CHAI、進化し続けるバンドの表現  昨夏以降のサウンド、周辺の動向を考察

 バンドは、ざっくり二つのタイプに分類することができると思う。ひとつは、初期のフォームを大事にするバンド。もうひとつは、キャリアを積むごとにどんどんとフォームを変えていくバンドだ。もちろん、どんなバンドもキャリアを積むごとに進化はしていく。ただし、その進化には違いがあるわけだ。バンドの何をもって“進化”と捉えるかはリスナーごとに違うかもしれないが、少なくとも後者の場合、初期作品と最新リリースされた楽曲を聴き比べると、まったく違う音楽ジャンルに触れるような心地を覚えるはずだ。

 前述のように捉えたとき、CHAIは後者としての色合いが強いバンドだと思う。なぜなら、シーンに頭角を現してきたときと今ではサウンドの手触りに大きな違いを感じるからだ。初期のCHAIは、サウンドにニューウェーブさを感じることが多かった。しかし、近年のCHAIの作品を指して「ニューウェーブ的なサウンドだ」と形容することは大きく減った。楽曲ごとに参照する音楽ジャンルが大きく変わるからだ。2021年には約3年ぶりに『フジロック』に出演。それ以降、よりその色合いは顕著になっていく。例えば、2021年8月に発表された「miniskirt」はクールなトラックが印象的で、ヒップホップ的な装いも際立つスタイリッシュなナンバーとなっている。また、2022年1月に発表された「まるごと」は、ディスコ的なムードとCHAI流ポップネスが巧みに融合したナンバーになっている。どういう音にCHAIらしさを感じるかはリスナーごとによって異なるかもしれないが、初期の作品と最新曲でサウンドの手触りが大きく変化したことは確かである。

CHAI - miniskirt - Official Music Video
CHAI - まるごと - "WHOLE" - Official Music Video

『THE FIRST TAKE』パフォーマンスに感じるサウンドの進化

 ところで、2021年6月に『THE FIRST TAKE』に出演したCHAIは、初期の代表曲である「N.E.O.」を披露した。動画を見てみると、アレンジ自体は2017年と大きく変わってはいない。しかし、ここでも音の手触りに変化を感じることになる。というのも、初期の「N.E.O.」はサウンドのエッジさが際立っており、ダイナミックな躍動感が伝わるものになっていた。しかし、「N.E.O. - From THE FIRST TAKE -」では音の緻密さが加わっており、躍動感よりも丁寧さを感じるパフォーマンスになっていた。当時はエッジが効いていたパートも、不思議とシャープかつマイルドに音が響く印象を受けることになった。

[キャプション]

 また、同じく『THE FIRST TAKE』で披露した「PING PONG!(feat. YMCK)」では、より顕著にサウンドの変化を示すことになる。バンドで表現する類ではない音楽ジャンルをベースにしつつ、そこにCHAIのバンドアンサンブルを融合させる営み。カラフルかつユーモラスにサウンドが広がっていくのだ。

CHAI - PING PONG!(feat.YMCK) / THE FIRST TAKE 8

 このようにサウンドを進化させていっているCHAIだが、実は初期から通底している指針もある。そのひとつが、バンドの海外志向だ。CHAIは、シーンで頭角を現したタイミングから、活動やサウンド面において海外も視野に入れていたバンドだった。

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