EXILE MAKIDAI連載「EXILE MUSIC HISTORY」第6回 EXILE AKIRAが明かす、メンバーとの出会いとクランプへの挑戦

MAKIDAI×AKIRA対談

EXILEにクランプを持ち込んだ男

MAKIDAI:他にAKIRA的に思い出深いMVとかありますか?

AKIRA:やっぱり「Everything」です。第二章の最初の曲ということもありますが、踊りながら歩いたランウェイの周りにファンの皆さんがいるシーンがあって。あれは初めてファンの方々と一緒に作り上げた作品だったので、思い入れがあります。

MAKIDAI:その次に出した「Lovers Again」はバラードなんだけど、踊りにクランプのテイストも入っていましたね。冒頭に話したシェイクもそうですが、クランプも当時はやっている人が少なかった。

AKIRA:2000年代前半はブラックカルチャーの遊びから生まれたダンスの流行が多くて、そこから今のスタイリッシュなものまで細分化していった気がします。YouTubeも始まったばかりでしたし、情報量もほとんどありませんでしたね。

MAKIDAI:AKIRAはロサンゼルスでクランプを広めた第一人者のタイト・アイズとセッションもしています。EXILEの活動と並行しながら、カルチャーの濃い部分も押さえているんですよね。

AKIRA:MAKIDAIさん、ÜSAさん、MATSUさん、HIROさんはストリートやアンダーグラウンドのコアな人たちに認められつつ、メジャーなシーンに行ったじゃないですか。実際にダンスのスキルやグルーヴ感、バイヴスは桁外れだったんです。それに近づくべくEXILEのメンバーでありながら、自分なりに階段を上がっていた感じですね。ファンタジーな日々でも、ひとりになると現実に戻りますし、皆さんが寝てる間に階段を一段ずつ上らないと本物のEXILEにはなれないですから。

MAKIDAI:その気合いがすごいよね。

AKIRA:だから『NHK紅白歌合戦』の出演が終わった後に、渋谷のクラブ・HARLEMに遊びに行ったりもしていました(笑)。クラブやストリートにいたことを自慢したいわけではなく、何万人の人が見ているステージに立つことも素晴らしいけど、目の前にいる僕のことを知らない人をロックできるか否かも、アーティストとして大事なことだと思っているんです。

MAKIDAI:ルーツを大事にしながらも、新しいことにチャレンジする姿勢ですね。

AKIRA:TAKAHIROが入った2006年の「EXILE PERFORMER VOCAL AUDITION」の時に僕は初めて武道館のステージに立ったんですが、自分の登場シーンの演出を音源も含めて任せてもらったんです。MAKIさんとも相談させてもらいながら、クランプの音源で入場したら「何でそんなに怒っているの?」という感じで、お客さんにびっくりされましたよね(笑)。

MAKIDAI:でも、エネルギーが凄かったから「新しい何かが起きている」という雰囲気にもなっていたよ。

AKIRA:EXILEは、J-POPでニュージャックスウィングやクランプを踊るからこそ新鮮に映ったと思います。8割は日本の音楽シーンに刺さるスタイルを重視しながらも、あとの2割は自分たちの好きなブラックミュージックの濃いカルチャーを混ぜるようなイメージでした。

MAKIDAI:「SUPER SHINE」以降は世界観を作りこんで表現するダンスにも取り組んできましたし、20年の歩みの中で自分たちがやってきた濃い部分を進化させて、いまも体現できているグループはレアかもしれません。

AKIRA:当時の自分たちのルーツを活かしたその音楽を、Jr.EXILEたちが『EXILE TRIBUTE』としてカバーしてくれるのも感慨深く、きちんと継承されていると感じます。「SUPER SHINE」とか「NEXT DOOR」とか。

MAKIDAI:世代を超えて仲間が増えていく鍵となっているのは楽曲で、それをJr.世代のメンバーたちも感じてくれているんだと思います。

AKIRA:それから当時のATSUSHI君の追求の仕方、歌に対しての熱量や意味を考えることには凄まじいものがありました。ただのシンガーではなくて、パフォーマーのことを考えて言葉のひとつひとつや語尾の使い方でグルーヴを表現していました。そんな細かい計算があったから「VICTORY」とか「Rising Sun」でお客さんもノレるし、僕らもノレたわけなんですね。彼の緻密な音楽作りには感謝しかないです。

MAKIDAI:僕らの卒業の時に作ってくれた「UPSIDE DOWN」の演奏ってバンドチームがリズムをギリギリまでタメて取っているんですよ。ああいうのはMATSUが好きなのですが、楽譜にはない感覚をATSUSHIは分かっているんです。

AKIRA:そこを常に意識している点がATSUSHI君のすごいところだなと。

MAKIDAI:マニアックな話になってしまうかもしれませんが、そういう細かいこだわりが積み重なって素晴らしい作品やライブが生み出される。AKIRAがATSUSHIのことをその視点で見ていることも、EXILEらしい感覚なのかな。

EXILE精神の継承

AKIRA:俳優業などに自由に挑戦させてもらってから「自分はなんでEXILEになったんだろう?」と考えた時期があったんです。そこで原点回帰できたのが「EXILE LIVE TOUR 2013 "EXILE PRIDE"」でした。ファンの皆さんがHIROさんを惜しみながら称える姿、スタッフの皆さんがHIROさんイズムに染まった緊張感と高揚感を見て「アーティストはこうじゃなきゃダメだな」、「こういう影響力がある存在にならなきゃ」と覚悟が決まって。

MAKIDAI:14人体勢になった初のツアー「EXILE LIVE TOUR 2009 “THE MONSTER”」をやった時の花道も思い出深いね。片方のサイドをオリジナルチーム、反対側を新メンバーでパフォーマンスしたら、会場が今までにない盛り上がりになった。

AKIRA:7人の時はエンドステージ(客席と向かい合う形)で正面から見せるのが主流でしたが、それからエンタテインメントとして、アリーナやドームクラスの舞台で360度のおもてなし精神で、お客さんを煽りにいけるようになりました。特にスタジアムはそう。当時は賛否両論ありましたが、HIROさんは今のEXILE TRIBEの形やLDHの未来を見据えて増員を決めたんだなと、ライブをやってみて実感しました。

MAKIDAI:新たに踏み出したタイミングでしたから色々な意見がありましたけど、その時もあったのは「絶対負けない」という気持ち。HIROさんが発する言葉でメンバーがひとつになって、すごいエネルギーが生まれました。あの時、正直不安な部分もあったのですが、ふとAKIRAが「この映画よかったですよ」と紹介してくれた作品があったんですよね。

AKIRA:ギレルモ・デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』だ。

MAKIDAI:そう。複雑なストーリーの先に開かれたファンタジーが広がっているという内容で、それに自分は救われた部分がありました。一気に気持ちが楽になりましたね。何事も考え方ひとつなんだなと。それを覚えてます。

AKIRA:思い返せば、道なき道を歩いてきましたね。ATSUSHI君は「年間にどれくらいレコーディングしてるんだ?」という感じでしたし、長崎から出てきた少年だったTAKAHIROは突然、EXILEという看板を背負うことになったし、ひとりひとりがプレッシャーを抱えていた。各々の努力があったからこそ今のEXILE TRIBEの仲間やLDHという組織があると感じています。この20年は各世代の誰もが欠かせない存在で、全員で時代をつないできた感覚があります。

MAKIDAI:オリジナルメンバーとも接してきて、オーディションやEXPG出身者以外で仲間になった最後のひとりであるAKIRAが、チーム作りをやってくれたのが今のEXILEに活きていると思います。

AKIRA:色々な時期を乗り越えて、守りに入ってしまうこともありましたが、それをぶち壊していきたいんですよ。僕が見てきたEXILEのスタイルは新しい世代が何を考えても、時代がどうなろうとも貫き通して、次に繋げたい。そういう時は摩擦もあるのですが、それをしないとLDHのコアな部分が消えてしまう様な気もするので。

MAKIDAI:新しいことをやると色々な意見がありますよ。今の話を聞いて、HIROさんのブレない姿勢をAKIRAは継承している気がしました。

AKIRA:今の時代に少しでも僕たちの存在が力になればと思って活動していますし、EXILEというオンリーワンな軍団をアジアや世界に名が轟かして、次の世代に繋げたいですね。

MAKIDAI:ツアー「EXILE TRIBE LIVE TOUR 2021 “RISING SUN TO THE WORLD”」にPKCZ®として同行した時、AKIRAが出番の前に「よろしくお願いします!」と挨拶してくれたんです。その一瞬でエネルギーをもらえたり、元気になるんですよ。それもHIROさんがやっていたことだと思うんです。ツアーを通して、TRIBEチームもひとつになっていることを実感しました。

AKIRA:コロナ禍の前はそれぞれ背負っているものがあるからか、各グループが「かまさなきゃ!」と気負う部分があったと思うんです。でも、ステイホーム期間で各自が自分の存在意義やあり方を見つめ直してから、HIROさんを筆頭にもう一度集まって方向性を考えたんです。ツアーでEXILEだけでなく、EXILE TRIBE、Jr.EXILEをも巻き込んでひとつになれたのは、いつの時代もやってきた「ピンチをチャンスに変える」精神のおかげなのかもしれません。ものすごく考えさせられた1年半でしたね。

MAKIDAI:ライブというファンのみなさんと一緒に共感できる場の大事さを改めて感じたツアーでもあったのかなと。新しい体勢になってSHOKICHIも音楽面で引っ張ってくれていて。

AKIRA:TAKAHIROも責任感を持ってグループをリードしてくれて頼もしいです。この20周年は全員で作り上げたアニバーサリーなので、14人のフロントメンバーだけでなく、MAKIさんやÜSAさん、MATSUさんも一緒に何かファンの皆さんにも楽しんでもらえるような1年にしたいですね。ATSUSHI君なしではEXILEを語れないですし、その先にはHIROさんもいらっしゃるので色々な企画ができたらなと。

MAKIDAI:これからのEXILEの活動も楽しみにしていますし、オリジナルチームでもできることはバックアップしていきたいと思っています。

AKIRA:ありがとうございます。ライブの大声援をまた聞くことができたら、その時は泣いてしまうかもしれません(笑)。諦めずに頑張っていきます。

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