小田和正とアーティストが2年ぶり集結 「風を待って」初披露した音楽特番『クリスマスの約束 2021』収録レポ
続いて、「桑田(佳佑)くんの曲をやろうということになって、僕は(サザンオールスターズの)『いとしのエリー』をと言ったのですが、せっかくのクリスマスなのだから、というみんなの意見におされて……」という経緯で決まったという「白い恋人達」へ。アレンジはスキマスイッチの二人が手掛け、小田がタンバリン、矢井田がトライアングルで彩りを添えた。JUJUの強く儚い歌声に導かれ、白い雪が降り積もる情景が目に浮かんだ。
その後、「レパートリーも増えてきたし、いつか(小田、根本、スキマスイッチ、水野の)委員会バンドでワンマンツアーやりたいね」という明るい話題も飛び出した。そして「コロナでは、随分音楽に救われました。そして、素直にみんなと音楽をしたいと思いました。僕らはこの状況をどう乗り越えていくのでしょう」と話し歌ったのは、以前の『クリスマスの約束』でも披露したことのある、井上陽水「最後のニュース」。歌詞の中の一つひとつの問いかけに耳を済ませ、私たちが置かれているこの状況を省みる時間となった。
フィナーレが近づき、「2021年の『クリスマスの約束』はどうでしたか?」と問いかける小田。鳴り止まない拍手にこたえ、アンコールとして清水翔太、長屋を加え、「風を待って」を最後にもう一度披露した。会場がクラップをするたび、一つひとつの言葉が心に染み込んでいくようだった。マスク越しに笑顔をみせる観客に向け、〈ここで 見つけたもの 皆のあの笑顔〉と歌いかける小田の姿に、この曲は今日完成したのだ、とさえ感じた。〈今は戻らないから 大切なんじゃなくて 今を重ねて明日へ つながって行くから〉。未来を信じ、今を大切に生きる。急がなくていい、ゆっくり歩いて行こう。小田は昨今の情勢を受け、感じた想いを音楽に変えた。「コロナの収束を願って書いた」と、はっきりと表明して曲を発表するアーティストは、この情勢においても意外と多くないと感じる。メッセージ性のある曲は敬遠される時代、そんな背景もあるかもしれない。コロナ禍で創作を制限するアーティストや、コロナ禍であっても今まで通りを心がけるアーティストもいる。そんな中、来年75歳を迎える小田が、これほど美しく力を与える曲を届けてくれることに、心打たれるものがあった。
「また会おうね!」。小田は、思わず言葉が溢れたかのようにそう声をかけ、ステージをあとにした。〈It’s going to be all right〉、「風を待って」の最後のこの歌詞は、番組からのクリスマスプレゼントだ。ぬくもりにあふれた一夜、放送はTBS系列にて、12月24日深夜24時20分から。