ばってん少女隊、いぎなり東北産、fishbowl、タイトル未定……アイドル論客4者が語る、2021年に起きたロコドルの活況
コロナで散ったグループも多かった2021年
ーー10位は、開歌-かいか-「Secret Summer」です。
岡島:sora tob sakanaを運営していたZi:zoo所属なので、楽曲のクオリティーにはこだわりが感じられます。同曲はバンド「ポップしなないで」による楽曲です。
ガリバー:シンボリックな存在だった百岡古宵さんが2021年5月に卒業して、グループは新体制になった。結果、楽曲的にはより攻めている臨戦体制に入った1年だったと思います。桜エビ〜ずがukkaへと体制変更した時のような本領発揮を感じさせます。
宗像:「Secret Summer」はラップにも音階があるような、こんなラップ聴いたことないってくらいの丁寧な譜割りで聴かせる、開歌-かいか-ならではの楽曲だと思います。
ピロスエ:メンバーの佐々木亜実さんがアイドル楽曲にすごく詳しいんですよね
。アイドル楽曲大賞にも投票してくれてるみたいなんですが、自分のグループの曲には投票しないという潔さで(笑)。
ーー20位以下で個人的に気になるのが、12位のyumegiwa last girl「グルーミー」。グループ名はやっぱりSUPERCAR「YUMEGIWA LAST BOY」からなんですか?
ガリバー:もちろんSUPERCARですよ(笑)。
岡島:2021年8月に活動休止し2022年4月より新体制で活動再開するユレルランドスケープや、2021年12月にお披露目されたBuddha TOKYOを擁する、最南端トラックスという事務所のグループです。前述の『エクストロメ‼︎』にも出演していますね。
ガリバー:インディーズはリンワンもいる11位以下が重要だと思っていて。
ーー先ほどから名前が挙がっていますね。Ringwanderungはどういったグループなんですか?
岡島:結成が2019年のまだ若いグループですよね。コロナ禍でもわりとしっかりライブをやってきていて、まだ世間的にそこまで認知されているわけではないですけど、動員を伸ばしているグループという印象です。曲もライブも評価されていて、今年はもっと伸びる気がしています。
ピロスエ:楽曲部門の順位だけを見るとトップ10より下なんですけど、アルバム部門だと1位がタイトル未定の『青春群像』で、2位がリンワンの『synchronism』です。しかも、得点では僅差でリンワンが2位ですが、投票数では圧倒的なんですよね。これは、タイトル未定に並んで注目株と言えるんじゃないですかね。後は僕がイベントの中でレコメンドとして取り上げた36位のsituasion「JAPANESE HORROR STORY」とか、そういった東京インディーズアイドルシーンで活躍している活きの良いグループがゴロゴロしているのがインディーズ部門なんですよ。Twitterでは、『アイドル楽曲大賞』を通じて新しく知ったアイドルをサブスクで聴いて、こんなによかったのかっていう喜びの声を上げている人が多いんです。そういったツイートを見るとイベントを続けている甲斐があるなと思います。
ーーインディーズのライブシーンに関してはどのように見ていますか?
宗像:僕は2回目のワクチンを打って、現場に復帰し始めたんですよ。白金高輪 SELENE b2とか山野ホールとか、若いファンが多いグループがたくさん出るイベントに真っ白なキャンバスがラインナップされている日は現場に何時間もいたりするんですよね。このインディーズのグループは、今こんなに盛り上がるんだって観ているんですけど、自分の中のテンションがなかなか上がらないんです。そういった情報を得てもその子たちがメジャーデビューする流れにいないので。現場を観てこの子たちがどこにいくのか将来的な展開を考えちゃうと、自分の中で盛り上がらなくなっていて。でも、MVを観るテンションは高いんです。
岡島:ブレイクに続くための、いわゆる“出口”が見えないのはつらいですよね。
宗像:“みんなで出口を一緒に探していこうな”っていう状態ですね。現場レベルだといろいろ思うことがあります。
ーーSNSだけで見ていると、そういった中規模のイベントは増えている印象なのですが、実際はどうなんですか?
宗像:やってることはやっているんですけど、絶対的な本数は減ってるんですよね。先行きの見えなさは2022年でマシになると思いたいんで。オミクロン株が早くピークアウトすることに一縷の望みをかけていますね。現場に行っているとそういうことを考えちゃいます。
岡島:「ライブを観たい」「アイドルを直接現場で応援したい」という切実な思いがある人が、今はライブに行っている、来てくれている、という状況かもしれません。
宗像:命知らずのファンが集まってくるんですよ。
岡島:現場レベルで知れ渡っても、今はそこから先が難しい。大手資本がついているグループならメディアに広告などを打てますが、インディーズレベルだと自主的にネットを使ってプロモーションすることがメインになる。よってSNSの活用や、MVなどを含む映像コンテンツ全般のクオリティーや見せ方での差別化が必要になります。そこをどう伸ばせるかが、今はポイントなんでしょう。特に映像コンテンツはどんどん重要になってきていますね。
宗像:だから僕も頑張って白キャンの動画を撮ります。メジャーですが。
岡島:ガリバーさんは現場に行く回数は減ったんですか?
ガリバー:以前と比べると、減るっていうレベルではないくらいに減りました。月で言ったら1回行っているか行っていないかのレベル。数で言ったら配信で観てる時間の方が長いです。でも、月3~4本で気持ちの糸が切れますね。もともと現場派で行っていた身としては耐えられないのもあるんですけど、絵面の見せ方の工夫がパターン化してるので飽きちゃうんです。しょうがないんですけど、カメラのスイッチングとか寄り引きとかで定型化するので。
岡島:アイドル現場は歓声がセットでコンテンツになっていたので、声出し禁止によって曲が完成していない感じがある現場も多くて、行っても現場感を味わえない人が多いんだろうなとも思います。「大声でライブを盛り上げたい、それによる一体感を味わいたい」という欲求は解消できなくなっているので。ライブに来るお客さんの総数が減っているのは、感染予防ということもありますが、そのあたりも大きいかと思います。逆に今ライブに通っているお客さんは、そこがなくてもライブを楽しめているんだと思います。
ガリバー:個人的にはライブハウスもだんだん声が出せないことに慣れてきて、わりとグルーヴ感だったりは拍手で伝えることもできるし、そこはようやく割り切り始めたなという印象です。1年前ほどのストレスはない。やってる方はもどかしいかもしれないですけど。
宗像:本来ミックスコールがあったはずの無音の場でどれだけ聴かせられるか、パフォーマンスを見せられるかが問われたのは大きくて、上位に上がっているようなグループはそこら辺をクリアしている人たちなんだという気がしますよね。
ーーメジャーと比べるとインディーズの方がニューカマーと言えるグループは多くいますよね。
宗像:実はコロナ禍になってデビューしてきたアイドルってインディーズにはいっぱいいるんですよ。ただ、その大半がコロナ禍で消えました。観に行きたいな、でもコロナだからな、と思っているうちに解散するグループがめちゃくちゃ多いんです。その中で生き残って爪痕を残したタイトル未定だったりはデビューした中の氷山の一角なんです。散ったグループも多かった2021年でしたね。
ーーそういったグループがインディーズの希望というか。
宗像:みんなが諦めていないのが希望ですね。
ガリバー:一番の希望は、東京のライブシーンでさえしんどいのに、今年fishbowlとタイトル未定という地方ローカル勢がランキングに入ってきたことです。2020年はコロナ禍でロコドルの運営は本当に大変だろうなって思ってたんですけど、活動形態が全く違うロコドルが2つランキングに入ってくる。そこは2020年にはなかったムーブです。今年は僕らが思いもよらぬエリアからグループが出てきたりするんじゃないかと期待してますね。
ーーコロナ禍で動画コンテンツがより身近になったことも、ロコドルが勢いを増してきたことと関係しているんですかね?
ガリバー:そこはなんとも言えないですけど、相対的に動画の力が上がったことによって、東京のライブアイドルと地方のライブアイドルの差が前よりかは少なくなった、より近づいたというのはあるかもしれません。ライブよりも動画コンテンツの方が接する時間は増えるわけだから。それをパラレルに並べた場合に、観る人によってはそのグループが地方だろうが東京だろうが関係ないという状況はアイドルに限らずあらゆる場面で起きているわけですけど。それがアイドルに起こった可能性はなきにしもあらずですね。
宗像:これからはいい動画を押さえられる、作れる、量を出せるところが強いと思うんですよ。宗像からの最終メッセージは、みんな動画撮影可にしろと。そうしたら、ビデコの宗像が君の現場に行くよ。