吉田朱里、峯岸みなみ……AKB48グループ、OGによる後輩サポートなぜ進む?
ふたりに共通して言えることは、グループの現在地を冷静に分析できているところではないだろうか。理想と現実をうまくミックスさせながら「今のメンバーには何ができるのか」を考えているように感じる。これは吉田が卒業から約1年半、峯岸が約1年という絶妙な距離感だからこそ、持つことができる目線だろう。グループから離れて5年、10年のOGだとなかなかそうはいかないはずだ。
ほかにも2021年12月卒業の元AKB48総監督横山由依は、3月2日放送のバラエティ番組『ぺこぱポジティブNEWS』(テレビ朝日系)で、「『自分はここまでやった』『体がもうしんどい』『ファンの方と良い思い出が作れたな』と思ったら辞めどき。誰が決めたか分からないことには縛られてほしくない」と、現役メンバーらにアイドルとしての区切りについてアドバイス。トップアイドルとして活躍していた横山だからこそ、説得力を持つ言葉である。同時に、新型コロナの影響で近年は満足に活動できず、モヤモヤしていたメンバーたちの気持ちを軽くする発言でもあったのではないか。これもまた、つい半年前まで活動していたからこそ言えることである。
ちなみにAKB48の柏木由紀は、現役メンバーではあるが彼女らのように一歩引いた目線も持っており、グループに良い効果を与えている。なかでもYouTubeチャンネル『ゆきりんワールド』では、「根も葉もRumor」(2021年)や「元カレです」(2022年)のリリースにちなんで、シングル表題曲選抜メンバーを紹介する企画をおこなった。その動画を見ると、彼女がいかに他のメンバーのことをしっかり観察しているかがよく分かる。そして各メンバーの紹介を、短い時間でありながら的確な視点をもっておこなっている。メンバーも適度に柏木をイジっており、そのフランクなやりとりを通して、それぞれの新しい一面をのぞくことができる。
『S Cawaii!!特別編集 AKB48スペシャル』のなかで柏木は、紹介動画について「テレビやSNSだけでは伝わらない、動いている私たちで世間に知られてない魅力をお伝えできたらいいなと思います」とコメントし、YouTubeの動画内でも「これを観てもっともっとメンバーのことを好きになってほしい」とアピール。彼女自身、どれだけ年齢を重ねてもAKB48の一員として活動できることを証明するなど新しいアイドル像を築こうとしているが、そういった長年の経験があるからこそ、良い意味で俯瞰的にグループやメンバーについて伝えることができているのではないだろうか。
吉田朱里の願い「何年先も残るグループであってほしい」
かつての人気メンバーが古巣を気にかけるのは、やはり自分を育ててくれたことへの恩返しがあるだろう。女性アイドルは、グループでの活動をステップのひとつにして芸能界へ羽ばたこうとする者が多い。OGたちは現メンバーにかつての自分の姿を重ねており、だからこそ親身になって応援したくなるのではないだろうか。
もうひとつは、果たせなかった目標を現在のメンバーたちに託したいのかもしれない。吉田朱里も、雑誌『NMB48 10th Anniversary Book』(2020年/光文社)のなかで、「何年先も残るグループであってほしいです。(中略)いつか京セラドーム大阪でライブをやってほしいですね。私たちはかなえられなかったから。そこに1期生が集まって、1曲だけでいいから踊りたいです。みんな子供抱えながら(笑)」とグループの発展を願っていた。いつまでも「自分はこのグループの卒業生なんだ」と誇れる存在であってもらいたい。そういった気持ちが、アドバイスにつながっていると思われる。
ひとまず今は、吉田の対談企画の今後の展開に注目だ。彼女の言葉によって、グループがさらに活性化することを期待したい。