EXILE、アルバムで辿る軌跡 『PHOENIX』:これまでの歩みと攻めの姿勢を濃縮した、最新形のエンタテインメント

 「VIRTUAL LOVE」を含め、新曲が7曲収録されていることも、今のEXILEのモチベーションの高さを表している。まず、5曲目「アガパンサス」は、TAKAHIROのソロ曲に関口メンディーがラップで参加したミドルナンバー。“アガパンサス”は「恋の訪れ」や「ラブレター」といった花言葉を持つ花だが、この曲の歌詞にはEXILEの楽曲である「掌の砂」を連想させるフレーズなど、TAKAHIROらしいEXILE愛が散りばめられており、ファンへ向けたラブレターのような楽曲となっている。続く6曲目は“光の女神”を意味する「HEMERA」をタイトルに、SHOKICHIが作詞をしたエモーショナルなラブソング。ソロ曲でありながら、あくまでもEXILEにフォーカスして曲と向き合ったそうで、「丁寧に大事に書いたので、歌詞とともに歌を楽しんでいただきたいと思います」(※4)とのこと。そうやって、SHOKICHIがコロナ禍で感じたファンへの想いを「HEMERA」に込める一方で、NESMITHは8曲目「Freedom」を作詞。EXILEの王道とも言えるポップなトラックに、ライブに足を運ぶファン一人ひとりの目線で歌詞を綴ることで、コロナ禍を抜けた未来までも色鮮やかに描き上げた。その後も、EXILEのバックボーンにある90年代のヒップホップをフィーチャーした9曲目「DOWN TOWN TOKYO」や、SHOKICHIと白濱の「ロックとダンスミュージックを混ぜた曲をやりたいよね」(※5)という会話から生まれた11曲目「NEO UNIVERSE」など、バラエティ豊かな楽曲たちが続く。

 「YELLOW HAPPINESS」や「One Nation」といった既発曲だけを見ても、曲調の振り幅やメンバーたちのマルチな才能に驚かされるが、改めてアルバム1枚を通して聴くと、まるで方向性の異なる映画を12本観たような充実感があり、そこには、何とも形容しがたい“EXILE”という唯一無二のジャンルが存在している。だからこそ、アルバムの最後を飾る、TAKAHIROが作詞したバラード「STAY WITH ME」が心に沁み渡るのだろう。勇退していった先輩たちやメンバー、ファンと歩んできたこれまでの軌跡、そしてこれからも続く夢の旅路に想いを馳せながら、丁寧に歌い上げるTAKAHIRO。〈果てしない夢を/共に生きていこう〉というストレートな愛の言葉が、ツアーに向けて動き始めたEXILEとファンだけでなく、まだライブに踏み出せずにいる人の心までも優しく包み込む。グループとしては“攻めのEXILE”を見せつけながらも、いつも観客一人ひとりと目を合わせながら、歩幅を合わせながら進んできたメンバーたちの“愛”をしっかりと感じる。これまで発表してきたアルバムもそうであったように、今作『PHOENIX』もまた、そんな作品となっている。

EXILE / HAVANA LOVE (Music Video)
EXILE / One Nation (Special Performance)

※1:https://realsound.jp/2020/11/post-660421.html
※2、4、5:https://youtu.be/mao8Abav0aw
※3:https://realsound.jp/2021/11/post-899510.html

連載バックナンバー

第一章&第二章:デビューから受け継がれるエンタテインメントを追求する姿勢
第三章:未来への願いを込めて、日本中に届けた力強いエンタテインメント
第四章:表現の幅広さで“継承と進化”を印象づけた次世代の姿

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