MIYAVIによるバーチャルプロジェクト、新たな音楽表現の意義 未来への希望つなぐプラットフォームとなるか
“サムライギタリスト”の愛称で世界的に親しまれるアーティスト、MIYAVIが今年5月、新たな試みとして、バーチャルプロジェクト・MIYAVI Virtualを始動させた。
同プロジェクトは、昨今の新型コロナ禍を受けてのもので、「どんな状況でも音楽を止めない」と宣言しているMIYAVIは、その第1弾として今年4月にリリースされた最新アルバム『Holy Nights』のタイトル曲にもなっている「Holy Nights」のMVを公開。全編USアニメーションチームによって制作されたMVは、楽曲の歌詞とアルバムの世界観をふんだんに盛り込んだ仕上がりが印象的な作品だ。
MVを手がけたのはディレクターのMr. iozoを筆頭にTristan Zammit、Rodrigo Silveira、そしてLA在住の日本人ビジュアルアーティストの粉川理沙といったUSを拠点とするクリエイターたちなのだが、Mr. iozoは、これまでにMIYAVIとは縁が深い<88rising>の看板アーティストの1人であるNikiのビジュアルワークを手がけたこともある人物であり、彼とのつながりを感じる人選もファンにとっては朗報だったことだろう。
そんなMVでは、楽曲で歌われる〈まるで映画みたい〉という歌詞そのままに、アポカリプス的な終末感を漂わせた近未来の世界が舞台になっており、日本のSFアニメ『AKIRA』、『攻殻機動隊』を始め、ゲームソフトの『Deus Ex』、画家のH・R・ギーガーのイラスト、映画『トロン』のような古今東西のサイバーパンク的世界観がオマージュされている。
しかし、現在の現実世界では、未知の疫病による数万人の死者、世界的なロックダウンの影響による世界恐慌の予兆など、これまではあくまで近未来SFの舞台設定のネタに過ぎなかったような話が、今やただのファンタジーだと言い切れないような状況になりつつある。
そのためMVで描かれる荒廃した世界観は、コロナ禍で改めて浮き彫りになった経済格差、差別意識など現在の現実世界が抱える様々な負の要素のメタファーとして捉えることができる。そういった退っ引きならない現実がすでに世界に広がり出している今、我々はただ絶望するだけなのだろうか? その答えに対するMIYAVIの答えは「No」だ。