感度が高い楽曲の流行
もうひとつ、「TikTok2022上半期トレンド」でノミネートされた楽曲について取り上げたい。ミュージック部門の上半期トレンドに選出された、Tani Yuukiの「X/Y/Z」だ。
2021年5月にリリースされた同曲は、〈2人酸いも甘いも 噛み合わないとしても お互い寄り添うように 少しずらしてみようよ〉という箇所がクローズアップされて人気を集めた。こちらは振付動画や歌ってみた動画だけではなく、投稿者が大切な人と一緒に撮った動画にこの曲を重ねる内容も目立った。楽曲自体に共感度が高く、さまざまな人の日常にフィットする歌詞とメロディが若者たちの気持ちを揺さぶったのではないか。
こういった「大切な人との日常」について歌った楽曲は、TikTokでは、いろんな解釈のもとでアレンジが施されて拡散されることがある。こちらはノミネート作品ではないが、上半期にブレイクした有華の「Partner」は、人間だけではなくペットなどの姿に楽曲を重ねた動画が多数投稿された。本来の楽曲の意図から予想外の発展を遂げ、いろんなパートナーの形がそこに映し出されたのだ。その自由度とユニーク性が高い楽曲解釈は、まさにTikTokならでは。TikTokではそうやって、楽曲の可能性がどんどん広がっていく。
よく「良い音楽は時代をまたいでも聴き継がれる」と言われる。それでも、従来の視聴プラットフォームでは「懐かしむもの」の枠をなかなか超えられなかった。しかしTikTokは、振付などの効果もあって、かつての曲であっても「進化」が感じられる。これは音楽にとって非常に理想的なことであるように思える。下半期はTikTokでどんな曲が発見され、そしてトレンドとなるのか。これからもチェックし続けたい。
※1 https://activity.tiktok.com/magic/eco/runtime/release/62cb92557244fb033fc970ec?appType=tiktok