諏訪部順一、梶裕貴、内田彩、伊東健人の歌声を徹底解説 現役ボイストレーナーが紐解く、声優特有の歌唱力の秘密
諏訪部順一は感情の深み、梶裕貴は甘くて癒されるような声
ーーでは、4名それぞれの作品についてもお聞きします。まずは諏訪部順一さんの『LOVE』について、どのような魅力を感じられましたか?
Minnie P.:感情の込め方に深みがあると感じました。中音域から低音域の少しハスキーな声を、ちゃんと生かした表現が素敵です。UAさんの「情熱」は女性の曲ですが「こういう表現があるんだな」と驚きました。自分なりの歌い方で楽曲の魅力を昇華していて、まるで諏訪部さんのオリジナル曲のように感じましたね。藤井フミヤさんの「TRUE LOVE」は、声優さんとしての魅力をご存じのファンの方々はキュンとくるんじゃないかな、という歌い方でしたね。BEGINの「恋しくて」ものびのびしていて、広がっていく曲調が諏訪部さんの深みのある声とマッチしています。ウルフルズの「バンザイ」もすごく良くて、派手な曲は諏訪部さんの声と相性がいいと思いました。リズム感もいいですし、同じ音程であってもいろんな音色が入っていて、声優としての良さがすごく出ていると感じました。
ーー『STORIES』というテーマで選ばれた梶裕貴さんについてはいかがですか?
Minnie P.:全体的に甘くて癒されるような声が印象的でした。歌声の抜けもいいし、語尾のビブラートも聴き心地がいいです。歌を聴いただけで「梶さんはきっと優しい方なんじゃないかな」と伝わってくるような歌声でした。歌い方は、ザ・声優というよりも、アーティスト寄りの自然な歌唱法です。「Sign」などは、地声のトップキーの抜けの良さが素晴らしかったですし、「ソラニン」も思い切りがよく、大きな声でしっかり歌ってらっしゃるので聴いていて気持ちよかったです。先ほど話した“口を縦に長く開けた“ような歌い方だと思います。「3月9日」は冒頭のAメロ部分を聴かせるのがすごく難しい曲なのですが、上手に歌いこなしていて。現在のJ-POPは、喋るように歌い出すのがトレンドなので、最初から大きな声で歌うことが少ないんです。「3月9日」は少し前の楽曲ですが、梶さんが今の時代ならではのアプローチをされていると思いました。それと同じことを伊東さんにも感じましたね。
ファルセットがポイントの伊東健人、海外でも勝負できる内田彩
ーー伊東健人さんのアルバムについてはどうでしょうか? 『YOUTH』というテーマで、全て原曲は女性の曲で構成されています。
Minnie P.:「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」は、歌うのがすごく難しい曲なんです。CHARAさんのスキルフルなボーカルが盛り込まれた楽曲なので、「男性声優の方がカバーしたらどうなるんだろう?」と思って聴いてみたら、肩の力が抜けていてすごく自然に歌われていたので「こんな表現があるんだ!」と私自身、勉強になりました。この曲をどうやって歌ったらいいのかわからない人への、一つの答えなのかなと思います。
ブラックビスケッツの「TIMING」はリズムにしっかりはめていて、歌声のボリュームも出ていました。Coccoの「焼け野が原」も同じ感じで歌っていたので、より歌の説得力が増したように感じました。曲によって、これだけ差をつけて歌えるのは本当にすごいですね。これも声優さんならではなのかなと思いつつ、素直に楽しんで聴けました。優しくて丁寧な歌い方と、滑舌の良さで歌詞がよく聞こえてくるので、歌の世界を十二分に感じることができます。ファルセットにも特徴があるので、そこにも注目して聴いてもらいたいです。
ーーでは、冒頭にもお話しされていた女性声優・内田彩さんのアルバム『ROOTS』に関してはどのように感じられましたか?
Minnie P.:内田さんは、本当にキラキラボイスですよね。語尾やちょっとした息遣いなど、いろんな工夫がされていて、非常に完成度が高い歌声だと思いました。特に「I’m Proud」はおすすめです。抜けの良さと透明感、キラキラ感は、女性が憧れる感じの歌声というか。だけど、原曲ともまた違う周波数高めの歌唱法です。「Dear My Friend」もそう。海外にはない、日本独特のオリジナルな歌唱法ですよね。今、シティポップや昭和歌謡が世界的に流行していて、YouTubeとかで時代関係なく聴かれるようになっていますし、海外の人が聴いて流行る可能性があるなと思いました。ここまでハイトーンを気持ちよく出せる人はそうはいないです。「First Love」も違うタイプの曲で、宇多田さんによるR&Bのイメージが強いですが、内田さんらしいかわいらしさと切なさが特徴的に出ていて「こんなFirst Loveがあるんだ!」と新鮮な聴き心地でした。
ーー今回のシリーズを聴いて、あらためて感じたことや新たな発見などはありましたか?
Minnie P.:私自身、たくさん勉強になったことがありました。声優さんならではの、工夫をこらした語尾や細やかな装飾が施されていて、それが特徴や強みになっている。特に、“聴き手を飽きさせない工夫“はすごいなと、ボイストレーナーとしても感じましたね。
ーーアルバムを聴いている方が、注目することでより楽しめるポイントなどがあれば教えてください。
Minnie P.:音には「出だしの音」「伸ばしている音」「語尾」があるんですが、それを意識しながら聴くといいと思います。何気なく聴くと見逃してしまいますが、声優さんは音の強弱や音量、ビブラートなどに思いを載せていると思うんです。今回は、そこに気をつけて、どんな思いが載っているか想像しながら聴くとより楽しく聴くことができると思いますね。
■リリース情報
諏訪部順一『COVER~LOVE~』
発売日:2021年12月15日(水)
価格:¥2,420(税込)
<収録曲>
1. 情熱
作詞:UA 作曲:朝本浩文 オリジナル歌唱:UA
2. 恋しくて
作詞:BEGIN 作曲:BEGIN オリジナル歌唱:BEGIN
3. 愛撫
作詞:松本隆 作曲:小室哲哉 オリジナル歌唱:中森明菜
4. TRUE LOVE
作詞:藤井フミヤ 作曲:藤井フミヤ オリジナル歌唱:藤井フミヤ
5. バンザイ
作詞:トータス松本 作曲:トータス松本 オリジナル歌唱:ウルフルズ
梶裕貴『COVER~STORIES~』
発売日:2021年12月15日(水)
価格:¥2,420(税込)
<収録曲>
1. Sign
作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿 オリジナル歌唱: Mr.Children
2. 3月9日
作詞:藤巻亮太 作曲:藤巻亮太 オリジナル歌唱: レミオロメン
3. スパークル
作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎 オリジナル歌唱: RADWIMPS
4. 葛飾ラプソディー
作詞:森雪之丞 作曲:堂島孝平 オリジナル歌唱: 堂島孝平
5. ソラニン
作詞:浅野いにお 作曲:後藤正文 オリジナル歌唱: ASIAN KUNG-FU GENERATION
内田彩『COVER~ROOTS~』
発売日:2021年12月15日(水)
価格:¥2,420(税込)
<収録曲>
1. I'm Proud
作詞:小室哲哉 作曲:小室哲哉 オリジナル歌唱:華原朋美
2. Dear My Friend
作詞:五十嵐充 作曲:五十嵐充 オリジナル歌唱:Every Little Thing
3. Don't wanna cry
作詞:小室哲哉、前田たかひろ 作曲:小室哲哉 オリジナル歌唱:安室奈美恵
4. FACE
作詞:小室哲哉、MARC 作曲:小室哲哉オリジナル歌唱:globe
5. First Love
作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル オリジナル歌唱:宇多田ヒカル
伊東健人『COVER~YOUTH~』
発売日:2021年12月15日(水)
価格:¥2,420(税込)
<収録曲>
1. Swallowtail Butterfly ~あいのうた~
作詞:岩井俊二、CHARA、小林武史 作曲:小林武史 オリジナル歌唱:YEN TOWN BAND
2. memories
作詞:大槻真希 作曲:森純太 オリジナル歌唱:大槻マキ
3. TIMING
作詞: 森浩美、ブラック・ビスケッツ 作曲: 中西圭三、小西貴雄 オリジナル歌唱:ブラック・ビスケッツ
4. 焼け野が原
作詞:こっこ 作曲:こっこ オリジナル歌唱:Cocco
5. 光
作詞:Utada Hikaru 作曲:Utada Hikaru オリジナル歌唱:宇多田ヒカル
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■Minnie P. プロフィール
ユニバーサルミュージック・パブリッシング提携作家。音楽プロデューサー、作詞・作曲・編曲家、ボイストレーナー。 音楽レーベル、音楽制作プロダクション、音楽スクールの株式会社ウイングスミュージック代表取締役社長。 集英社インターナショナルより「声を磨けば人生が変わる」を発売。 2021年11月より自身のYouTubeチャンネル「ミニー・Pのボイトレ」を開設している。
YouTubeチャンネル「ミニー・Pのボイトレ」
https://www.youtube.com/channel/UCUorLF_O-dGvXH4aNppO20Q