『UNION』インタビュー
SWAY、ライフステージの変化が生んだ新しい価値観 音楽に込める自身や家族へのリアルな言葉
DOBERMAN INIFIITYのMC、役者、デザイナーとしても活躍しているラッパー・SWAYが新作『UNION』をリリースした。
2018年8月に<Def Jam Recordings>からメジャー1stアルバム『UNCHAINED』を発表。その後も「ON FIRE」「Angels」「TALK」「Summertime」とシングルをリリースし、ソロアーティストとしても着実に成長を遂げてきたSWAY。第一子の誕生を目前にしたリアルな心境や、今の自分にしかできないことを余さずに反映した新作『UNION』を語ってもらった。(森朋之)
毎年SWAYの“PERFECT YEAR”にしたい
ーーリアルサウンドでのインタビューは、2018年のアルバム『UNCHAINED』以来となります。その後もコンスタントに楽曲をリリースしてきましたが、この3年間はSWAYさんにとってどんな時期でしたか?
SWAY:音楽活動においては、まずDOBERMAN INFINITY、HONEST BOYZ®があって。SWAYとしての活動に100%注力できたわけではないし、「もっとアルバムを出したり、いろんなチャレンジをしてみたかった」という気持ちもあるんですけど、まったく後悔はしてないですね。常に音楽に触れていられる人生を送れているのはありがたいし、もがき苦しむというより、楽しくやらせてもらっています。
ーーソロ活動だけにこだわっているわけではなく、グループとソロをバランスよく継続していきたい、と?
SWAY:そうですね。特にDOBERMAN INFINITYはみんな人生をかけてやっているし、5人で夢に向かって走っていて。ソロ活動をその上に置くという意識にはならないんですよね。SWAYの楽曲も、DOBERMAN INFINITYとは違う音楽性やメッセージ性を表現したいという気持ちが強いし、いいバランスでやれていると思います。
ーー俳優、デザイナーとしての活動については、SWAYさんのなかではどんなバランスになっているんですか?
SWAY:どちらも新しく始めたことではなくて、ずっと続けているんですよね。役者人生も10年目だし、音楽、役者、デザインのトライアングルが成り立っているというか。すべて表現するツールなんです、自分のなかでは。LDHの“PERFECT YEAR”と同じように、毎月、何かニュースを発信できるようにしたんですよ。リリースやツアーだけではなくて、(俳優として)ドラマや舞台でもいいし、デザインでもよくて。毎年SWAYの“PERFECT YEAR”になればいいなと(笑)。
ーーなるほど。USのラッパーが俳優として活動するケースは多いですし、ヒップホップとデザイン、グラフィックの関係も密接なので、すべてつながっている感覚なのかも。
SWAY:そうですね。ずっとUSの音楽シーンを見てきているし、俳優をやることにもぜんぜん抵抗がなくて。デザインをはじめたのは音楽よりも早くて、中3からやっているんです。m-floやEXILE、エミネムなんかのCDをレンタルして、自分でCDの白盤に焼いて、ジャケットを作り直して飾っていたんですよ。札幌のクラブで活動するようになってからも、先輩のイベントのフライヤーを作ったり。
ーー今までやってきたことがすべて活かされているんですね。では、新作『UNION』について聞かせてください。4曲入りの作品ですが、全体的なテーマはどういうものだったんでしょうか?
SWAY:結婚して、子供が生まれることになって。まずLDHと<Def Jam Recordings>のスタッフにお話しして、みなさんにも報告させてもらったんですけど、その気持ちを作品として残したいと思ったんです。自分では“第2章”と呼んでるんですけど、人生のなかですごく大きな出来事だし、ひとりのアーティストとしてしっかり形にしたいなと。
ーーライフステージの大きな変化、人生の新たな出発点を音楽として表現しておきたかった、と。
SWAY:完全にそうです。でも、いざ作りはじめたときに「何を言いたいんだろう?」と思って。まだ子供は生まれてきていないし、親になる感覚も、準備し切れていない自分にも気づきましたし。自分に向かって、いろいろな想像を巡らせながら作った作品ですね。
ーー1曲目の「fosho」は、美しいシンセサウンド、生々しいビートが融合したナンバー。トラックはO.M.W(OLDMANWILDIN'/P-CHO、JAY'ED、NAOtheLAIZAによるプロデュースチーム)ですね。
SWAY:はい。作品全体のコンセプトをお伝えして、いくつかトラックを聴かせてもらって。「fosho」のトラックが送られてきて、「これカッコいいですね」と言いながら、すぐにリリックを書いちゃったんですよ(笑)。「fosho」は“そうだな” “だよね”みたいな意味なんですけど、自分のなかでは“マジでやるぜ”という感覚が強くて。今までもマジでやってたつもりなんですけど、家族が出来て、背負うものはめちゃくちゃデカいなと思って。その気持ちをそのまま書いたリリックですね。P-CHOさんも「めっちゃいいね」と言ってくれて、みんなでスタジオに入ってさらにブラッシュアップして。
ーー〈背負うもんがあるってこと〉〈命かけるもんがあんだぜ〉という強いラインもあって。
SWAY:それも自分の正直な気持ちですね。あと、ちょっとマニアックなフレーズも入れてるんです。インディーズでリリースした『THE S』に入っていた「Sorry I'm Late」のフレーズとか、スニーカーのネタとか。
ーースニーカーのネタ?
SWAY:はい(笑)。「ピカピカキックス」(『THE S』収録)で“スニーカーはリボ払いで買ってた”みたいなリリックがあるんですけど、「fosho」では〈Kicksだって一括〉って書いてて。35歳になってようやく、スニーカーを一括払いで買えるようになったので(笑)。〈今日も朝が来たぜ9時ジャスト〉もそうですね。Nike SNKRS(NIKEが発売するスニーカーを購入するためのアプリ)は、毎朝9時に購入の抽選開始なんですよ。僕は、ほぼほぼ当たったことがないんですけど。
ーーそうなんですね(笑)。
SWAY:人生そんなもんというか(笑)、背負うものが出来ても好きなものは変わらないし、期待通りにいかなくても、今日もがんばっていこうやっていう曲ですね。