EXILE Album History 〜『PHOENIX』〜
EXILE、アルバムで辿る軌跡 『PHOENIX』:これまでの歩みと攻めの姿勢を濃縮した、最新形のエンタテインメント
2021年9月27日にデビュー20周年を迎えたEXILEが、2022年1月1日に12枚目となるアルバム『PHOENIX』をリリースする(すでに店頭では発売中)。オリジナルアルバムとしては、EXILE ATSUSHIを含む“15人体制”で制作した前作『STAR OF WISH』以来、約3年半ぶり。EXILE AKIRA、EXILE TAKAHIRO、橘ケンチ、黒木啓司、EXILE TETSUYA、EXILE NESMITH、EXILE SHOKICHI、EXILE NAOTO、小林直己、岩田剛典、白濱亜嵐、関口メンディー、世界、佐藤大樹から成る“新生EXILE”にとっては初のアルバムだ。それに伴い、活動の節目を彩ったアルバムたちをピックアップしておさらいしてきたが、最終回となる本稿では最新アルバム『PHOENIX』の魅力を紹介していく。
2020年11月2日、最後のオリジナルメンバーであるATSUSHIがソロ活動専念を発表し、シングル『SUNSHINE』を最後に14人体制となった新生EXILE。彼らの最新アルバム『PHOENIX』には新体制として制作してきた全12曲のほか、「RED PHOENIX」「PARADOX」「HAVANA LOVE」「VIRTUAL LOVE / EXILE×三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE」のMV、『EXILE TRIBE LIVE TOUR 2021 “RISING SUN TO THE WORLD”』のライブ映像などが収録される。
その中でメンバーが特に大事にしている1曲こそ、2021年1月1日に14人で初めて発表した「RED PHOENIX」(EXILE TRIBE『RISING SUN TO THE WORLD』収録)。2020年末に開催された有料配信ライブ『LIVE×ONLINE BEYOND THE BORDER』でも“攻めのEXILE像”を見せていた彼らだが、そこでオープニングを飾ったこの曲こそが、新生EXILEの始動を告げる狼煙であり、今作『PHOENIX』を制作するきっかけとなった楽曲である。リーダーのAKIRAが「日本を象徴する“富士山”と“日の出”をバックにメンバーが力強く突き進むシーンは、不死鳥の如く何度でも立ち上がり日はまた昇ると強く信じて、“日本を元気に。そして、日本の元気で、世界を元気に。”という想いが込められています」(※1)と語るように、「RED PHOENIX」は、コロナ禍という未曽有の事態に世界が混乱する中、エンタテインメントの完全復活を目指して勇ましく拳を突き上げるロックチューン。近年EXILEのメインコンポーザーを務めているSHOKICHIを中心に、TAKAHIROが作詞、白濱亜嵐が作曲に参加しているほか、曲中ではSHOKICHIがドラム、NESMITHがギター、白濱がDJを担当するなど、メンバーのクリエイティビティが存分に発揮されていることが大きな魅力だ。また、展開の多いフォーメーションと、「Rising Sun」のサビのステップを彷彿とさせるダイナミックなユニゾンダンスが共存しているところもポイント。新たな要素を積極的に取り入れながらも、センターでシャウトする不動のボーカル TAKAHIROの存在により、先人たちへのリスペクトも確かに感じられるMVに仕上がっており、まさにアルバムの1曲目にふさわしい楽曲である。
今作のもう1つの目玉となるのが、先日MVが公開された三代目 J SOUL BROTHERSとのコラボ曲「VIRTUAL LOVE」。EXILE TRIBEとしては、2011年の「24karats STAY GOLD feat.三代目 J Soul Brothers」などで共演している2組だが、EXILE×三代目 J SOUL BROTHERSとして楽曲を制作するのは今回が初めて。ギラギラとした印象の強い「24karats STAY GOLD」から一変、今作はメンバー全員が白い衣装に身を包んだ爽やかなダンスチューンであり、岩田剛典も「ファンの皆さんとの距離が離れていても、一緒に繋がってこれからも上を目指して行きたいという前向きなメッセージのある曲になっています」(※2)と語っている。EXILEのTAKAHIRO、SHOKICHI、NESMITH、三代目 J SOUL BROTHERSの登坂広臣、今市隆二のストロングポイントを活かした華麗なボーカルリレーはもちろん、歌い出しがELLYのラップというのも、今の彼らならではのアプローチだろう。楽曲を手掛けたのが、YVES&ADAMS、JAY’ED、T.KuraといったLDHファンにはお馴染みの作家陣であることも、2組の武器をバランスよく融合できた一因かもしれない。三代目 J SOUL BROTHERSの10周年インタビューで、ELLYも「フットワークの軽い曲作りができるようになったことも嬉しかったですし、そもそも歌う/踊るを軸にやってきた三代目JSBが『メンバー同士で作るグループ』になれたことに、10年の重みを感じました」(※3)と語っていたが、これまでに築き上げたメンバーや作家陣との関係性の中、お互いのスキルやアイデアを持ち寄って楽曲をブラッシュアップしていく。そんなクリエイティブなやり取りと、音楽やエンタテインメントを素直に楽しんでいる様子が、この楽曲からは窺える。
それはMVにも言えることで、フルCGで構成された映像も細部まで遊び心いっぱい。仮想世界上に存在する“VIRTUAL TOKYO”と、LDHがこれまでに描いてきた“願いの塔”、“超東京”、“メトロポリス東京”、“NEO TOKYO”といった世界が一つに繋がった“LDHユニバース”を舞台に展開するMVの中には、Jr.EXILEのプロジェクト『BATTLE OF TOKYO』とリンクした場面も。EXILEと三代目 J SOUL BROTHERSのコラボ曲である以上に、LDHエンタテインメントを象徴する楽曲と言えるだろう。