ZOT on the WAVE&Fuji Taito「Crayon」バイラルチャート好調 心地よさと刺激をブレンド、ヒップホップチューンの新基準に?
参照:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest
Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(3月3日公開:2月24日~3月2日集計分)のTOP10は以下の通り。
1位:winD「かわいい」
2位:OHAYO「GAL (feat. Shake Pepper & Yvngboi P) [Mixed]」
3位:ZOT on the WAVE, Fuji Taito「Crayon」
4位:Aria Ohlsson「Love on the Weekend」
5位:Rachel Zegler, Ansel Elgort「Balcony Scene (Tonight) – From “West Side Story”/Soundtrack Version」
6位:Lizabet「Another Day Goes By」
7位:早稻叽(はやいねちー)「热爱105°C的你(熱愛105℃の君へ)」
8位:MARK「Child」
9位:「America」(From『West Side Story (Original Motion Picture Soundtrack)』)
10位:OHAYO「GAL (feat. Shake Pepper & Yvngboi P)」
春めいてきた日本列島。気象庁の発表によれば、春を告げる南風“春一番”が吹いたのは、昨年よりも1カ月ほど遅い3月上旬だったという。
そんな春一番の如く、いきなり今週のバイラルチャートの3位に舞い降りて来たのがZOT on the WAVE, Fuji Taito「Crayon」である。2月4日にデジタルリリースされた同曲は、2月28日のバイラルデイリーチャートで2位に初登場して以降、トップ5内をキープ。今週のウィークリーチャートでも3位に食い込んできた。
まずは、両アーティストを簡単に紹介しておこう。ZOT on the WAVEは、ビートメイカーやプロデューサーのためのプラットフォーム「Cook Up Japan TV」を立ち上げるなど、日本におけるビートメイカーという存在を裏方からメインステージにアップグレードさせるのに尽力したことでも知られるビートメイカー兼プロデューサーだ。AwichやBAD HOPなどの楽曲を手掛けた実績もあり、これからのヒップホップシーンの鍵を握る重要人物の1人である。Fuji Taitoは、ギャングスタ・ラップのルーツを体現したかのような中学時代にラップを知り、高校生になって本格的にラッパーとしての活動を始めた(※1)。その後、LDH主催の『VOCAL BATTLE AUDITION』のラップ部門や、次世代のラッパーを発掘するオーディション番組『ラップスタア誕生2021』にて、ファイナリストに名を連ねている。また、前述したようなキャリアを持っているからこその説得力を持つパンチラインは、世代を超えて支持されており、ZOT on the WAVE同様、次のヒップホップシーンを作り上げていく重要人物である。
とはいえ、音楽シーン全体を見れば知る人ぞ知る存在だったZOT on the WAVEとFuji Taitoの楽曲が、『ラップスタア誕生』での盛り上がりがあるとはいえ、SNSなどでの“歌ってみた”や“踊ってみた”といったバズを介さず、突然バイラルチャートにランクインしてきたことには驚きを隠せない。リスナーは、自身が直感でセレクトした楽曲の心地よさや刺激を体感として覚えていて、次なる心地良さや刺激を体感した瞬間、直感的にシェアしているのだと思う。サブスクリプション音楽配信サービスという新しい音楽提供のインフラが、音楽を直感的に捉えるというプリミティブなリスナーを多く作り出していることが非常に興味深い。