King & Prince、ファンへの想いに満ちたアルバム『Made in』 グループとして“やりたいこと”の最新モード感じる多彩な楽曲も

King & Prince『Made in』作品評

 King & Princeが4thアルバム『Made in』を6月29日にリリースした。

 今年4月にリリースした『Lovin’ you / 踊るように人生を。』では原点回帰ともいうべき王道のラブソングに乗せて、ストレートな歌詞の強さが話題を呼んだことが記憶に新しいが、本アルバムのリードトラックでありKREVAプロデュースの「ichiban」では、よりこれまでにない“攻め”のKing & Princeを体現し、SNSでもバズを巻き起こしている。本稿では、タイトルである「Made in “……”」に込められた、「今、King & Princeができること」というコンセプトを紐解きながら、ライターの森朋之氏、村上麗奈氏が、“Made in King & Prince”の新作をレビューする。(編集部)

これまで以上に作品への意思統一を感じる、最新アルバム『Made in』

 これまでに何度かKing & Princeにインタビューをさせてもらったことがあるのだが、そのたびに感じるのは、「その作品を通して実現したいこと、伝えたいことがはっきりしている」、そして「メンバー全員の意思統一ができている」ということだ。

 たとえば1stアルバム『King & Prince』(2019年6月)のときは「これを聴いてもらえればKing & Princeがわかるアルバム」「今後はもっと自分たちのやりたいことも反映していきたい」という趣旨の話をしていて、シングル『Magic Touch / Beating Hearts』(2021年5月)のタイミングでは、「じっくり聴くというより、ダンスとともに体感してほしい楽曲」「ダンスのクオリティの高さを見てほしい」と胸を張っていた。そして最新シングル『Lovin’ you / 踊るように人生を。』(2022年4月)では、「ファンが求めるKing & Princeのイメージに応えたい」という話が中心に。特に「Lovin‘ you」に関しては、「絶対にファンのみんなが喜んでくれる曲」「メンバー全員が“この曲をシングルにしたい”とここまで強く思ったのは、『シンデレラガール』以来かも」といったコメントもあった。

 デビュー前後からメンバー同士のコンセンサスを重視し、“グループとして何をやるべきか/何をやりたいか”を追求してきた5人。その最新モードにして、King & Princeとしての個性とアイデンティティをさらに強く打ち出したのが、ニューアルバム『Made in』だ。

 前作アルバム『Re:Sense』(2021年7月)以降にリリースされたシングル曲「恋降る月夜に君想ふ」(2021年10月)、「Lovin’ you / 踊るように人生を。」ではポップな側面、歌モノとしての魅力を押し出していたが、アルバムにはメンバーの意思や意向が反映されたであろう楽曲も目立つ。それを象徴しているのが、リードトラックの「ichiban」。日本のヒップホップをけん引し続けるKREVAが作詞・作曲・プロデュースを手がけた、“ゴリゴリの”という言葉が似合うHIPHOPチューンだ。トラップの進化型と称すべきビートメイク、3連符のリズムを活かした重厚でパワフルなラップとともに放たれるのは、〈No.1 1番 ただやる 一心不乱 すぐに興奮のるつぼ Here we are〉に代表される攻撃的なリリック。KREVAがメンバー5人をイメージして綴った歌詞——そこにはおそらく、“今後のKing & Princeに期待するもの”も込められているのだと思うーーを彼らは自らの言葉として血肉化し、圧倒的な生々しさを刻みながら表現している。

King & Prince「ichiban」YouTube Edit

 この歌詞に濃密なリアリティを与えられるのは、つまり、彼ら自身が“そういう生き方”をしてきたからだ。2018年5月にシングル『シンデレラガール』でデビューし、瞬く間にアイドルシーンのトップへ……と説明されることが多い彼らだが、“ティアラ”(ファン)ならご存知の通り、ここまでの道のりは決して平たんではなかった。Mr.King vs Mr.Princeとして活動していた時期、CDデビューに至った経緯などから始まり、彼らは自らの意思で現在のポジションに至った。その過程におけるトライ&エラー、メンバー自身が抱えていた葛藤や不安、そして、日本のエンターテインメントのど真ん中にいるという自負。そのすべてが「ichiban」の説得力に繋がっているのだと思う。

 また「Last Train」からも、現在のメンバーの志向やモードが感じられた。楽曲を手がけたのは、Kroi。90年代のミクスチャーやヒップホップを現代的なポップミュージックに昇華し続ける大注目バンドだ。生楽器の響きを活かした心地よいバンドグルーヴ、メンバー5人の声の魅力を存分に味わえるアレンジ。リラックスした雰囲気も印象的なこの曲は、〈やっぱりな脳みそで考えても仕方ない〉という歌詞の通り、解放的な気分で楽しんでほしい。

King & Prince 4th Album『Made in』全曲クロスフェード

 そして本作の軸を担っているのは、作詞・作曲をKing & Princeが手がけた「Dream in」だろう。繊細なピアノのフレーズで幕を開け、美しくも切ないストリングス、優しさと力強さをたたえたリズムが一つになったミディアムバラードだ。歌詞の背景になっているのは間違いなく、メンバーとファンとの関係。もっとも心に残るのは、大サビの〈時計の針が 別れの数字に近づいて 馬車に乗る背中 閉まるドア 最後の一秒まで〉というラインだ。4年前、デビュー曲「シンデレラガール」で本格的にスタートしたKing & Princeとしての活動。どんなものにも終わりがあり、永遠に続くわけではないが、でもだからこそ、最後の一瞬まで“きみ”を思い、夢や幸せを分かち合っていたい。そう、「Dream in」で描かれる真摯で切実なエモーションは、5人の生き方に直接結びついている。

King & Prince「Dream in」YouTube Edit

 執事の争いをコミカルに描いた「バトル・オブ・バトラー!」(作詞・作曲:前山田健一)をはじめ、楽しいエンタメ性に溢れた楽曲も収録された本作『Made in』。アルバムジャケットのモチーフは“のれん”。店(アーティスト)の入り口・象徴であると同時に、客(ファン)との接点である“のれん”は、本作のコンセプトを見事に示していると思う。やりたいこと/やるべきこと、提示したいこと/求められることが表現されたこのアルバムによって、King & Princeは日本のエンターテインメントを象徴する存在として、さらに強い輝きを放つことになりそうだ。(森朋之)

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