米津玄師「Lemon」、フジファブリック「若者のすべて」なぜ高校教科書に採用? 版元編集者に聞くポップスの選定基準

「Lemon」「若者のすべて」なぜ教科書に採用?

 米津玄師の「Lemon」と、フジファブリックの「若者のすべて」が、教育芸術社が発行する、高校生の音楽の教科書『MOUSA1』(令和4年度)に掲載されることが決まった。同社では過去に教科書『高校生の音楽』でポップス特集として初音ミク、Deep Purple、YMO、SEKAI NO OWARIを掲載、表紙にASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットなどを手がけているイラストレーター・中村佑介氏のイラストを起用するなど、従来の教科書のイメージとは一線を画す教科書作りを行っている。

 「教科書」と聞くと、西洋音楽や日本の伝統音楽など古典的な音楽が掲載されているイメージが強いが、最近の音楽の教科書には、歌謡曲やJ-POP、ロックなど若い世代にも馴染みのある音楽が掲載されることが増えたようだ。教育芸術社で取締役を務める今井康人氏に、今回「Lemon」と「若者のすべて」の掲載を決めた理由、ポップスの選定基準、ポップスが教科書で扱われるようになった時期とその背景などを聞いた。

米津玄師 MV「Lemon」
フジファブリック (Fujifabric) – 若者のすべて(Wakamono No Subete)

高校生がポップスを学ぶ意義

 今井氏はまず、教科書にポップスが登場するようになった理由について下記のように語る。

「実は小学校、中学校の音楽の教科書にポップスはほとんど登場していません。小学校、中学校における、音楽の効果的な学習のためにはポップスを素材とするよりも、合唱などほかの楽曲が向いていることが多いからです。いっぽう高校の場合、音楽の授業を受けるのは一般的に最後になります。世の中に出ていく高校生にとって、より身近なものを自らの音楽文化の一つとして取り込んでいく必要があるだろうということで、今社会に生きている音楽であるポップスを取り上げるケースが多いのです」

掲載楽曲の選定基準

 では数多くの楽曲があるなかで、高校の音楽の教科書に掲載される楽曲はどのように決めているのだろうか。

「掲載する楽曲を選定するのは、教科書制作を行う編集者と著者の先生方です。今回の『MOUSA1』では高校で教鞭をとっている先生や、現場出身の先生が著者となっています。教科書の発行には企画から実際に生徒が使うまで3年ほどの期間を要するため、今流行している、という理由だけで楽曲を掲載することはありません。選定において重要なのは楽曲のパワーです。その楽曲が生き残っていく可能性がどれだけあるか、話題性に留まらず、音楽・詩そのものが持っている力がどれだけあるか、そういったものを見極めて選んでいます」

教科書におけるポップスの歴史

 ポップスが教科書に掲載されるようになり話題になり始めたのは、実感として最近のことのように感じるが、実は最初にポップスが教科書に掲載された歴史は意外に古いという。

「昭和48年の教科書には『Tonight』(『ウエストサイド物語』)『エデンの東』『太陽がいっぱい』など欧米の映画音楽や、ミュージカル音楽などを掲載しており、これらが教科書におけるポップスのルーツと言えるでしょう。また、当時流行していた『愛の讃歌』『枯葉』など、シャンソン、カンツォーネも取り上げられるようになっていきました。国内の楽曲では、フォークミュージックの流行を受け、昭和51年には千賀かほる『真夜中のギター』、52年になると森山良子『この広い野原いっぱい』、ガロ『学生街の喫茶店』が掲載されるようになりました。したがって、歌謡曲が教科書に登場し始めたのは昭和50年代となります。そうした流れを受けて『MOUSA』(当時は『Mousa』)が初めて発行されたのが平成10年。そこでDREAMS COME TRUE『LOVE LOVE LOVE』、松任谷由実『12月の雨』、藤井フミヤ『TRUE LOVE』など、いわゆる王道J-POPが登場して、この頃から教科書の方向性が今現在のものに変わってきたと言えるでしょう。さらに平成15年にはサザンオールスターズ『TSUNAMI』、平成16年は尾崎豊『I LOVE YOU』、宇多田ヒカル『FINAL DISTANCE』も掲載されています」



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