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日韓の音楽シーンを中心に活躍、Mayu Wakisakaが考えるコライトの定義と作家性 TWICEヒット曲秘話も語る
努力、仲間の協力、タイミングの3つが重なった「KNOCK KNOCK」のヒット
――そんな作家活動は2015年からとのことですが、なぜここまで多くのヒット曲を作れたと考えていますか?
Wakisaka:発明品と一緒で、そこまでの努力があって、仲間の協力があって、あとはタイミング。この三つが重なるとヒットになると思うんです。たとえば私の最初のヒットって、TWICEの「KNOCK KNOCK」なんですけど、プロデューサーからトラックをふたつもらって、両方にメロディを乗せましたが、私は「KNOCK KNOCK」じゃないほうを推してたんですよ。でも、プロデューサーは「『KNOCK KNOCK』のほうがいい」って。だから仲間がいることだったり、タイミングだったりですよね。その後、サビのやり直しもたくさんしていて。「KNOCK KNOCK」は最初は英語詞で作っていたので、韓国語にも合うって思われるまで1年ぐらいかかっています。努力、仲間の協力、タイミングが全部そろって、っていう感じですね。
――「KNOCK KNOCK」だとさらに日本語バージョンもありますよね。トップライナーとして、国によってリスナーに受けるメロディの違いは感じますか?
Wakisaka:よく「街を見たらわかる」って説明するんです。たとえばLAって、運転しながら少し寝落ちしても死なない真っ直ぐな街並みっていうか(笑)。それと同じでヒップホップは、あんまりコード進行も変わらない。往年のJ-POPは、イントロからたくさんコードがあって、Aメロから転調することもあるし、同じ感じでLAで運転していたら、急にハンドル切って事故を起こしそうな感じがする(笑)。渋谷だったら、こっちの道、あっちの道って細かい感じですよね。ロンドンは小さな建物が多くてドラムベースっぽいなと思うし。韓国のカンナムに行くと、LAのコリアタウンに似ていて、道がすごくズドンとしていて、日本よりアメリカに近いなと思います。だから街並みって曲にすごく影響しているんじゃないか、と。
――日本のほうが情報量が多いわけですね。トップラインをつけるときも、そこは意識しますか?
Wakisaka:後から聞いたことなんですけど、韓国語は長い言葉が少ないので、ロングトーンが少ない。でも、J-POPはロングトーンが多いんですよね。たとえば中島美嘉さんの「雪の華」を聴くと音もフレーズ構成も長いじゃないですか。ああいうのは洋楽とかでは少ないですよね。
――いろいろ国のアーティストに合わせていくなかで、特に気に入っている作品はあるでしょうか?
Wakisaka:GOT7のJBとJinyoung(ジニョン)のJJ Projectに「Tomorrow, Today」という曲があるんですけど、自分の中ですごく思い出深いです。ボーイズグループの曲を書いたのが初めてだったというのもあるし、わりと自分のカラーに近いもので成立したというのもあって。ロックとヒップホップがベースで、もの悲しさもあって、自分の好きなタイプの曲を書けて。たとえばTWICEの「Candy Pop」や「KNOCK KNOCK」って、自分で歌うためには書かない曲だと思うんです。そういう意味で「Tomorrow, Today」は、自分の中から自然に出てくるエモーションが求められるものと近かった曲で、すごく思い出深いです。
――K-POPとJ-POPでは、制作のうえでどんな違いがあるでしょうか?
Wakisaka:それこそJ-POP用と思って書いたものがK-POPで採用になることもあるし、その逆もあるので、作っているときの作業はあんまり変わらないんですけど、スタッフさんの動きはちょっと違いますね。K-POPのほうが早くて、誰かが24時間働いているのかなって思うぐらい(笑)。リリースまで1カ月切ってるのに「サビを直してください」とか言われることもありますし(笑)。シングルだとMVもとらないといけないわけじゃないですか。リリース日はもう決まっているんですよ(笑)。
――あはは。今、Wakisakaさんは作家活動をメインにして、現在はご自身の作品はほぼ作ってないそうですね。
Wakisaka:2014年ぐらいにちょっと悩んで「作家をやろう」と思ったときに、自分のなかでもある程度の勝算……と言ったらいやらしいですけど、「努力をすれば形になるだろう」って思いがあったんです。TWICEに楽曲提供をし始めた時に、自分のシンガーソングライターとしての作品について悩んだりすることを一旦ちょっとストップしないとごちゃごちゃになってしまうなと思って。実は2019年、自分の作品を録ってるんです。ヒット曲も書いて、自分の作品によってちょっと赤字が出たとしても気にしなくていい余裕がその頃に生まれて。でも、2020年にコロナ禍になったので、「どうしようかな?」と思っている間に、気がついたら2021年が終わりかけていて、今も「どうしよう」って感じなんですけど(笑)。
――タイミングを見てぜひリリースしてほしいですね。
Wakisaka:ありがとうございます。
――TWICEのメンバーには会うことはあるんですか?
Wakisaka:あります、レコーディングで。スターになる人って、目を引くビジュアルを持っていて、歌がうまくて、プラス人間性。そういうところも含めて選んでいるのかなとか思いますね。
――今後やってみたいことはあるのでしょうか?
Wakisaka:音楽的に、作るものの気持ちの幅をもっと増やしたいです。J-POPであればこう、K-POPではこうとか、いろんなことをしつつ、提供楽曲であまり作ったことがない気持ちを曲に注ぎたい。感情のバラエティが豊かな曲を作りたいです。こう言うと聞こえが良いんですけど、単純にそうやらないとたぶん飽きがくるから(笑)。
――ちなみに、どんな部分を一番出したいですか?
Wakisaka:ドロドロした色が混ざっていて、一色じゃないものが、もともと自分が好きなんです。それこそ昔のジョニ・ミッチェルの曲や歌詞もすごく好きで。そういう感じをうまく描くようなものをたくさん作ってみたいなと思いますね。
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