YOASOBI、Ado、ずっと真夜中でいいのに。……絶えぬタイアップで感じた“ネット発”からの解放

 YOASOBIの「夜に駆ける」、yamaの「春を告げる」、Adoの「うっせぇわ」。ここ数年、閃光の様に突如現れた楽曲がメインチャートを、そして世の中を席巻するのを何度も目撃することとなった。彼らが開けた風穴が、“ネット発”として括られてきた音楽を、その枠組みから解放しつつある。

 この流れをトップで牽引しているのがYOASOBIだろう。彼らがすさまじいのは、デビュー曲であり、金字塔的存在になった「夜に駆ける」から現在まで、その速度を一切落とすことなくシーンを駆け抜け続けている点だ。

 2021年だけでも、タイアップでない曲の方が少ないほど絶え間なくリリースと露出がを続けているYOASOBI。アニメ『BEASTARS』(フジテレビほか)の第2期オープニングテーマとなった「怪物」と同じく第2期のエンディングテーマ「優しい彗星」に始まり、『めざましテレビ』(フジテレビ系)2021年度テーマソングの「もう少しだけ」、『ひろがれ!いろとりどり』(NHK Eテレ)のテーマソングとなった「ツバメ」など、地上波の情報番組から子ども向けの教育番組に至るまで、幅広い層に向けて発信されており、何かしらのメディアに触れる人で、YOASOBIの音楽を聴いたことがないという人の方が今や少数派かもしれない。

YOASOBI「怪物」Official Music Video (YOASOBI - Monster)

 “小説をもとに音楽を作る”、YOASOBIの活動形態自体は、元々ストーリー性やコンセプトを持つものとの相性がいい。だが、そういったポテンシャルを持ったアーティストであることを大前提としても、驚くべきはどの作品でも的確にエッセンスを抽出し、キャッチーな音楽へと昇華するコンポーザー・Ayaseの卓越した手腕と、その途切れぬバイタリティだろう。YOASOBIが先頭となってシーンを引っ張っていく構図は、まだまだ続きそうだ。

 2020年末ごろから楽曲へのタイアップが増えたのが、ACAねを中心としたずっと真夜中でいいのに。だ。2018年、アーティストとしての全容が明かされていない状態でYouTubeに投稿された「秒針を噛む」は現在1億回再生を突破し、続く「脳裏上のクラッカー」「ヒューマノイド」もそれぞれ3000万回、2000万回以上再生されるなど、トリッキーな曲構成と多彩な音を駆使した先進的なサウンドメイクで多数のファンを獲得。その後、メジャーデビュー作となったミニアルバム『正しい偽りからの起床』は主要チャートで上位にランクインし、強い存在感を放った状態でメジャーシーンに登場することとなった。

ずっと真夜中でいいのに。『秒針を噛む』MV

 元々メディア露出はほぼしていなかったが、2021年1月『ずっと真夜中でいいのに。のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)、『SONGS』(NHK総合)に出演。それと前後する形で、2020年11月に映画『さんかく窓の外側は夜』の主題歌「暗く黒く」、12月には映画『約束のネバーランド』の主題歌「正しくなれない」を立て続けにリリースした。また、ずとまよ。名義ではないが、映画『キャラクター』の主題歌としてACAね×Rin音×Yaffleのコラボによる「Character」を提供するなど、注目度の高い実写映画作品とのタイアップが続いた。

ACAね(ずっと真夜中でいいのに。) × Rin音 Prod by Yaffle 『Character』MV

 顔出しせず、メディアへの出演も抑えた活動形態を維持しつつ、オンラインも含めて積極的にライブ活動も行うなど、自由さを保ったまま確実に影響力を増しているアーティストだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる