MIYAVIが提言する新たなデジタルロックの形 「Strike It Out」から感じられたアニメ『トライブナイン』への深い愛

MIYAVI「Strike It Out」で提言する新たなデジロック

 今年デビュー20周年を迎えるMIYAVIのニューシングル『Strike It Out』が3月23日にリリース。表題曲は、アニメ『トライブナイン』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマとして話題だ。

 昨年は13thアルバム『Imaginary』をリリースし、リードトラック「New Gravity」では、常田大希が主宰するクリエイティブレーベル・PERIMETRONのメンバーがMVを制作。ほかにキンブラ、カン・ダニエル、トロイ・アイアンなど海外アーティストが参加したトラックや、Nirvanaのカバーなどが収録された。そのアルバムを携え北米ツアーも開催。また、『ザ・マスクド・シンガー』(Amazon Prime Video)や映画『ケイト』(Netflix)への出演でも話題を集めた。

 そんな多彩に活動の場を広げるMIYAVIがリリースする『Strike It Out』。前述した通り、表題曲は『トライブナイン』オープニングテーマとしてオンエアされており、アニメの劇中シーンが用いられた映像が公開されると「カッコいい」「早くフルで聴きたい」など、早くから期待の声が上がっていた。

 『トライブナイン』は、架空の東京23区を舞台とし、各区に存在する“トライブ”と呼ばれるアウトロー集団が“エクストリームベースボール”(通称“XB”)で抗争を繰り広げる物語。主軸となる“ミナトトライブ”は、カリスマXBプレーヤー・神谷瞬の存在によって最強の座に君臨していたが、神谷を失いチームも解散。失意に暮れるメンバーだったが、神谷から託された思いを胸に強い絆でチームを再生していく。「Strike It Out」はオープニングテーマとして、傷つきながら這い上がっていくキャラクターたちの心情を見事に表現し、激動の物語に対する高揚感をかきたててくれる楽曲となっている。

MIYAVI "Strike It Out" Music Video

 〈この目はそらさない〉という冒頭のフレーズに象徴されるように、MIYAVIによる歌詞は、優れた動体視力を持ち、チームを勝利に導く白金ハルの視点を中心に、どん底から再生を果たすミナトトライブのメンバーの思いが描かれた。〈決めたんだ 僕は逃げない〉。ミナトトライブに入るまでのハルは、困難に立ち向かうことをせず逃げていた。そんなハルに、ちゃんと目を見開いて戦うことを教えたのが、神谷でありチームメイトのタイガたちだ。タイトルの「Strike It Out」は「打ちのめす」という意味で、物語の序盤でミナトトライブのメンバーからハルたちにXBのルールを説明した時のセリフから引用されている。XBをイメージしたワードが各所に散りばめられ、MIYAVIの作品への理解と深い愛が感じられる。

 またこの楽曲は、作品を通して発せられた、MIYAVIから楽曲を聴く者へのメッセージでもある。大地を力強く踏みしめるようなビート、ラップ調のボーカル、壮大に広がるメロディ、そしてリスナーを鼓舞するシャウト。様々な要素が一体となって、まるで火を囲んで神に踊りを捧げる祭事のような楽曲だ。ここでMIYAVIが指し示すものは、自由への渇望、夢を掴み取るための惜しみない努力、未来を見通すような想像力、そして魂を高ぶらせる高揚感だ。

アニメ『トライブナイン』オープニング映像:MIYAVI「Strike It Out」

 作曲はJeff Miyaharaが手がけた。ONE OK ROCKや三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、King & Princeなどへの楽曲提供やプロデュースを行う日本のR&B界の重鎮だ。Jeff Miyaharaの楽曲の魅力は、美しくもありながらエモーショナルさに溢れたメロディにある。「Strike It Out」も同様で、多彩に変化するラップのフロウと、圧倒的な爽快感とパワーを携えたサビのメロディが胸を打つ。編曲はJeff Miyahara、MIYAVI、Lenny Skolnikによるもので、イントロのリフが実に印象的。メロディと歌にポイントが置かれた代わりにMIYAVIのギターが控えめな印象もあるが、インストバージョンを聴くと非常に効果的にギターが奏でられていることが分かる。非常に様々な音が重ねられており、意外なサウンドが入っていることも発見できる意味でも、ぜひインストバージョンにも耳を傾けてほしい。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる