『toi et moi』インタビュー
et-アンド-が抱くグループとしての矜持 野島樺乃「アイドルは成長過程、アーティストは完成形を楽しんでもらいたい」
SKE48の元メンバー・野島樺乃率いる4人組ガールズグループ「et-アンド-」。これまで、7月に『#tokyo』、8月に『Eenie, meenie, miney』をデジタルシングルとして発表してきた彼女たちが、11月24日には1stEP『toi et moi』をリリースする。et-アンド-にとって初となるCDリリースだ。
そこでこのタイミングで4人にインタビュー。収録曲への思いのほか、「#tokyo」でのデビュー以降、自分たちに感じている“変化”についても語ってもらった。(松本まゆげ)【最終ページに読者プレゼントあり】
自分にも言い聞かせるような歌詞を書いた(山崎)
ーーデビュー当時は「&」というグループ名でしたが、「et-アンド-」に変わったのですね。
野島樺乃(以下、野島):グループ名の由来には深い意味があるのでそこは変えたくなくて。「et-アンド-」という、表記になりました。
ーー言葉の持つ意味は同じですし、今回のEPのタイトルにも入っていますね。
野島:そうなんです。 『toi et moi』はフランス語で「あなたと私」という意味です。
山崎カノン(以下、山崎):タイトルはいくつかの候補のなかからみんなで決めたんですけど、グループ名と同じ「et」が入っているのも決め手になりました。
ーーそんなEPには、デジタルで配信された既発曲2曲を含む全6曲が収録されています。主に新規の4曲について伺いたいのですが、「Newton」は1曲目に相応しい広がりのある楽曲ですね。
野島:et-アンド-の曲は、今のところイントロのあるものがほとんどなんですけど、「Newton」はイントロなしで頭サビから始まるんです。だからすごくインパクトがあるし、ぐっと心を掴まれて聴き入ることができるんじゃないかなと思います。レコーディングでも、「聴いてくださる方を一気に引きつけたい!」と思って歌ったので、私たちの歌唱力が詰まった1曲になっていると思います。
栗本優音(以下、栗本):私は、サビで高いハモリをしているんですけど、あんなに高い音程でハモったのは初めてなんです。ハイトーンボイスが定着しているからこそこだわって努力した部分ですね。
モラレスきあら(以下、モラレス):私は、2サビのあとに入っているラップが印象深いです。ここ、結構音程が低いんですよ。音程が低いとどうしても暗い雰囲気になりがちなんですけど、ここのラップの歌詞は暗くないので、どう歌えばいいのかかなり研究して臨みました。
山崎:そういう意味では、私も難しいところがありました。「囁いて歌って」とレコーディングのときに言われるんですけど、囁きすぎるとボリュームが小さくなってしまうので、囁きながらもちゃんと声を通すように歌いました。
ーーどちらもバランスをとるのが難しそうです。やり方を見つけ出せたのがすごい。
山崎:「マイクに近づいて歌ってみて」「寝起きの感じで歌ってみて」みたいに、例えながらディレクションをしてもらったので、イメージしやすかったんです。すごくありがたかったです。
ーー2曲目の「Blue bird」は、栗本さんと山崎さんが作詞に参加していますね。どういった経緯で?
栗本:この曲に関してはひとまず4人とも作詞をしているんです。で、プロデューサーの菊池(一仁)さんがそれぞれの歌詞からピックアップして1曲に仕上げてくれました。
ーーつまり、栗本さんと山崎さんの歌詞が採用されたということですね。
栗本:私は作詞初挑戦でした。メロディを聴いて自分なりにコンセプトを決めて、言葉をはめていく作業は苦戦しましたけど、歌詞になったのを見たとき達成感がありましたね。
ーーメッセージ性が強いなと感じる歌詞でした。自分に言い聞かせる部分もあるのかなと。
山崎:私は、メロディを聴いたときに力強い強いサビが印象的だったので、背中を押すような歌詞だといいなって思って書きました。〈転んでも立ち上がればいいの〉は、自分にも言い聞かせているし、聴いてくださるみなさんにも響くものもあればいいなと思っています。
栗本:私は〈Hey you fly away (Let it go)〉あたりを書いています。コロナ禍で簡単には行けないところに、気持ちだけでも「行けー!」というイメージ。力強さを感じられる歌詞になっていると思います。歌詞を書かせていただけたぶん、レコーディングも気持ちが乗りやすかったです。
モラレス:この曲で私はサビとラップを歌っているんですけど、「#tokyo」とも「Newton」とも違う落ち着いたラップなので、また違った難しさがありました。ラップって音に完全にはめなくてもよくて、むしろはめちゃうとダサく聴こえるパターンもあるんです。結構自由にできるけれど、そこのさじ加減は難しい。
ーー確かに、リズムの乗り方が独特でしたね。
モラレス:そうなんです。特に〈ほんとは怖い〉は、少しでもズレるとダサくなってしまいます。でも、レコーディングを終えてから個人的に練習しているし、ライブで場数も踏んでいるので今のほうが絶対うまいです!(笑)
野島:(笑)。実は、タイトルにもなっている「Blue bird(青い鳥)」には、Twitterのアイコンという意味もあるんです。完全に裏テーマですけどね! Z世代と言われている私たちは、SNSで誹謗中傷を受けることが特に多いんですけど、底に対する苦しい思いも全部さらけ出せている曲なので、感情移入しやすいですね。もやもやした気持ちを晴らそうという勢いもあって、面白いです。
ーー「Matryoshka」は、一度聴いたら頭から離れないクセの強い曲ですね。
野島:そうそう。本当に頭に残る、中毒性のある曲ですよね。
栗本:急にロシア語が入ってくるし(笑)。歌詞を見ただけでもインパクトがあります。
野島:シンプルに歌詞を見ても読めなかったもんね!(笑)
ーー以前の配信で、山崎さんはこの曲が一押しだと言っていましたよね。
山崎:あ、そうなんです。サビの繰り返すところが頭に残って、何このクセのある曲! と思ったので。あと、ライブで披露している振り付けも楽しいんですよ。「間奏部分でロシア民謡感を出そう」と話し合いながらみんなで考えていったので。
モラレス:とにかく、異国感を出したかったんだよね。菊池さんに「本当にこれでいいですか?」って確認しながら(笑)。
野島:そうそう、自由に考えさせてもらいました。よく見るとストーリーがあるので、ライブではそこにも注目してもらえると面白いと思います。
ーーそして、「BIBIBI」は野島さんが作詞されています。
野島:菊池さんから「盛り上がれる曲にしたい」という話を聞いて、ひとまず書くことになりました。「盛り上がれる」っていろんな意味があると思うんですけど、メンバーだけで盛り上がるよりは、お客さんとコールアンドレスポンスをしてみんなで盛り上がれる曲にしたほうが楽しいと思ったので、〈LALALALALA〉と掛け合いやすい歌詞を入れました。今はコロナ禍で声が出せない状況なので、ライブで披露するときには簡単な振り付けを一緒にやっているんですけど、声が出せるようになったらめちゃくちゃ盛り上がりたいですね!
山崎:お客さんとコミュニケーションが取れるのはすごく嬉しいよね。〈誘うように〉から一人ずつ順番に歌っていくので、歌声がコロコロ変わっていくのもお気に入りのポイントです。
野島:そうそう!
ーーしかも、歌詞もテクニカルだなという印象でした。英語を織り交ぜながら、リズムを楽しんでいるような。
野島:メロディを聴いたとき音の遊びが面白い曲だなと思ったので、歌詞が乗ることでぼやけてしまわないよう、〈BIBIBI〉みたいなアクセントが乗りやすい言葉をあえてチョイスしています。なので、歌詞を見ながら聴くのもいいんですけど、1回は何も見ずに聴いて、音と歌詞の共鳴を楽しんでもらいたいと思っています。
栗本:この歌詞のおかげで、サーカス感が強い楽曲になっているなと思いました。賑やかなんだけど急にカッコよくなったりして。ライブでは振り付けにこだわったので、パフォーマンス面でも今までにないet-アンド-が出ていると思います。
モラレス:個人的には、菊池さんと相談しながらレコーディング室に長時間こもってじっくり録っていきました。「ワイワイしつつ悪い感じで歌ってみて」というディレクションがあったので、まずは雰囲気を作ろうと思って。部屋の電気を暗くして、しゃがんでみたり声を低くしてみたりして、“悪い雰囲気”を作りつつ歌ったのが思い出深いですね(笑)。