MIYAVI「Bang!」が示す、夢や未来へ向かうメッセージ LDH移籍で“仲間”を得た先の進化を考察
“サムライギタリスト”の異名で知られるMIYAVIが4月22日に最新アルバム『Holy Nights』をリリースする。本作はMIYAVIにとって、EXILE、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEらを筆頭に数々の日本のトップアーティストを擁するLDH JAPAN移籍後初のアルバムとなるだけに注目が集まる作品だ。
MIYAVIのLDHへの電撃移籍は、昨年12月に発表され、その会見時には、独立後10年に渡り、インディペンデントで世界を舞台に活動を続ける中で感じた“仲間”の必要性や、LDHを牽引するEXILE HIROのビジョンと海外展開を進める姿勢への共感、さらに音楽的な部分では、音以外にダンスや映像も含めて表現する彼らのJ-POPのスタイルと自らの音楽表現との親和性などがMIYAVIの口から語られた。
この移籍に対してファンの中ではもしかしたら賛否両論があったかもしれない。特にMIYAVIは多くの日本人アーティストと違い、以前から世界を舞台に活躍し、すでにワールドワイドなファンベースを確立していることを考えると、シンプルに“海外展開”ということだけに目がいってしまうと疑問が生じるのは当然だろう。
しかし、近年のMIYAVI作品を振り返ってみると、音楽面ではLDHとの親和性が高いことは明らかだ。まず2017年の『SAMURAI SESSIONS vol.2』では、以前、リアルサウンドが行なったLDH移籍に関するインタビューでも語っていたVERBALやEXILE SHOKICHIも参加しており、彼らとのコラボ曲ではMIYAVIのギターが軸になりつつも、近年世界的で注目を集めてきたEDMやヒップホップ的な海外トレンドを取り入れたアプローチの楽曲を制作している。
また2019年にリリースした前作アルバム『NO SLEEP TILL TOKYO』でもイーブンビートのダンストラックはもちろん、トラップやEDM系のダブステップなど、先述の海外トレンドへの接近は引き続き行われている。筆者としては特に同作収録曲で注目したいのはファルセットボーカルを取り入れたR&B風の歌唱パートが印象的な「Walk With Me」だ。
MIYAVIは、2018年に<88rising>がアメリカで行なった主催フェス『Head in the Clouds』でJojiと共演しており、その際はJojiのファルセットが印象的な「Wanted U」を披露している。そのため、「Walk With Me」は少なくとも聴き手側からするとこのパフォーマンスが頭に浮かび、Jojiの影響を少なからず感じるものになっている。
また<88rising>は、アジア系アーティストを世界に発信するプラットフォームとして、先述のJojiやRich Brianなど、今やワールドクラスの人気アーティストを抱え、世界の音楽市場のトレンドにおいても存在感を放つ存在だ。その<88rising>とMIYAVIは以前から親交があり、これまでにいくつかのMIYAVIによるパフォーマンス動画が<88rising>のYouTubeチャンネルで公開されてきた。
そして、LDHのユニット・PKCZ®のMV公開やGENERATIONS from EXILE TRIBEの<88rising>コンピへの参加など、<88rising>とLDHの結びつきも近年強まっており、その両者とかねてから親交があったMIYAVIにとっては、今回のLDH移籍は今後の海外展開を客演的立場から正式にその一員=“仲間”となることで、より強固なものにし、孤高のサムライギタリストから、アジアからトレンドを生み出す存在になるという進化のビジョンを現実化させるためにも必要不可欠なものに思える。