Yogee New Waves、未来への希望を音楽に託す意味 バンドの信念を貫いた、初の日比谷野音ワンマンライブ

Yogee New Waves、初の野音ワンマンレポ

 MCは最小限だった。音楽以外の情報をできるだけ排除するようにライブは進んだが、1曲1曲の演奏のなかにYogee New Wavesが伝えたいものはあった。それを痛切に感じたのが、終盤に披露された「あしたてんきになれ」と「SISSOU」だ。三度(みたび)、メンバーだけの剥き出しの演奏に戻り、粕谷による軽快なシャッフルがリードした陽性のロックンロール「あしたてんきになれ」も、角舘と竹村が互いに向き合ってギターを掻き鳴らしたショートチューン「SISSOU」も、今日の悲しみを吹き飛ばすように明るく駆け抜ける。Yogee New Wavesが明るい歌を歌うとき、そこにはいつも悲しみがつきまとっている。今が曇り空だからこそ晴れの日を願い、立ち止まっているからこそ前を向いて走り出す歌が生まれるのだと思う。

 ラララのフレーズに合わせて、会場のお客さんが左右に大きく腕を振った「Climax Night」、ピアノの伴奏に乗せて丁寧にメロディを紡いだ神聖なバラード「JUST」。ライブのクライマックスはすべてがハイライトだった。イントロが鳴った瞬間に会場がひときわ大きく揺れた「Like Sixteen Candles」では〈君は君のリズムをとれ〉とバンドとリスナーの関係性を力強く歌い上げるが、その歌詞そのものの光景が目の前に広がっていた。ラストは角舘が「全部つまんないことは置いてってくれ!」と叫び、「Dreamin' Boy」で万感のフィナーレ。むせびなく竹村のギター、ぐいぐいと推進力が加速していく粕谷のビート。その音のなかに、Yogee New Wavesの答えがあった。

 アンコールでは「音楽だけは解放してくれるんだよなあ、本当に」と、角舘が野音の手応えを噛みしめるように漏らすと、しばしの別れの曲として「Good Bye」、そして「明日からまたいい日になるといいね」と言い添えた「Bluemin' Days」で、全24曲のライブを締め括った。晴れやかなそのアウトロで、角舘が「Bluemin' Days For You!!」(あなたの日々よ咲き誇れ、とでも訳そうか)と叫ぶと、客席から送られた拍手は随分長いこと鳴り止まなかった。Yogee New Wavesのライブを目の当たりにすると、音楽は、ファッションでも、ましてや一過性のトレンドで消費されるものでもなく、もっと切実な意味をもって生まれたものだと改めて思う。明日の愛し方を忘れたときのために、きっと彼らの音楽はあるのだ。

Yogee New Waves Official website

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