リル・ナズ・X、社会に多様性とポジティブな影響をもたらす“アーティスト”

　このように時代を象徴するカムアップの仕方をしているリル・ナズ・X。2019年の夏には自身がゲイだとカムアウトしており、作品にも自身のクィアとしての思いを込めている。特に「Montero (Call Me By Your Name)」には強いメッセージが込められている。「Montero」はリル・ナズ・Xの本名で、楽曲がリリースされた際に、14歳の自分に宛てた手紙を公開している。

Monteroへ、俺たちの名前で曲を書いた。昨年の夏に会った男についての曲だ。当時、公ではカムアウトしないと約束したし、”そのタイプ”のゲイにはならないと誓ったのはわかってる。秘密を抱えたまま死ぬと約束した。でも、多くのクィアの人たちに機会を与える人になれると思うんだ。俺にとってすごい怖いことだし、怒る人もいると思う。アジェンダを押し通していると言われるだろう。実際のところ、その通りだ。他人の人生に口を挟んだり、「人間はこうあるべきだ」と勝手に決めさせないという目的のためにだ。未来から愛を送るよ。LNX。（※5）

　「ポールダンスをしながら地獄に堕ち、サタンにラップダンスした後にサタンを殺害し、自身がサタンの角をつける」というMVが米国で議論を巻き起こした当曲であるが、リル・ナズ・Xは「自分のセクシュアリティを100％に表現できるのであれば、地獄に堕ちてもいい」と語っており、いかに自身のメッセージを作品として表現しているかがわかる（※6）。デビューアルバム『Montero』をリリースした際にも、チャリティー企画を行っており、アートや表現を通し、社会に多様性とポジティブな影響をもたらしている「アーティスト」である。

　待望のデビューアルバムをリリースし、社会に大きな影響を及ぼしているリル・ナズ・X。彼が今後どのような作品を作り、どのように社会をインスパイアしていくのか、注目していきたい。

（※1）https://www.vanguardngr.com/2019/06/im-the-future-of-afrobeat-music-ckay/
（※2）https://time.com/5652803/lil-nas-x/
（※3）https://www.cbsnews.com/news/lil-nas-x-inside-the-recording-studio-where-rapper-made-old-town-road/
（※4）https://hiphopdna.jp/news/13890
（※5）https://hiphopdna.jp/news/14654
（※6）https://hiphopdna.jp/news/14873