あいみょんの恋愛ソングに共通する“自身に向けた切実な願い” 「ハート」とドラマ『ハンオシ』の相乗効果を振り返る

あいみょん 、恋愛ソングの共通点

 百瀬柊(坂口健太郎)と大加戸明葉(清野菜名)の“偽装結婚”から始まる2人の恋模様を描いたドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』(TBS系、以下『ハンオシ』)が12月21日に最終話を迎えた。

 「“結婚”を不毛な恋の隠れ蓑にしたい」というのっぴきならぬ事情を抱えた百瀬と、どうしてもお金が必要な明葉の間で秘密の“契約結婚”が成立する。

あいみょん - ハート【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

 この特殊で、歪で、そして“共犯者”の2人が共に抱えた痛々しさや切実さゆえに突拍子もない展開が挟み込まれる『ハンオシ』ワールドにそっと寄り添い続けてくれたのが、主題歌であるあいみょんの「ハート」だろう。

 半拍遅れで不意にゆっくり始まる楽曲のイントロは、まさにこの不可思議で不完全で一筋縄ではいかない2人の恋の形を表しているように思えるし、本人としては至って真面目にいつだってあらぬ方向に全力でまっしぐらな百瀬の “キテレツ”ぶりをも予感させる。

 思い返せば、百瀬の常人離れした不器用さ、その裏に見え隠れするとんでもなくわかりづらく面倒なピュアさに明葉共々視聴者も振り回され戸惑わされ続けてきた。相思相愛よりも圧倒的一方通行な片想いで“報われなさ”が付き纏い、本来強烈な“共感”を呼び起こすはずの「片想い」もあまりにイレギュラーすぎる事情ゆえ、そして百瀬自身の希望もあって周囲からの理解や共感を寄せ付けない。だからこそ不意打ちの連続で“歯痒さ”“焦ったさ”が募り、感情のリリースポイントがどちらかと言えば少なかった本作をグッと我々に近づけてくれたのは、間違いなくあいみょんの「ハート」だった。2人も、そして我々視聴者にとっても行き詰まった時に帰ってこられる場所になっていたような気がする。

 世の中に“片想い”を歌ったラブソングは数多あれども、彼らの事情にフィットした楽曲はなかなかない。兄嫁・百瀬美晴(倉科カナ)への秘めたる恋心を抱き続ける百瀬と、そんな百瀬にあろうことか惹かれていき“契約結婚”の御法度に触れそうな明葉。それぞれの“片想い”は絶対に相手にバレてはならず、どう考えたって苦しいことの方が多そうなものなのに自業自得とその運命を受け入れ“それでも近くにいられるだけで幸せ”という随分慎ましやかで健気な“自分だけ”の日の目を見ない恋心だ。はなからわかりやすい目に見える形での成立(両想い)を望んでさえいない。

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