10-FEET、大らかな歌と演奏で届けた“ライブハウスに立つ意味” ロックバンドの真髄を更新した25周年ツアー
10-FEETといえば百戦錬磨のライブバンドだ。結成から25周年を迎えた今もそのイメージはロックファンに強く焼きついていることだろう。6月23日のZepp Haneda公演に至るまで、全国11都市を巡ってきた『10-FEET 25th ANNIVERSARY ONE-MAN TOUR 2022』も、そんなアイデンティティが刻み込まれたツアーとなっていた。だが、それ以上に印象的だったのは、26年目以降もバンドを続けていく意志を示すかのように、そしてオーディエンスと同じ空間を共有している意味を噛み締めるかのように、10-FEETの真髄が新しい形で垣間見えたことだった。
25周年を迎えるにあたって大きな意味を持っていたのは、昨年秋から今年頭にかけて開催された10-FEET史上初の全国ホールツアー『10-FEET “アオ” TOUR 2021-2022』だったと思う。自身で主催する『京都大作戦』をはじめとしたフェスや、野外ワンマンなどで大規模なライブをする機会が多々あったとはいえ、徹底してライブハウスでツアーを回ることにこだわってきた10-FEETがホールツアーを行ったことは、楽曲との向き合い方にも少なからず影響をもたらしたはず。もちろんそこに踏み切った裏側には、コロナ禍でもライブ文化を絶やさないための大きな決断があったことを忘れてはいけないが、それが彼らのライブにもたらした変化は決してネガティブなものばかりではなかっただろう。音の響き方や客席との距離感、ステージの見え方などが異なるホールでは、ライブハウス以上に“聴かせるライブ”も求められるが、そこに見事アジャストできた経験は、今回のZepp Haneda公演にもしっかりと活かされていた。まず、音の鳴らし方から違う。音源では切り裂くようなTAKUMA(Vo/Gt)のギターや、ボーカルとコーラスの性急な掛け合いが光る「火とリズム」も、この日は一音一音を粒立たせるようにテンポを落とした演奏で聴かせる。そこから続いた「under the umber shine」「AND HUG」「hammer ska」といった楽曲群、さらには本編の実質ラストを飾った「FUTURE」に至るまで、グルーヴを牽引するNAOKI(Ba/Vo)、KOUICHI(Dr/Cho)の演奏がとても大らかだ。
ライブの開始こそ「super stomper」「VIBES BY VIBES」という強力な2曲だったものの、本ツアーの他会場ではセットリストに入っていた「STONE COLD BREAK」や「goes on」など、2ビートでパンキッシュに駆け抜ける曲が披露されなかったのは、Zepp Hanedaの空間にじんわり響くような演奏を意識していたからではないか。ぶつけにいくのではなく、ホールツアーで培われた“広がる”ようなアンサンブルがライブハウスツアーにも還元されていることはとても意義深かった。「ライオン」や「シエラのように」のような、もともとスケール感のある楽曲たちが本領を発揮していたことも特筆しておこう。TAKUMAのヘヴィメタル志向が爆発した最新曲「aRIVAL」も、ダウンチューニングによる重心低めな演奏がいい味を出していた。
そして演奏が変われば、歌の響き方も変わっていく。何より素晴らしかったのは、1曲1曲をじっくり味わえたことで、10-FEETの“言葉のバンド”としての魅力が最大限に引き出されていたこと。それはいい歌詞を書くバンドという意味だけにとどまらない。言葉を届けるとはどういうことなのか、言葉の背面にある刃で相手を傷つけてしまうのはなぜなのかーーMCでも何度か語られていたように、“言葉そのもの”をテーマに歌ってきたのがTAKUMAというソングライターである。中盤で披露された「アオ」はそんな人となりが顕著に表れた1曲であり、〈僕から見た優しさや正しさで 沢山あなたを傷つけてきました〉と歌う「太陽4号」もそう。孤独や不安や嘘でぐちゃぐちゃになって、本当の優しさや思いやりが見えなくなっても、その経験を胸に刻み込んで、人生の糧に変わる日まで粘り強く生き続ける。いつも以上に歌詞が強く刺さってくる「Fin」や「2%」などを聴いていても、10-FEETが紡いできた“歌”が改めてよくわかるステージだった。